19部
「佐和田はブラックのジャーナリストでした。」
電話を折り返すと今川が言い、山本は既に知っている情報だったため
「それは俺もつかんでる、他に何かわかったことは?」
「大手の週刊誌から出元の怪しい情報を代わりに記事にして出版していたそうです。
今、その出版社に向かってるところです。警部の方はどうですか?」
「俺も今のところ情報はそれだけだ。それと・・・・・」
「何かあるんですか?」
今川が聞いて来たので手に持っているUSBを見るが、説明することが小谷のみに危険を及ぼす可能性を高める気がしたため、
「いや、今後もしばらく俺は一人で動く。竹中さんを中心に捜査をしといてくれ。」
そう言って、今川の返事を待たずに電話を切った。
電話を切って、ノートパソコンを起動して、USBを差し込み、ファイルを見る。
小谷が担当してきた議員の名前のファイルがあり、石川議員のファイルを開けると、年度ごとに活動記録と関連資料というファイルが何個も入っていた。
一番新しい活動記録を開き、文章に目を通す。
「○月○日 前島猛議員と会食
前島和夫大臣の不正問題の追及についての話し合い。
○月×日 明智議員と会食・献金
明智議員の新党構想に賛同して献金を行う・・・・・・。」
どうやら、石川の行動を逐一文書で残していたようだ。ただ、このUSBには公にできない国会議員の行動が詳細に記録されていた。
こんなものを残していた小谷さんは確実に危ないことをしていると思った。このUSBの存在自体が国会議員の不正を告発するのに十分な証拠となりえる物だった。
続いて、関連資料のファイルを開けると、『石川議員取引J』と題された文書があり、開いてみると、顔写真はないもののジャーナリストや探偵の名前と連絡先が記されており、所々に×がついている。
よく見ると、ほとんどの人に×がついており、ついていないのは佐和田を含めて3人だけだった。
この×の意味を考えるとすぐに答えは出た。これは連絡が取れたかどうかをチェックした物なのではないだろうか。要するにこの×の人は連絡が取れない人かあるいは消されたことが確認できた人ということではないだろうか?
小谷さんは佐和田に連絡が取れていないことを話していたし、相棒とされる人物の名前も『金田』で入っており、ここも空欄になっていることから、連絡が取れないだけの人は空欄で、消されたことが確認できた人が×である可能性が高い。
どちらにしろ、失踪者扱いの人が殺されているかもしれないこのデータの取り扱いに悩んだが、入手の経路や手段が正式なものでない以上、証拠にするのは危ないし小谷さんの身に危険が降りかかる可能性が高いことも考慮すると今回の事件が一段落してから、本腰を入れて捜査した方がよさそうだと思った。とりあえず、全てのコピーを取って、×印のついていない人の連絡先をメモして、山本はパソコンを閉じた。