手記1
お久しぶりです。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
俺の名前はベレン、謎めいた科学者たちが集まるところという意味でXSチームと呼ばれているところのチームリーダーをしている。
身長173cm、体重68キロ、魚座のAB型、偶然にも誕生日は2月29日、だからまだ10歳、チームの中で実年齢では一番上なのに、誕生日のロウソクは一番少ない。
普段の仕事は極秘扱いのことばかりやっているせいで、身の回りのことは極秘だらけ。極秘文書に書かれないのは今言ったことくらいだ。地球防衛戦争でロボットを作ったのも俺、そのあとの復興のために人工知能の搭載したロボットを開発したのも俺、今や地球防衛軍の主力のロボットを作ったのも俺、極秘だらけになるもの無理ない。
軍の主力ロボットはちょっとした自慢で、火や水を自由に操ったり、破壊しても元に戻ったり、瞬間移動したりと神業のような能力を持っているのだ。そんで、ヴァルキリーがその第一号、ってわけ。ちなみに研究用に同じモデルの二号機も制作したのだが、こっちは今は窓の横でおとなしく座ってる。
そんな俺が次に目指したのはこれらの能力を人間に移すこと。俺は長年研究を重ね、最強の能力の組み合わせを見つけた。あとは人間が耐えられる手術をできるかどうかだか、そちらの方もどうにか方法が見つかった。あとは実験に必要なモルモットを探すだけ。
そんなわけで目を付けたのがカイトとかっていう死刑囚、体力はかなりあるみたいだからこういう実験にはぴったりだ。
俺が見つけた方法ってのは、ロボットを使う。超硬合金製のナノインセクトだ。こいつを大量に静脈から体内に打ち込み、血液で脳に送る。そしたら、脳の未使用領域にそれぞれの能力のデータプログラムを書き込んでいく。やることが終わったら、このロボットたちは、自身のプログラムを破壊し、あとは勝手に体内で異物として処理される寸法だ。実はこの自己破壊プログラム、アポトーシスを考えたのも俺だったりする。
それはさておき、首尾よく本人も同意してくれたので早速実験をすることにした。
本人にはあらかた実験の説明をしたが俺の話が難しすぎたのかどうも理解していないご様子。まあ百聞は一見にしかずっていうしやればわかるか。そうだ、念のために備えて、どんな名前になりたいかだけ聞いておこう。バルキーノか、体がとっさに恐怖を覚えた。名前に憶えがないわけではない。だが、どんな奴だったかまではさっぱり覚えていない。というかその頃の思い出が全くない。そう、道で倒れていたあの時よりも前は、、、
まあ実験と言ってもカイトには手術台に入ってもらうだけだし、こちらはスイッチを押すだけである。ちなみにこの手術台も超剛合金製だ。よく棺桶と間違えられる。全く嘆かわしい限りだ。鍵だけはもしものために鉄でできているが鍵がある時点でアウトだと。
さてと、カイトに手術台に入ってもらったことだしあとは麻酔を効かせて注射するだけだ。
さあ、実験の始まりだ。スタートボタンが押された。
この時点でカイト、いやバルキーノには麻酔がかかっているので、痛みは感じない。
血圧上昇、体温上昇と何やらうるさいが人体改造してるのだから当たり前ではある。が、さすがに限度があるのでそこは注意しなくてはならない。そこでもしミスをすれば、脳に障害が出る可能性も出てくる。
「プログラム終了まで残り10分。ここまで順調です。」
なんとか無事に実験は終わりそうだ。
「プログラム終了まで残り5分。アポトーシスプログラム実行まで後30秒です。」
あと少しで実験が終わる…そんな時、突然重い実験室の扉が開く音がした。
こんな時いったい誰が入って…考えようとしたその時、一気に爆音や銃声が聞こえた。
ドアのほうを見ると、腕に組三つ巴のマーク。確か軍のマークの一つだ。
身の危険を感じるまでに数秒かかった。慌てて外に避難しようと窓へ向かう。バルキーノは棺桶の中だからきっと大丈夫のは、、、唯一鉄でできた鍵が鉛の塊によってえぐられるようにはずれていた。これではまずい、そう思ったときにはすでに遅かった。実験室が突然大爆発を起こした。
時間を長引かせたくなかったのだろうか、爆弾を使ったようだった。間一髪で助かった。実験室の隅に置いてあったバルキリーと一緒に作った2号モデルがぎりぎりで実験室の外へと出してくれた。我ながら優秀である。
一通りあたりを見回すと、実験室はがれきの山と化していた。中のバルキーノもさすがに死んだだろうか、、、いや、その反対側の荒れ地の奥に光るものがある、きっと棺桶だろう。ってことはバルキーノもあの中にまだいる。そう思った俺はその光るものへと歩いて行った。左胸のホルスターから黒光りするあるものを取り出した。
奴を外界に出してはいけない。とっさにそう思った。
「悪いが君が生きているとこちらには少々迷惑なんだ。どうせ死刑囚なんだ、どのみち死ぬんだろう。」
バルキーノの眉間に鉛の塊を8発すべてぶつけながら、悪魔はそうささやいた。
意識が遠のいていくのを俺は感じた。
お知らせ
続・バルキーノはこのリメイク版のあとに出す予定です。
また、バルキーノのリメイクに際しまして、ストーリー、特に後半部分を大きく変更することにしました。