第六話 戦闘訓練~前篇~
階段をしばらく下っていくと、何やら乾いた爆発音が聞こえてきた。
側面には大量の赤い何かが飛び散ってる。直径1ミリに満たない飛沫血痕。拳銃?
って、これケチャップじゃねえか。しかもついさっき付けた感じ。トマトの匂いがプンプンする。
でも乾いた爆発音はどうやら本物らしい。今も相変わらずパンパン鳴り響いてる。
目の前には鉄の扉が。その扉の奥から、銃声は聞こえてきていた。
とりあえず入ってみることに。って、この扉重い。全く開かねえ。
10分ほど格闘して気がついた。横にスイッチがあるじゃん。
見た目とは裏腹に随分とハイテクなんだなあ。機械音痴は入るなってか?
入ると中はドーム状になっていた。んで、真ん中には、ってプラネタリウム!?
中央には怪しげなプロジェクター的なのが置いてある。
「やっときたか。ったく、待ちくたびれた。危うく関係無い羊を狩るところだったよ。」
ナナミの声がドーム内を反響して聞こえてくる。どこにいるんだ?
「今立ってるところの後ろに階段があるからそこを登ってきて。」
タカネの声も同じように反響して聞こえる。
言われた通りに後ろを見ると、階段があった。そう長くは無い。
ちょっと登っていくと、上に二人がいるのがわかった。
「早く登ってこい。階段は走るところだぞ。」
はあ?そんなこと今初めて聞いたぞ。
ここはどこぞの軍事学校か?いや、あながち間違って無いかもしれない。
本当にとんでもないところに連れてこられたようだ。
「考え込んでないでいいからとっとと来い!」
「ひいい」
上の方から異常なまでの殺気を感じるのは気のせいだよね、そうだよね、きっと。
「遅い。とっとと始めるぞ。」
開口一番、ナナミが顔面パンチをうってきた。
「やばい、当たる!!」
とっさに左腕で顔面を守る。
だが衝撃が来ない。
おそるおそる目を開けてみると、「元々」顔のあった位置と紙一重で拳が止まってる。寸止めってやつか。
ただそれ以上に俺はびっくりしたことがあった。
さっきより景色が遠い。ナナミともっと近い位置にいたはずなのに今は3mくらいは距離がある。
ナナミもタカネも開いた口がふさがりませんっていう顔になってる。
どうやら俺はバックステップで回避していたようだった。
「いやあ、驚いた。あのスピードについて行けるとはね。次からはもっと本気でやんないとな。」
「いや止めてくれ当たったら死ぬぞ」
「流石の能力ね、それなら訓練は必要ないんじゃなくて?」
階段を上ってきたのはナギサだった。
「危険を察知したときに本能的に相手の微弱な電気信号を察知し回避する。微弱すぎて操ることは出来ないみたいだけど戦うには充分なんじゃない?」
「いや、そりゃそうなんだが、一様こいつを持たせとこうと思ってな。」
そう言われてタカネから受け取ったそれは新聞に包まれていた。
「開けてみろ。」
言われるままに新聞紙をはがしていくと、そこには黒光りする物があった。
「今から、このドームにある風景を映し出す。その中にいるターゲットを撃て。」
タカネが横にあるスイッチを押すと、ドームの中央に置かれたプラネタリウムから、光が発せられた。
この風景は・・・病院?
「そうだ。こちらに気付かれる前に病院の屋上にいる兵士を全員倒せ。」
「それじゃあ始めるよ?」
「おう!」
気合を入れなおして、俺は拳銃を構えなおした。