いつものある日
「なぁ、お前らのクラスって文化祭何すんの?」
「えーと、なんだったか・・・?確かフランクフルトとジュース売るんだったかな?」
「あそう」
「おまえらんとこは?」
「創作ダンス」
うねうね変な動きしながら答える幼馴染。
そんなダンス見たくねえと思う俺。
いつもと変わらない日曜の午後である。
1か月後に俺たちの学校では文化祭が行われる。学生にとっては楽しみの一つでもある学校行事だ。
2日にわたって行われる文化祭は、1日目は学生のみで、外部からの立ち入りは禁止。2日目からは一般公開され外部から大勢の客が入ってくる。よって客が多く入るであろう土曜、日曜が文化祭となる。
「ダンスとか、お前らんとこは準備するものとかなくて楽だよな~」
人前でダンスやるなんて、恥ずかしくてやりたくはないのだが。
「ばか!お前実際やってみ?朝練、昼練、部活ない奴は夜練もあるんだからな!」
「・・・学校休みの日も練習あったりするん?」
「さすがにそこは休みだが・・・自主練は怠るなとの団長からの命令が・・・」
「何その部活?新しく発足したのか?」
聞けば団長なる人は、ダンス経験者らしく、やるからには下手なものは見せれないという熱意のもと、熱心な指導を行っているらしい。
「お前らはどうなんだよ?」
にらみながら俺に聞いてくる。
「そりゃおれらだって・・・」
言い返そうとして、考える。
準備するものといえば、フランクフルトとそれを焼くホットプレート(火気厳禁のため火は使えない)とジュースあとは器だな。前日に買いに行けばいいや。
店のセッティングはテント立てて長テーブルとパイプいす用意すればいいだけだし、あとは看板くらいか。前日だな。
ふむこれといって・・・いや大事なことがある!
「食品を扱うのだ、その味と品質を確かめねばいけないという大事な」
「それただ食いたいだけだろが!」
「衛生面でも重要なことだろ」
「ぐっ・・・たしかにそうだが・・・」
ものすごく悔しそうな顔でうつむく幼馴染。
「俺たちも店にすれば・・・」
とつぶやいてる幼馴染には悪いが、そんなものは今さらどうしようもない。
後の祭りだ。まだ祭り始まってないけど。なんて、我ながらうまいことを・・・とか思っていると。
「よし!マーケティングリサーチに行こう!」
「・・・どうした?横文字なんて使って。風邪でも引いたか?あぁ、バカは風邪ひかないんだったか。てか意味わかって使ってんのか?」
「お前と同じ高校行ってるんだ、頭の程度はお前と変わらんだろうが!」
「お前と同等にされるの嫌なんだが・・・バカなのは否定しないんだな。俺は否定する。」
「そんなことはどうでもいいんだよ!とりあえずでかけっぞ!」
「文化祭の流れで俺がいくのは百歩譲っていいとして、お前やるのダンスじゃん」
という至極まっとうな俺の指摘も華麗にスルーして、パジャマ姿の幼馴染は出かける準備をする。
またか、と諦めつつ、読みかけの漫画を片付ける。
「いや~結構人いるんだな!」
フリーマケットをしているという情報を手に入れた幼馴染と一緒に、自転車で30分かけて着いたのだが。
長さ200メートル、幅30メートルほどの道。その両サイドにブルーシートを敷いて、商品を置いている出店者がずっと先まで連なっている。
また通りの真ん中は、商品を興味深そうに見ている人、出店者と値段交渉をしている人、テキトーにプラプラ歩く人。人、人、人。人で埋め尽くされていた。
「ではでは、さっそく面白そうな人をナンパしに行こう!」
「お前来た目的忘れたのかよ!」
「お、あの子よさげ~」
と突っ込んでいく幼馴染を追いかけていくと。
「なんであんたたちここにいんの?」
この前、幼馴染が声をかけた気の強そうな子と俺のタイプのドストライクの子の二人がいた。
「ここであったが100年目!これを運命と言わずなんという!」
という幼馴染の言葉を無視して、俺のほうを見る気の強い子。
「いや、1か月後に文化祭があるから、マーケティングリサーチするとか、こいつが言い出してな」
苦笑いしながらも、GJと思う俺。
「へぇ~、なにすんの?」
「俺はフランクフルトとジュースを売るんだが、こいつは創作ダンスだ」
「リサーチする意味あんの?」
と呆れ顔の気の強い子。
だいぶ幼馴染のことをわかってきたようだ。あとのことは任せた!
俺の思ったことに気付いたのか、こちらをちらとにらんだ後、幼馴染を見てため息をつく。
「だったら私たちと一緒に回る~?」
と微笑みながら提案する彼女。やっぱかわいいのな。もちろんその提案乗らせていただきます。
気の強い子もこの流れに逆らえないとわかっているのかうなずいている。
「それじゃ、よろしくね~あさみちゃん!」
「あんたにちゃん付けされる覚えはない!」
と漫才コンビとともに
「文化祭の日付っていつですか~?」
「え~っと、たしか」
というやり取りをしながら、人ごみの中にまぎれていくのであった。