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其の一

-其の一、逃げるまでに。-


 「外は雨だ。」

 僕はただ、うつろな目をして窓を眺める。

 「うん、そうだね。」

 そうやって答える彼女も、どこかうつろな目をしている。

 僕らは、この世界に生まれた。スタートから、時の流れはどんなゲームよりも早くに過ぎ去っていく。

 いままで、何をやってきたのか。何を手に入れたのか。そんな簡単な質問の答えさえ、僕らは出すことができない。

 「何か、ないものだろうか。」

 答えはもう、わかりきっている。だが、その帰ってくるはずもない期待の解をすがるように求める。

 「……」

 しばらくの沈黙のときが流れる。窓べりにある小さな観葉植物は、どこか心躍るまなざしで外の雨を見つめている。

 「外に出よう!」

 彼女のその回答は、私を驚愕させた。誰も、その予想だにしない回答は、雲の広がるもとの上昇気流のように速く、穴あけパンチのように正確な穴をこの部屋にあけた。

 しかし僕は、今までのように晴れると期待して晴れたことのないことを思い出した。外に出たところで同じ感覚にまた、出会うことになるのではないか。憑依されたかのように、この体と心を飲み込まれるのではないか。その不安が、彼女の手を握るこの力に反作用して、握り返す力にも同極の磁石のように反発しその手を離した。

 「やっぱり、ここに居るよ。」

 瞬間、彼女は笑顔とともに消えていった。まるで陽炎が見せる幻のように、やはりそこには何もなかったと実感させる。

 「期待はしない。何もない。やはり、一人だ。」

 そうやって、独り言を呟く。これは暗示だ。もう辛いのだろう、もう耐えられないのだろう、独りはいやなのだろう。確かにそうだ。

 「なら外に出ろ、か。」

 もうわかっている。独りに取り憑かれながら、独りでは嫌だというこの矛盾に、そして、この矛盾は選択肢となって目の前にあることを。

 「ああ、眠い。」

 そんな選択肢から、逃げる。それは意味もないこと、だけど気持ちは少しだけ軽くなる。このまま逃げてしまいたい。そんな風に、眼前にある一本の綱を見てただ、立ち尽くしている。行かなければいけない。行きたくもない。そうやって、思考はまるでエラーコードのように繰り返して同じ答えを吐き出し続ける。

 「・・・・・・」

 そうして、コードの処理は追いつかずに、ついには眠りに落ちた。

 読んでいただき、ありがとうございます。この小説は、大体、筆者の妄想と理想で成り立っています。私の心が荒んできたときに更新するので、期待せずにいてください。こんな人もいるのかぁという程度に楽しんでいただければ幸いです。ご意見、ご感想、誤字脱字などありましたらお願いします。

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