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3部

「それで、どうだったんですか、例のOB会は?」

 三倒会に出席した翌日、出勤すると上田が聞いて来た。山本は肩をすくめて、

「いかにも俺らは賢いですよ、みたいな感じのやつらの集まりだったよ。

80人以上出席していた中でも、検察官や裁判官、官僚、会社の役員みたいな奴ばっかりだった。」

「へえ、玉の輿を狙いたい女性なら、ぜひ参加したいような場所じゃないですか?」

「そんないいものじゃないだろ。黒木も坂本も何か目的があって参加してるのかと思って見てたが、ただただ、会を楽しんでるだけだった。」

「じゃあ、参加して収穫はなかったってことですか?」

「いや、検察官の浅井から、例の『松本』が使用してた携帯の名義が長谷川だったことがわかったらしいのと、長谷川が五條の事件の一か月前に出国して、まだ帰国していないという情報を教えてくれた。」

「そうなんですか。それじゃあ、五條さんの事件の裏で糸を引いてるのと『鬼引き』の事件の首謀者は同一人物ってことですよね?」

「どうだろうな、名義貸しが金になることを覚えた長谷川が勝手にしたことかもしれないからな。」

「収穫はそれだけだったんですか?」

「あとは・・・・・・・・」

 山本は言いながら、くしゃくしゃの紙とUSBを取り出した。それを見た上田が、

「なんですか、それ?」

「佐和田と名乗る自称新聞社の記者が俺に渡していった物だ。俺に取材するふりまでして渡してきたことから、周囲に感づかれたくなかったようだし、警戒もしていたから、ただのイタズラとも考えられないんだよな。」

「このUSBは確認したんですか?」

「いや、何かトラップでもあったら困るし、俺はあんまり機械関係は得意じゃないからな。お前らに確認してもらおうと思ってたんだ。」

「じゃあ、今見ますか?」

 上田が聞いたところで、竹中が来て、

「おう山本、総監から捜査命令が来たで。」

「上田、それはまた後だな。」

「んっ?何かあったんか?」

「いえ、それでどんな事件ですか?」

 山本が聞くと、竹中は全員を集めて、事件の内容について話し始めた。

「まず今回の事件の特徴は、被害者が自殺してることや。」

「ちょっと待ってください。自殺なのに何で僕らが調べなきゃいけないんですか?」

 三浦が聞くと、竹中はため息をついてから、

「まあ、話は最後まで聞けや。

三浦の言う通り、ただの自殺なら警察の出番はないんやけど、問題は、自殺に至るまでの経緯なんや。まず自殺した人間に関して、共通するんは贈収賄事件に関与した疑いのある国会議員や贈賄側の会社の重役であること。

 週刊誌がきっかけで、その疑惑に火がついて、後追い報道で炎上、さらに警察もつかんでないような情報をさらに週刊誌が報道したことで、その議員や重役とかの家に石が投げ込まれたり、無言電話が四六時中なり続けたりといったどの過ぎたイタズラが毎日起こるようになって、家族は耐えられんようになって、家を出てくは、本人が家から出ようとするとマスコミに囲まれて、質問責めにあうはで、本人は家から一歩も出れんくなって、それが原因で精神的にやられて自殺したんじゃないかということらしい。」

「それで、何を調べるんですか?」

 山本が聞くと、竹中はまじめな顔で

「知らん!」

「いや、知らんってどういうことですか?」

 上田が聞くと、竹中が

「俺も実際、何を調べるんかはわからんねん。

 ただ、この週刊誌っていうのが少し怪しいやろ?

なんで警察も知らん情報を知ってるんかとか、それに最も怪しいのは、印刷会社が漏らした情報やけど、その週刊誌の記者が持ってきた記事と実際に週刊誌に載った記事が全然違うもんやったらしくて、その記者が怒鳴りこんできたけど、記事がスクープやったから文句言うのやめたとかなんとか・・・・・」

「それじゃあ、何者かが週刊誌を利用して、贈収賄事件を明るみに出して、当事者を糾弾して、自殺に追いやっているってことですか?」

 山本が聞くが竹中は首を振り、

「いや、そこまではわからん。その週刊誌を出してる会社もスクープが載った週刊誌が出れば儲かるし、他の会社よりも早く第一報を出せればそれだけ、会社としても知名度が上がって良い事づくめやから、その事実を全く認めへんし、確認のしようがないんや。」

「じゃあ、まずは自殺した人の情報を整理するところからスタートですか?」

 今川が聞き、竹中が手を打って、

「そう、それやな。」

「国会議員が、収賄に関与していたことを認めて自殺したなんてあんまり聞いたことありませんね。その辺の事実関係も調査が必要なんじゃないですか?」

 藤堂が言い、加藤が

「え~と、え~と・・・・・」

「加藤、無理に何か言わなくてもいいぞ。」

 山本が言うと、加藤が

「すみません。」

「じゃあ、僕も加藤さんと一緒で何も出ないので、指示待ちということでいいですか?」

 大谷が聞くと、竹中が

「ホンマにか?」

「ええ、現段階では今川さんと藤堂の言ったことを最優先でするべきじゃないかと思います。」

 大谷が笑顔で言い、三浦が

「このイタズラに関しても、捜査は必要ですよね。石に指紋がないか、電話がどこからかけられたのかは調べれば何かヒントになるかもしれませんから。」

「そうだな。とりあえず、竹中さんは今川と大谷と一緒に自殺した人の情報を集めてください。

三浦と加藤はイタズラに関して調べてくれ。

俺と上田、藤堂で贈収賄についてあたるということで、何か情報が集まり次第報告をお願いします。」

 その場にいる全員が「了解」と言って、それぞれの捜査に向かった。


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