2部
「あの、すみません。」
突然声をかけられ、振り返ると、小柄な40代くらいの男が立っており、また何か質問されるのかと身構えると男は
「ああ、そんなに身構えなくていいですよ。
私はあなた自体に興味があるわけではないですから。」
「どういうことですか?」
「申し遅れました、私は新聞社で記者をしている佐和田といいます。
黒木議員とあなたの関係やあなたの所属する特別犯罪捜査課について教えて頂きたいのですが。」
「あなたは、うちのOBじゃなさそうですけど?」
「ええ、私は潜り込んでいるだけなので、あなた方とは何の関係もありませんよ。
ただ、黒木議員には少し黒い噂がありますからね。
そんな人と警視総監の肝入りの部署の人間が仲良し、なんて興味がありましてね。」
「黒木とは大学のゼミ、つまりこの集まりの母体で同期だっただけですよ。
捜査課については公式発表以上のことは何もありませんしね。」
「そうですか。他にも何か面白い情報であったり、私に聞きたいことがあればいつでもお電話ください。」
佐和田と名乗った男は、山本の手にA4サイズの紙をくしゃくしゃにしたものを渡し、小声で
「あとで確認してください。」
そう言って、山本から離れていった。その様子がどこかおびえたようなあたりを警戒しているような動きであったことが気になり、会場を抜け出し、トイレに入って手渡された紙を広げると紙には、USBメモリがくるまれていて、紙自体に文章があり、山本は黙読した。
「失礼な態度を取り申し訳ありませんでした。
私はある情報を入手し、その情報を信頼のおける人物に託せる機会を探しておりました。あなたにならこの情報をお渡しできると思いましたので、有効にご活用ください。
私はこの情報を持っていることから、身の危険を感じていますので、情報を精査した上で、重要だと判断頂ければ、私の身を保護して頂きたいと思います。
電話番号を下記に記載しておきますので、USBとともに厳重に保管して下しさい。あまり残された時間はないと思いますので、できるだけ早めに、でも内密にお願いします。
佐和田」
山本は急いで、トイレから出て、会場に戻り佐和田を探したが、会場内にその姿はなく、元の賑わいを取り戻していた。