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17部

「それでは改めてお聞きします、小谷さん。

あなたは黒木俊一議員が石川議員の殺害に関与していたとお考えだということでよかったですね?」

 暗い部屋の中で、山本は50代の男と対峙していた。山本の問いかけに『小谷(こたに)』と呼ばれた男はうなずき、

「ええ、石川議員は黒木議員のことを探っていた、だから殺されたんだと今でも思ってます。」

「石川議員の秘書だったあなたは、石川議員が坊ちゃん狩りに巻き込まれたのではなく、最初っから標的になっていたのだと思っている、そうですか?」

「何度も聞かないでください、私はそう思ってます。」

「それでは、坊ちゃん狩りの事件の首謀者は黒木議員だったと考えられているということでよかったですか?」

「それは・・・・・・・。警察の人間が犯人だったんだから私がどうこう言えることではないでしょう。」

「そうですか。

それでは、石川議員についての悪い噂についてお話頂けますか?」

 小谷は少し考えてから

「まあ、いいでしょう。もう石川は死んでますからね。

噂と言われてるものに関しては全て事実です。

金に汚い、金のためなら何でもするクズな政治家でした。」

「そんな議員の公設ではなく、私設秘書だったあなたが言えることですか?」

「私は、仕方なく面倒を見ていただけです。

本来ならもっと大物の政治家の秘書なのですから。」

「前島財務大臣のですか?」

「そんなことまで調べられてるんですね。でも、違います。

私はだいぶ前に前島和夫を見限ってます。それに前島大臣は与党の人間で石川は野党の人間です。

その時点で私と大臣の関係が終わっていることに気付くべきでしたね。」

「それでは誰の秘書なんですか?」

「お教えするつもりはありません。あなたはいったい何を調べてるんですか?

警察は黒木議員の関与を否定して捜査すらしなかったんですよ。今更何がしたいんですか?」

「石川議員が雇っていたブラックジャーナリストや探偵のことをあなたは知ってますよね?」

「知っていたとしてもあなたに教える気はありません。」

「そうですか・・・・・。

それでは私どもが知っているブラックジャーナリストを一人だけ言いますね。」

「誰ですか?」

 小谷は目を見開いて驚いているようだった。

「佐和田貴史です。」

「な、何であなたが彼を知ってるんだ?」

「ということは、佐和田も石川議員に雇われてたということですね?」

「知ってたんじゃないのか?」

「ブラックジャーナリストの佐和田を知っていると言っただけで『関与してることを知っている』とは一言も言ってません。どうしますか、佐和田のことはもう話してしまったんだから知ってることを教えて頂けないですか?」

「屁理屈だ。だが、もう仕方ないですね。

佐和田貴史は政界では有名なブラックジャーナリストでした。自分の取材をもとに政治家やその周辺の人物をゆすることで生計を立てていました。

でも、その知名度が上がりすぎて、週刊誌の中には名前を聞くだけで追い払われることが多くなり、世間に公表する術を失ったために、政治家がゆすれなくなり困っていたんです。

そこに石川は目を付けました。その取材力の高さは自分のために利用できると思ったんです。

何しろ、警察がつかめていない情報から、一日何千件と起こる交通事故の被害者や加害者の情報を調べ上げることもできる人間だったからです。

 自分に不利な情報は先に入手して潰し、自分に不利益をもたらす相手のあらを探るための道具としてこれほど優秀な道具はなかったんです。」

「石川議員は佐和田をかなり重宝していたということですか?」

「いいえ、その取材力は高かったですが、他の政治家にも同様に雇われるようになって、最終的には自分の持ってきたネタをいくらで買うかと言いだしたそうです。

ネタを買わなければ他の政治家に流すと言っていたようで、正直に言うと石川には過ぎたる道具だったんですよ。」

「小谷さんは佐和田とお会いになったことはありますか?」

「何度か見かけたことはあります。」

「外見的特徴等を教えて頂けますか?」

「40代前半の小柄な男でした。どこにでもいるような顔だったので顔の特徴はありませんでしたし、仕事柄たくさんの方とお会いするので顔を覚えきれていたわけではありません。」

「佐和田が何か黒木議員のよくない噂をつかんだから消されたということでしょうか?」

「さあ、どうでしょうね。黒木議員ともつながっていた可能性はありますけどね。」

「どういうことですか?」

「先日亡くなられた交通事故被害者の会と呼ばれる交通事故を無くそうとする団体の会長は佐和田と通じていました。その会長は黒木議員から警視庁に信頼のおける刑事がいると言われて、その人のことを佐和田に調査してもらっていたという情報もあります。」

「その情報はどこからの物ですか?」

「ふうっ、答えにくい質問ですね。

まあ、いいですよ。実は佐和田には相棒的な存在がいましてね。彼も1週間ほど前から連絡が取れなくなっていますから、もしかすると・・・・・・」

「その相棒の名前は?」

「金田と名乗っていましたが、違う人には吉田と名乗っていたそうですし、本名はわからないですね。なぜ佐和田のことを調べてるんですか?」

「つい先日、命を狙われているから保護して欲しいと言ってきました。情報を精査して電話をして保護しようとしたところで、焼死体で発見されたんです。

石川議員と佐和田に関係があれば、佐和田の命を狙っている人物は石川議員の殺害に関与している人物になり、話が繋がるからです。」

「なるほど、それで私に話を聞きに来たわけですか。

私が佐和田について知ってるには以上です。もういいですか?私も暇ではないので。」

小谷が立ち上がった。


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