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真田丸を作ろう

作者: さきら天悟

「何か面白い企画はないのか」

CEOはため息交じりに呟いた。

怒鳴りたいが、パワハラと言われかねない時代である。


会議が始まってから2時間が経ち、

各部署からのプレゼンは出尽くされた。

円卓に座る各部の責任者は神妙の顔をし、

その後ろに立つ、部下らは伏し目がちだった。

でも、風通しの会社だった。

企画をすべての社員から募った。

その企画が採用されれば、プロジェクトリーダーになれるのだ。

そのせいか、出遅れた感のあるSNS開発会社だが、急成長している。

人員は急激に増え、会議室も手狭だった。


スーツを着ていない青年が手を上げた。声を上げた。

「派遣社員でもいいですか」

彼はプレゼンの補助でこの場にいた。


CEOが頷く。


「ブームに乗らない手はないです」

青年は言った。


「ブーム?」

CEOは渋い顔をした。

嫌な顔をしたのを反省するように一度首を振り、

「言ってみろ」と続けさせた。


「真田丸を作りましょう」

青年の透き通る声で言った。


周りは失笑した。


CEOは咳払いをした。

「どこにだ?」


「やっぱり、お台場でしょう」


「どうしてだ?」


「戦と言えば、お台場でしょう」

お台場とは、江戸末期、黒船を打ち払う砲台が配備された台場が由来である。


「続けろ」とCEOが言うと、青年は企画を説明した。


青年の説明が終わった。




「面白い。採用だ」

CEOはピンと来るものがあった。






半年が経った。

お台場に真田丸が完成したのだった。

メディアで話題になった。

CEOはテレビの取材で答えた。

「企業はライバル会社と常に戦をしているようなものです。

ですから、その戦の最前線となるお台場に出城の真田丸を作りました。

本丸(本社)は八王子ですから、ししゃ、いや出城が欲しかったのです」


そう、青年の提案は支社をお台場に作るというモノだった。

支社というとつまらないので、ブームにあやかり真田丸と言ったのだ。

でも、本質的な機能は同じだ。

ライバルに勝つための最前線基地。

背中は海に守られ、半円形の・・・

そこまでできないので半円形に木を植えたのだった。


正社員らはバカにした。

名前を変えただけのしょうもない企画だと。

しかし、CEOは違った。

面白いヤツだと思った。

ドローンで撮影された半円形の真田丸(支社)の映像は各テレビ局で流れた。

その宣伝費は数億円にあたるのだ。

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