第二話 秘密のアフターグロウ
「リュウ、今タカネから連絡があった。病院に行ってくる。」
「あーナナミ、今何時?」
「朝の6時だ、4時半くらいには戻るからそれまでには家にいて。」
「ん~了解~。」
「どうした、タイチ、朝から元気ないな。」
「あ、リュウ、おはよう…」
溜息をつきながら朝食のサンドイッチを食べているタイチは、普段に増して気分が沈んでる。
「ちょっと、その、お母さんとお父さんの事、思い出しちゃって、」
ああ、そうだった。確か、急に両親がどこかに行っちゃったからここに来たって言ってたな。正確にはここに連れてこられたって言ってたけど。
そりゃ両親が突然いなくなって気にするなってほうが無理だ。
「でもやっぱりさ、いつまでも下向いてるわけにもいかないんだよ、何なら、今日どこか遊びに行く?」
「でも今日、アタラシイヒト来るって、団長さん言ってた。」
「ああ、4時半位って言ってたから、それまでに帰れば大丈夫だよ。」
「じゃあ、公園、行きたい。」
「なるほどねえ、朝起きたら家に誰もいなくて、少し経ったら軍の人が家に来たんだ。」
「うん、それで、その人、お父さんとお母さんはしばらく帰らないから、友達と一緒にいて、って言われて。」
というわけで午後、皐月の程よい日差しの中、公園へと話しながら散歩する。
「そんで連れてこられたのが、ナナミのところだったと。」
「うん。最初に紹介されたの、団長さんのお父さん。そん時、その人、会社のボスって言ってた。」
「え、ナナミのお父さんのこと、ボスって呼んでたの?」
「うん。蛇みたいな輪っかのが三つ書かれたマーク、腕に付けてた。間違ってない。」
多分、組三つ巴のことだろう。
にしても。
上司をボスと呼んでる軍の人は一人しか心当たりがない。
「ねえ、もしかしてその人の名前って。」
「飛先秀一、自己紹介の時、言ってた。」
「やっぱり。なら大丈夫、軍でもかなり優秀だからね。」
「よかった。お父さんとお母さん、無事、だよね。」
なんだかんだタイチの不安要素を一つ取り除き、公園でキャッチボールした。
「ねえ、日、暮れて来たけど、時間。」
「ん?まだ4時だよ?」
腕時計を見て、もうちょっと時間あることを確かめる。
「もう少しキャッチボールやろう。」
「うん。」
その時、地獄の音楽が流れてきた。
大体の地域で子供の帰宅時間であることを知らせる、パンザマスト、夕焼け小焼けだ。
「今、5月、これ流れるの、6時。」
「え?」
慌てて公園の時計台を見ると。確かに針が縦にまっすぐ、6時を指していた。
「うわあああああああ。やばっ」
「団長さんに、怒られる。」
まさかの腕時計が故障だなんて。
この状況、やばくね?
息を切らせながらも必死で帰路に就く二人だった。