おまけ 1 〜 2
《 おまけ 1・東京ドゥギーナイト》
『漆原めぐみの東京ドゥギーナイト!この番組は星わっぱレーベルでお馴染みのおやびんレコードがお送り致します』
♪ ふんばって~ 昨日よーりもっとふんばって~ ♪
今晩わ!漆原めぐみです、一週間のご無沙汰いかがお過ごしだったでしょうかー!
っという訳で今日も始まりました、今夜はお葉書とトーク、音楽を中心にDJやって行きたいと思いまーす。普段はゲストとかラジオドラマとか挟んじゃうから、まるっとDJでお送りするのはかなり久しぶりですね。皆さんのお葉書いっぱい読みたいと思います。期待してて下さいませませ~
さてと、最近の近況としましては、まぁボチボチ、仕事をやりーの、家事をやりーの、育児にバタバタとね、まま順調に?やらせて頂いてます。
先日ですね、うちの息子、ジュニア君がですね、5歳になるんですが、早いねーもう5歳だよ。ジュニア君がですね、普段別の部屋、子供部屋の方で一人で寝てるんですけど、夜中に目が覚めちゃったみたいで、
『ママ~、一緒に寝るぅー』
って、私と旦那が寝てる寝室にね、来たわけですよ。
あらあら、しょうが無いわねーって、ベッドに呼んで、三人で狭っこくなってベッドに川の字作って寝たんですよ。
私もこんな事あったなぁーって思いながら寝てたら、ジュニアが、
小さい声で、
『ママ、ママ』
って呼ぶわけ。何?って聞いたら、
『ママ、小人が居るよ』
ってめっちゃ小さな声で言ったんです。私もう眠かったから
『はいはい、寝ましょうねー』
って、その時はテキトーに促して寝たんですけど、
翌朝、息子がパッと起きて、布団をぶわっとめくって、いつもダラダラ寝てるのにいきなり飛び起きたんです。うわ、何~?って見たら、息子が
『小人がいない!』
ってキョロキョロして探してる。
どんなの?黄色い小人?って聞いたら、
『ううん、赤いのと青いの!トンガリ帽子かぶってる!』
って言うんです。
不思議でしょー?彼は、きっと本当に見たんですよ。メルヘンだけど、親バカって言われるかもしれないんだけど、そこはやっぱり、信じてあげたい。
漆原もですね、実は、
実は、見たことあるんです。小人。
黄色い小人?って息子に聞いたのは、実は一度、一度っきりですけど、黄色い服を着た、女の子の小人を見たことがあるんですねぇ。あ、音響さんが笑ってる。信じてないなぁ?信じてる?本当だよ?
私が見たのはですね、まだ息子が小さい頃、2歳かそこらですね。
息子にお昼ご飯を食べさせてた時に、息子の目の前に離乳食のご飯を置いて、スプーン持たせて、まぁ、ほっとくと勝手に食べてくんで、そのままほっといてちょっとキッチンで自分の分とか、飲み物とか、イロイロやってたんですよ。
そんで、ふっと、息子の様子を横目でチラッと見たら、
息子の目の前に、小さーい、5センチくらいかな?黄色い服を着た小人がですね、腰に手を当てて、息子に向かって何か言ってるんです。
多分、ちゃんと食べなさいとか?そんな事を言ってるような雰囲気だったんですけど、息子がその小人を見て、急かされてるのか、一生懸命ご飯を食べてる。っていうね、そんな事が、有りました。
ちょっと目を離したらすぐに消えちゃったんですけど、何だか小さなお姉さんがいるみたいで、ちょっと心強く思ったりしてね。
あんまり驚くこともなかったんですねぇー、まあメルヘン?メルヘンなんだけど、どっちかって言うと、居て当たり前っていう印象だったかな。
多分、私が小さい頃に、そうやってまた違う、別の小人を見てるのかもしれませんね。
だからね、ジュニアが見た赤い小人と、青い小人も、ちゃんと居るんです。あー、不思議な出来事でした。
さて長くなりました、『早口言葉の挑戦状』いきましょう、福島県はペンネーム『夏の小鳥』さん……
【しーゆーあげいん!おやすみ!バイバイ!!】
☆ ☆ ☆
《おまけ 2 ・ 探偵ゴッコ 》
狩りが終わった朝、集会場でその日の成果と報告を終えたオードリーは自分の部屋に居た。ジン、レン、モーリス、そしてレオンの四人が一緒である。
ジンが仲間の紹介と一緒にお土産を渡したい、と言って、全員をオードリーの家まで連れてきたのである。
家主のオードリーは、わざわざ家にまで来て貰わなくても良かったのだが、何よりジンのお願いだ。断わる事が出来ない。
広いとは言えないリビングに集い、改めて紹介を受け、モーリスとレオンの二人と握手を交わした。
面倒な事になるからと、レンの意見でモーリスのオリジナルが誰なのかは伏せられていたのだが、オードリーは知る由もない。東京から来た油断ならない女という擦り込みは尚も継続中だ。
紹介が終わった所で、ジンが腰袋から、布で包んだ夢珠を手渡す。
「じゃあコレ。約束のモノ」
オードリーは目をキラキラさせて包みを開く。待ちに待った漆原めぐみの夢珠である。
「ありがとうございますジン様!大切に致しますわ!」
マジマジと見つめ、手の平で観察を続けるオードリー。
その姿を見て、満足そうに微笑んだジンは、皆を帰るように促した。
「じゃあそろそろ帰って休もうか。あー、長旅の疲れがどっと来るなぁ」
ジンは入口のドアを開け、皆を外へ出す。次に自分もドアを抜け、
「じゃあねオードリー、また夜に」
と、手を振った。
「はい!また夜に!ジン様ありがとう!」
キラキラした笑顔で返すオードリー。
家を出て、帰路につくレンがジンに言う。
「あーあ、苦労した夢珠あげちまいやがって。それよりジン、【コトダマ】はお前の分、どーすんだ?予約して来るなら付き合うぜ」
ジンは立ち止まって返す。
「実はそれについてはアテが有るんだ」
部屋に一人きりになり、クルクルと踊りながらはしゃぐオードリーは、ピンクの帽子を脱ぎ、ソファに投げる。
手にした夢珠を見つめ、尚も喜びを表すために鼻歌を歌いながら部屋を歩く。
そして秘密のコレクション部屋へ。
隠し扉を開いて一回り小さな部屋に入ると、ズラリと並ぶ声優達のコレクション。
CDやポスターなど、実物大の人間サイズならば到底置き場など作れない。だが、夢珠の能力を利用し、サイズ変更をする事により、自分達のサイズに合わせ、音楽CDもプレイヤーも小人サイズで楽しむ事が出来る。ポスターを壁一面に貼るなどは基本だ。
オードリーは小部屋に置かれた中 で、中央の最もアイテムが溢れた人物の前に座する。
中央に作られた祭壇と思われる場所に、手にした夢珠を鎮座した。
漆原めぐみのコレクション、その中に夢珠の小が加わったのである。
「やったわ。やっとこの時が来たのね」
オードリーが一人呟く。
「どれだけ苦労したか。無駄に繰り返した夢珠のトレードも、もうしなくていいのね」
そう言って衣装を入れるクローゼットを開ける。
木製の扉が観音開きに中を見せると、中には10を超える夢珠の大や中が並んで居た。
「速水さんや田中さんの夢珠はまだトレード価値も高いし、コレクションの中でも苦労したから保管するとして、新人の夢珠はもう用済みね。解らないように処分するか、別のアイテムに交換しないと……」
「そういえばオードリー!忘れていたよ!」
聞き間違える事のない声に固まるオードリー。
「もう一人、仲間を紹介するのを忘れてたんだ!!」
ゆっくりと振り返る。
「ジン……さま?」
目の前には帰ったはずのジンが、開いた隠し扉を背に立って居た。
「いやぁ、申し訳ない。お土産を渡して安心してしまったよ。エンジュ、出てきてくれ」
ジンが言うと、空間が歪んで朱髪の女の子が現れた。
「この子の名前はエンジュ。レオンさんの恋人だ。ご覧の通り、なんと自由に姿を消す事が出来る。凄いだろう」
ジンが冷静な口調で言うと、オードリーは観念したように頭を垂れた。
「ひ、酷いですわ……そんな」
「実はさっきも彼女は部屋に居たんだ。紹介しようと思ったらずっと消えたままで、つい忘れてしまったよ。すぐに引き返したんだが、オードリーが部屋に見当たらなくてね。そしたらまだ中に居たエンジュが扉を教えてくれたよ。いやぁ、驚きだ、こんな部屋があったとはね。ありがとうエンジュ、外でレオンが待ってる」
エンジュを見送り、ジンはゆっくりと小部屋を歩き、コレクション達を見て周る。
CDやDVD、本や写真集。そして夢珠。
「オードリー、無許可で大きな夢珠を所持してはならない。掟は理解しているね」
ジンが中玉の一つを手に、静かに言った。
オードリーは目を潤ませている。
「どうして解ったんですか」
ジンは頷き、言葉を続ける。
「最近、夢珠の回収を終えて、帰って来るとよく言われるんだ。『ちゃんと夢珠を提出しろよ、最近ゴマかす奴が居る』、そんなバカなって思ってた。想像出来なかったんだよね、情報不足で予測ができなかったんだ。
でも、オードリーがケガをして、僕とレンがお見舞いに来た時、オードリーはファンだコレクターだって事をたまに言うくせに、部屋の中にはまったくそういうコレクションが無い事に気付いた。そして出発する僕にお土産を頼んだ。『夢珠の小か使用済みの日用品でかまいません、殆んど持ってますから』いやいやいや、持ってないだろう?一つも飾って無いんだから。
僕は考えた。自分ならどうする?欲しい物があって、お金なんて使わない小人だ。あるのはそう夢珠だ。夢珠くらいしかない。それをなんとか手に入れてトレードする。都会の知り合いや同じ趣味の仲間と交換するんだ」
オードリーはすがるようにジンを見る。
「お願い!ジン様!見逃して下さいませ!オードリーは何でも致します!」
それを無視してジンは続ける。
「オードリー、君はずっとここに住み続けているね。普通、見つかる事を恐れて小人なら寝ぐらを変える。でも君はそうしない。変えたくても変えられない理由がある。一つは荷物、コレクションの山は引越しに不向きだ。そして住所を固定化しておかないと、トレードした荷物が届かない」
「お願いよ、ジン様……」
涙に崩れ落ちるオードリーの肩に触れ、ジンは微笑みを浮かべて言った。
「安心してオードリー。ここには僕しか居ない。エンジュは元々フリーで何処にも所属していない戦士だ。うちの組織の中の事をベラベラ話す子じゃないよ」
立ち上がってジンは夢珠に向き直る。
「声優さんの夢珠なら、【コトダマ】として申し分ないチカラが得られる。それはワザワザ有名な声優でなくてもいいらしい。という事は、今ここに【コトダマ】が約10個以上ストックされている訳だ」
オードリーはジンを見上げる。
振り向いた想いを寄せる戦士はニコニコ笑顔を絶やさない。
「オードリー、さっきのお土産の小玉と、この中から一つ交換してくれないか?僕はまだ【コトダマ】のチカラを持ってないんだ」
「……え?」
「そして残りの【コトダマ】はこのまま保管しておいてくれ。いつか、時が来たら仲間で分け合う。【コトダマ】として使えない夢珠は、今夜の出動後に本部に提出だ。いいね?」
オードリーは小さくはいと答えた。
「僕とレンがこの【コトダマ】のチカラを研究して、皆んなに教えて使えるようにするから。それまで待っていてオードリー、君も強くなって、いつか僕が【コトダマ】の使い方を教える。それはそんなに先の未来じゃない。見ていろ、僕とレンはこの北東部のエースになる」
強く語るジンの瞳に、オードリーはさらに惚れていく自分の心を感じた。
エースとはその地で最強の戦士に贈られる称号だ。
北東部ではシュワルツがエースの座を引退して以来、誰もその称号を継いでおらず、無冠のままである。
そして一ヶ月後、北東部に初のダブルエースが誕生する。