第五話 異能力?
「んーーーーー」
朝日のまぶしいベッドの上で、大きく伸びをした。
あの後、よくわからない奪還作戦とやらを手伝う羽目になったわけだがおかしい。
何かおかしい。
実行日が「俺の準備が出来次第」なのだから。
「ったく、準備って言ったって何やるんだよ。」
昨日、俺をここに送り込んだあの医者がここに来た。
聞くとリュウのお父さんだったというのだから驚いた。
カエルの子は蛙というのか、この医者も遅刻してきた。
しかも腕時計が壊れたせいだそうで。
よくもまあ都合よく壊れる時計なんですね。
閑話休題、この医者は何の為にわざわざ車で病院からここに来たのか。
なんでも俺の脳波を見せに来たとか。
そして文字通り紙にインクで書かれた波線を見た。正確には見させられた。
ってまあ素人が見ても単なる紙に落ちたインクの染みでしかない訳で、とにかく周りに助けて欲しい視線を必死に投げた。。
紙から視線を上げた瞬間、全員が目を逸らしたのは地味にグッサリ来た。バルキーノ、轟沈。
「まあ何が言いたいかというとだな、」
医者であるアンタも目を逸らしてたのかよ。
「端的に言えば、君は異能力者だということだ。」
「はあ?」
異能ってのは一般人にはない、つまりは一部の人間が持っている超次元的な能力。って所だったと思う。
どっかの図書館の軽い本とかってカテゴリにそんなような題材の小説があった。たぶん。
んで、俺は異能力者、つまりその一部の人間らしい。今の所思い当たる能力といえばこのよくわからない集団の中でも何気なく過ごせている恨めしい適応能力くらいだ。うん、周囲のコミュ力の高さに感激。
「端的に言えば、君は熱と水と電気を操れる。」
「はあ??」
「そして今回の作戦には、その能力が必要だ。」
「はあ???」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜一時間後〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「...という訳だ。理解できた?」
医者の代わりにナナミが説明してくれた。少なくとも一時間前より10%くらいは理解した。
つまりは俺はそのベレンとかってやつに体を改造されて異能力者になった。ってことだよな。
こんなに必死に説明してくれたナナミには悪いが自分の理解力ではこれが限界だ。
ってな訳で昨日のことを思い出しながら、寝起きの体で朝食なう。あ、この目玉焼きおいしい。
軍が言う準備が出来次第といのは、その能力で戦闘できるくらいにはしておけ、だそうなんで、まずはナギサの知恵を借りることに。
キッチンで洗い物をしているナギサに声をかける。
嫌そうな顔を一瞬された気がした。気がしただけだ。ナギサの顔はちゃんと笑ってる。
......目は笑ってない。
「あ、そうそう、なんかタカネがバルキーノを地下に連れてこいって言ってたよ。」
予想だがそんな言い方をするのはナナミだと思う。つまり地下室にはタカネだけでなくナナミもいる。
「地下ってどっから行くんだ?」
「そこの扉を開ければ階段が出てくるわよ?」
「ありがと」
扉の向こうにあった冷たいコンクリートの階段をゆっくり降りていく。
嫌な予感しかない冷たい空気の中をひたすら歩いて行った。