未来
ついに明かされた衝撃の事実ー宮瀬真咲と桐谷未咲が同一人物、一連の事件の黒幕であると。
お台場の廃倉庫で対峙する同期。
「桐谷未咲を確保しろ、その際生死は問わない」
徴収された捜査室メンバーに下された命令は桐谷未咲を消す事。
それを知った篠崎・小池・加瀬・水嶋・木藤は未咲を守るために捜査情報を混乱させてゆく。
宮瀬の思惑とは―
宮瀬真咲=桐谷未咲が行方をくらませてから約一ヶ月が過ぎようとしていた。
捜査一課には緊急徴収された刑事達がいた。その中には小池・篠崎の姿はない。
あの二人に未咲を説得してほしい―そう頼んだのは間違いなく父親の俺だった。
水嶋「加瀬警視正、小池警部補からの連絡は…」
加瀬「すみません、まだ何も」
水嶋「統括官がこの場を指揮するそうだ。見崎明日香、近衛恭介、渋川彰良、桜庭友紀、牧田章吾、泉谷裕佳梨を殺害したのは桐谷未咲だと」
加瀬「…証拠が出たんですね」
水嶋「泉谷裕佳梨の殺害現場に猫のストラップが落ちていたそうだ」
猫のストラップーそれは小池が未咲の誕生日にプレゼントしたものだ。
ゲームのマスコットキャラクターらしく複数あるうちのアメショーだと聞いていた。
加瀬「同じものを小池が持っています。裏付けは…しなくても平気でしょうね。私や篠崎警部も同じものを持ってますから」
水嶋「証拠は隠滅させる。真犯人は吉川瑞希と私は踏んでいるが、恐らく未咲君が全ての罪を背負う形にはなるだろう」
加瀬「未咲が全責任を…」
水嶋「小池警部補から申告があったよ、“未咲は自分がいるからこんな事になった、だからこれ以上追い詰める真似はしないでほしい”と」
加瀬「同じ事を篠崎からも聞きました。だからこそあの二人に未咲を助けてほしいとお願いしたんです」
その時―
木藤「失礼します。先程篠崎警部から宮瀬警部を発見したと」
加瀬「場所は?」
木藤「港区台場の破棄区画だそうです。今もそこに」
水嶋「その情報は確かだな」
木藤「はい。小池警部補も同行しているようですし、間違いはないと思われます」
加瀬「木藤先生、貴方は科学捜査研究所の人間。どうして未咲をー」
木藤「僕は未咲さんと同じ高校出身なんです、しかも同級。クラスでたった一人だった未咲は俺の親友なんです。
人を信じる事の出来なかった彼女を変えたかったんです。大阪府警鑑識課に合格した時未咲は警視庁刑事部付の特別捜査官。俺は未咲ともう一度会いたかった。
例えどんなに変わってしまっても未咲は未咲。だから俺は未咲を助けたくて」
水嶋「繋がりは消えなかったという事か。木藤先生、折り返し篠崎警部に連絡をお願いします」
木藤「分かりました」
篠崎「止まれないって、お前は何のために警察組織に入ったんだ!」
宮瀬「入りたくて入ったわけじゃない!私だって誰にも知られることなく過ごしたかった、でも、あの事件を解決したのは私だったから…」
篠崎「7年前の北品川連続予告事件か」
小池「あれは未咲の所為じゃない!勝手に捜査一課が動いて犯人が動揺したのを俺達交渉課が気付かなかっただけだ」
宮瀬「それでもあの事件は一般人が介入していいものじゃなかった」
篠崎「それは…」
宮瀬「特別捜査官になって気付いた、自分が犯した罪の重さを。私は警察組織にいてはいけないって」
小池「未咲…」
宮瀬「だから…もうほっといて。これ以上罪の意識を重くさせたくない…」
着信音。
篠崎「俺だ」
木藤「木藤です。宮瀬警部を連れて今すぐ逃げてください。先程統括官から捜査員に指示がありました」
篠崎「…内容は」
木藤「それが…発見次第桐谷未咲を確保、その際生死は問わないと」
篠崎「課長の判断は」
木藤「宮瀬警部の身柄確保後、旧夜見川中学校に行けと」
篠崎「分かった」
宮瀬「射殺されるならそうして。私はここから動かないから」
小池「加瀬課長命令だ」
宮瀬「私は行けない。ここで木ノ瀬真人を殺害する」
篠崎「木ノ瀬真人…お前が中学三年の時の担任教師か」
宮瀬「担任じゃない、天使の皮をかぶった悪魔。だから殺す」
小池「殺さなくても済む方法はいくらでもある。木ノ瀬先生は未咲に謝りたかったんだ、一年間辛い思いをさせてすまなかったって」
宮瀬「だったらどうして明日香をいないものにしなかった!ミサキは二人もいて、どうして私が…」
小池「神崎美緒って子が話してくれた。あの判断は間違っていた、対策係の吉川さんが見崎明日香をいないものではなくいるものとして扱うって判断した。
その代わり桐谷未咲をいないものとするって。全部話してくれた」
宮瀬「吉川瑞希は何処。彼女の居場所を教えるなら木ノ瀬は見逃す。」
篠崎「旧夜見川中学校三年三組の教室だ」
木ノ瀬を搬送後、未咲と共に夜見川市へ向かう。木藤のメールには「射殺命令に切り替わりました。加瀬課長の到着を教室で待って下さい」とあった。
統括官は事件の真相ごと未咲を消すつもりだと篠崎はつぶやいた。
一方の未咲は窓の外を見続けていた
篠崎「行って来い」
宮瀬「…じゃあ」
篠崎「間違っても殺すな。急所ぐらいは外せるだろう」
宮瀬「…努力する」
小池「一時間待って来なかったら迎えに行く。今度は絶対離さない」
未咲の背中は初めて会った時と同じくらいビシっとしていた。
篠崎「心配か」
小池「うん」
篠崎「大丈夫だ、きっと」
小池「また渡せなかったっけ。先週渡そうとしたのに」
篠崎「タイミングが悪いんだよいつも。ちょっとは様子見ろってあれだけ言うのに」
校舎の中は三週間前に来た時よりも静かだった。
コートの左側から拳銃を取り出す、残数3発―カートリッジは近衛と泉谷を撃った時に換えてしまった。
吉川「…桐谷さん?どうしてこんな馬鹿げた事を―」
宮瀬「馬鹿げているかどうかは私が決める」
吉川「あの時の事なら私も悪かったと思うわ。けれど対策係としては間違っていないと思っている、それは今でも変わらないわ」
宮瀬「近衛恭介も同じ事を言いましたよ。俺は間違ってないとね」
吉川「ならどうしてー」
宮瀬「木ノ瀬真人が非を認めました。元担任が自白したという事は貴方達の行動が黒である事を示します。理解できますか」
吉川「…っ」
宮瀬「逃がしはしません。近衛恭介と貴方が犯した罪は神にも許されないのですから」
足音。階段を駆け上がる音にまぎれ篠崎と小池の声
吉川「私が犯罪者ですって?桐谷さん貴方警察官でしょ、こんな事していいと―」
捜査員の声「桐谷未咲はその奥の教室だ」
篠崎の声「待って下さい。彼女は犯人じゃない!」
捜査員の声「射殺命令が出た。奴は犯罪者だ!」
篠崎の声「幸人、未咲を連れて逃げろ!」
吉川「犯罪者は貴方よ!私は違う!」
宮瀬「…黙れ」
小池が教室へ飛び込むと同時に吉川の肩に銃弾がヒット。
悲鳴と同時に立ち尽くす未咲の手を引っ張り教室から連れ出す
宮瀬「幸人…」
小池「捜査一課の方が早かった。課長が車で待ってる、篠崎!」
篠崎「分かった。お前は非常口から未咲と先に行け。俺も後で合流する」
小池「非常階段は?」
宮瀬「教室を出て真正面」
両者が飛び出した反対側に捜査員が一斉射撃を開始。うち二発が未咲の肩と右腕にあたる
宮瀬「…っ」
小池「くそ鍵が…未咲何を…?」
宮瀬「鍵が壊せればいいんだよね…離れて…」
銃弾が金属に当たる音が響く。ドアの向こうで鎖が落ちる音
小池「大丈夫か?」
宮瀬「何とか…ごめん…」
小池「気にしないで。篠崎は大丈夫だろう」
校門前。
木藤「小池警部補…!未咲も一緒に…」
加瀬「未咲!」
二人に駆け寄る木藤と加瀬。旧体育館側から篠崎が走ってくる。
加瀬「ありがとう。未咲、大丈夫か」
宮瀬「…お父さん」
小池「ここにいるより何処か別の場所へ避難しましょう」
篠崎「…だな」
木藤「そうですね。捜査一課に見つかる前に」
加瀬「小池警部補、未咲を頼む」
五人が車へ急ぐ。五人全員がこれでーと思った直後。未咲が止まっていた。
宮瀬「…嘘」
教室の窓が開けられ、スナイパーライフルの銃口がこちらを向いていた。
小さな呟きを聞き逃さなかった篠崎と小池が振り返る。
いくつもの銃弾が未咲を撃ちぬいていく。最後の一発が心臓を貫通、未咲が崩れ落ちた。
小池・篠崎「未咲!」
加瀬「いくらなんでもやり過ぎだ!木藤、水嶋刑事部長に連絡を!」
水嶋「その必要はありませんよ」
木藤「水嶋刑事部長…どうしてここに…」
加瀬「水嶋部長…射殺命令が出たってどういう事です」
小池「未咲!未咲…」
水嶋「私は射殺命令を取り消すよう統括官に指示しましたが、独断で判断が下された。とにかくこの場所は危険です」
意識のない未咲を抱え、加瀬課長の息子が務める病院へ行く事になったその車中、俺達は水嶋刑事部長の口から衝撃の事実を明かされた。
未咲が特別捜査官として警視庁入りを果たしてしまった7年前の北品川連続予告事件の犯人は吉川瑞希と近衛恭介、見崎明日香であり、
その真実を知った未咲は自分の手で彼らを出頭させようとしていたという事を―
水嶋「私は未咲君が自分の行動について悩んでいるのを知っていました。手を貸そうとしたのですが、未咲君は断った」
加瀬「未咲は誰にも迷惑をかけたくなかったと思います。父親である私にさえ手を借りようとしなかったのですから」
木藤「自分の同級生が犯罪に加担しているのを知って今回…」
篠崎「未咲は自分の意思で行動した事を間違っていると言った。本当は何一つ間違ってなかったんだな」
小池「それに気付くのが遅すぎたんだ…」
水嶋「木藤先生、次の信号を左に曲がった先の信号を右にお願いします。小池警部補、桐谷警部の様子は」
小池「止血はしていますが先程と変わった様子は…」
加瀬「あー久瀬先生いるか?加瀬だが…ちょっと急患だ。え?いきなりは困る?しょうがないだろう…急患が誰かって?娘だよ
未咲。そうそう、あと翔大は?今処置中?終わったら連絡寄越せって言っとけ」
篠崎「…未咲に兄貴いたんだな」
加瀬「ウチの事は何も言ってなかったな。東京豊洲警察病院に勤務していたんだが諸事情で辞めてな」
水嶋「これから向かう先の病院の救命救急士として勤務していますよ。私の妻も彼に命を助けていただいたのです」
篠崎「…知らなかった」
加瀬「まぁ死んだ家内は快く思ってないだろうなぁ。未咲だけは別の道に進ませたいみたいだったし」
着信音。
加瀬「翔大か。今からお前のトコに未咲を連れて…何があったって?それは着いてから説明する。あと15分で着くから…あ?分かったよ」
水嶋「木藤先生。小池警部補と篠崎警部を降ろしたら一度警視庁へ戻りましょう。加瀬課長もよろしいですか」
加瀬「はい」
藤川市総合病院救急センター入り口。
加瀬「翔大!」
翔大「父さん!未咲は?」
小池「…ここに」
翔大「あれほど危険な目に遭わせない約束だったろ!」
加瀬「すまない」
翔大「すみませんストレッチャーに乗せてもらっていいですか?とにかく何があったかぐらいは今説明してもらいますよ」
加瀬「…背後から六発、うち一発は心臓を貫通している。その前に右肩と腕に一発ずつ撃たれている」
翔大「サバゲーじゃないな」
加瀬「止血はここに来るまでにやったが出血量は酷い。未咲を頼めるか」
翔大「背後から撃たれたって事か…」
加瀬「親父として命令だ、未咲を助けろ」
翔大「分かってるよ妹なんだから」
救命センター処置室。久瀬の声が飛ぶ
翔大「待ってろ、絶対に助けてやるから」
久瀬「桐谷。妹さんの血液型は」
翔大「B型です。確か-だったような」
久瀬「そうですか。新谷さん-の血液パックは」
新谷「あります。ですが数が…」
久瀬「付き添いの方は」
翔大「篠崎さんがAB、小池さんも同じです」
久瀬「大至急確保して!AB型ならショック症状も起こさないはず」
処置中のランプが点いている。ドアの前の椅子に小池・篠崎がいる
篠崎「未咲の携帯か」
小池「コートの右ポケットに入ってた。弾が掠ったのか電源は入らないけど」
篠崎「婚約者が重体じゃ結婚式は延期か」
小池「その前にお兄さんに挨拶しないと。加瀬課長が父親だって分かって許しはもらったけど」
篠崎「手伝ってやろうか」
小池「断る」
処置室のドアが開き、新谷が駆け込んでくる
新谷「篠崎さん…小池さん…ですか」
篠崎「未咲は…大丈夫なんでしょうか」
新谷「今血液が少なくいつショック状態が来るか分からない程の重体です。お二方のどちらから輸血させていただく以外の方法がなくて」
小池「それなら僕が…」
篠崎「いや俺が行こう。結婚前に義兄妹で終わるつもりか?」
新谷「どうぞ中へ」
様々な電子機器の音。
久瀬の声「桐谷、第一手術室に運べ」
翔大の声「はい!森崎さん当直の麻酔医に連絡を。久瀬先生心拍数が…」
森崎の声「第一手術室空いてます!加納先生スタンバイOKです!」
久瀬の声「早過ぎる…外科の速水を執刀医にしろ!それと愚痴外来の田口を!」
小池「未咲…!」
田口「貴方が小池幸人さんですね?不定愁訴外来の田口と言います」
田口と小池の脇を未咲を乗せたストレッチャーが通り抜ける。
田口「今の状態はかなり危険です。心臓を撃ち抜いた銃弾以外にも背中や肩に撃ち込まれた銃弾が多すぎて…摘出しても助かるかどうか」
小池「…そうですか。僕があのまま引っ張っていればこんな事には…」
田口「背後からの一斉射撃、未咲さんは貴方達を守る為盾になったと思います。例えその可能性を本人が否定しても」
速水「田口。何でお前まで徴収されるんだ」
田口「執刀医の速水晃一先生。こちらは未咲さんの婚約者・小池幸人さん」
速水「最近の警察じゃ一人に対し過剰攻撃するんだな。結論を言うなら背後から撃たれた割に銃弾が多すぎる。右肩に二発、背後に六発、左目に一発。
助かる確率は神のみぞ知る、たとえ奇跡的に助かっても警察官に復職できるとは限らない」
田口「合計九発…背後から撃たれて最後の一発が心臓を直撃したとするなら合計十発…」
小池「未咲は誰かに撃たれていた。それも背後から撃たれるずっと前に…」
加瀬「桐嶋統括官!水嶋刑事部長から射殺命令を取り下げるよう指示が出ていたはすです、どうして強行したんですか!」
桐嶋「桐谷未咲は現職の警察官でありながらその権限を侵害したからですが何か」
警備部長「それが間違っていると我々は言っている!」
桐嶋「貴方達は桐谷未咲の本性を知らない。貴方達は桐谷未咲に騙されている」
公安部長「それはない。彼女を警視庁に入庁させたのは私達だからだ」
水嶋「桐嶋統括官、貴方の正義が何であれ命令違反は見過ごせません。そうですね、篠崎達也管理官」
ドアが開き篠崎が姿を現す
桐嶋「篠崎…貴様…」
篠崎「輸血が終わった後に今すぐ戻ってこいとは緊急事態だって事なんですね。これで未咲の潔白が証明できるんでしょうね」
公安部長「当たり前だ。彼女は警視庁刑事部に必要な人材だ」
桐嶋「桐谷の潔白を証明するだと…」
篠崎「未咲の兄-桐谷翔大から聞いてきました。背後から撃たれたにしても銃弾が多すぎると」
加瀬「何…!」
水嶋「やはり誰かに撃たれていたと…」
篠崎「木藤先生によれば保管庫から未咲が持ち出す以前に内部から侵入した形跡があったと報告が上がっています。捜査室メンバーだった天童達を自分の配下にして
帰宅途中の未咲を襲った。銃弾は九ミリ、一方の未咲が使用した拳銃の銃弾は十二口径。何かがおかしいと思いませんか」
警備部長「被害者の現場に残された銃弾は九ミリ…桐谷警部が撃ったわけではないと」
篠崎「はい。恐らく近衛恭介宅で揉み合った際に誰かが引き金をひき被弾したことになります。そして全て計算づくの犯行だったという事です」
加瀬「篠崎、未咲を撃ったのは誰なんだ」
篠崎「桐嶋統括官、貴方ですね」
加納「速水。麻酔は終わった、助けてやれ」
速水「言われなくとも助ける。桐谷、第一助手を頼む」
翔大「はい!」
島津の声「撃ち込まれた数は計十発。場所は俺が指示する、いいな」
全員「はい!」
島津の声「最初は右肩。鎖骨の右下だ、桐谷医師免許はあるな?お前が摘出しろ」
翔大「あった…新谷さん、鉗子。それとメスを…」
島津の声「慎重に行け…よしOK。今度は速水。左目の瞼に金属片が見つかるはずだ」
速水「これか、島津…これ取れるのか?」
島津の声「お前の腕なら大丈夫。桐谷、同じ個所にもう一つあるはずだ」
速水「粕谷、モスキートとガーゼ。ペアン鉗子で金属片を摘出する。三木、眼帯用意!」
三木「は、はい!」
翔大「島津先生右肩終わりました、桜木さんガーゼとサージカルテープを」
島津の声「はいよ。加納先生、一時麻酔を切ってもらえますか?それと手の空いているモノは人工心肺用意」
速水「大丈夫か」
翔大「はい」
加納「島津、ひっくり返すんだろ」
島津の声「桐谷と速水は一度下がれ。いいかここからが正念場だ。今さっき片づけた傷口が開く前に決着をつける」
速水「あと三時間で処置完了か…桐谷、準備はいいな?」
翔大「いつでも」
加納「麻酔濃度戻すぞ」
正直助かって欲しい。そう思うのは兄として当然の事。島津先生指示のもと銃弾の摘出手術に臨んだ俺は未咲が背負った運命の重さを知る事になった。
速水先生や久瀬先生、加納先生は未咲を本当に小さい頃から知っている。小さい頃には沢山の怪我をしてその度に泣かなかった。
父さんは芯の強い子だって褒めた、母さんはずっと未咲の手を放そうとはしなかった。亡くなるまでずっと-
何が何でも助けたいー今この場所にいる全員の願い。加納や田口、島津は彼女が小さい頃から知っていた。
小さい頃は沢山笑ってくれて、入院中の患者みんなのアイドルだった。
俺達の願いは彼女にもう一度笑ってほしいという願いに変わっていた。
島津の声「銃弾は全部摘出したな?速水、ここからはお前の独壇場だ」
速水「…バイタル安定。加納、麻酔濃度をステージⅠまで下げろ。!三木、久瀬先生を!」
翔大「新谷さん人工心肺装置起動。速水先生…」
速水「妹さんは必ず助ける」
加納「ステージⅠまで下げたぞ。速水…お前…まさか」
速水「あぁ、今からバチスタ手術に切り替える。桐谷引き続き頼めるか」
翔大「大丈夫です」
加納「バチスタ手術は拡張型心筋症の術式だぞ!何を考えている!」
速水「久瀬先生、桐谷未咲は拡張型心筋症ですよね」
久瀬「そうだ。未咲ちゃんは亡くなった母親と同じ拡張型心筋症の患者だ。元々心臓発作を起こすほどの危険性はなかったんだが…」
翔大「小さい頃喘息の発作が未咲には…」
久瀬「喘息の発作と思っていたのは拡張型心筋症による呼吸障害だ。警察官になるには致命傷になりかねない程の」
加納「そうか、だからバチスタ手術で元に戻そうと…」
速水「全員準備はいいか!残り一時間で全てを終わらせる、行くぞ!」
田口「大丈夫、速水先生の腕を信じていればきっと助かります。そんなに気を落とさないで下さい」
小池「僕が守るって約束したのに…」
手術中のランプが消える。銀色のドアが開き、速水が出てくる
速水「…田口」
田口「終わりましたね」
小池「…あの、未咲は…」
速水「助かったよ、バイタルは安定しているが当分目を覚ます事はないぞ」
田口・小池「良かった…」
速水「ついでに言っとくが面会は当分禁止だからな。伝えたい事があったらそこにいるタヌキに言え」
未咲が一命を取り留めた事を篠崎に報告するとこっちも片がついたと逆報告された。
裏で事件を操作していたのは桐嶋諒介統括官で未咲は無実放免、意識が戻ったら加瀬課長が一度見舞いに行くと。
捜査室は解体され桐嶋統括官についた天童達はそれぞれ元の所属先で処罰を受けた。
そして一命を取り留めたあの日から二ヶ月後、僕は彼女の病室の前にいた。
小池「…何で篠崎まで着いてくるんだ」
篠崎「バカ。昇進報告があるんだよ、未咲に」
小池「うぅまさか二階級特進で更に抜かれるとは…」
篠崎「お前だって一階級特進だろうに」
翔大「あーやっと来た。未咲が待ってますよ。まぁ二ヵ月間会えなかった方が大きいと思いますけど」
未咲の声「あと三分待って来なかったら破棄してやる…」
翔大「思ったより元気ですよ。それと小池さん、未咲をよろしくお願いします」
小池「…篠崎」
篠崎「俺は何も言ってないぞ」
未咲の声「むぅ…暇だ…」
篠崎がドアを開ける。そしてーベットの上に未咲がいた。
未咲「遅い…遅すぎる…ずっと待ってたのに…」
小池「…ごめんなさい」
篠崎「これからは素直に本名で呼べるな、桐谷未咲警視正」
未咲「二階級特進か、ありがたく受けてやる。報告が終わったならとっとと帰れ!」
篠崎「そう邪険にしなくとも帰りますよ、管理官は暇じゃないんでね」
篠崎がサイドテーブルに見慣れた警察手帳と携帯を置いて去る。携帯には「修理済み」と書かれた付箋。
小池「…怪我の具合は?」
未咲「全部の包帯が取れるまで結構かかるって。大丈夫リハビリも頑張ってる」
小池「そうか。今月中にもう一回会いにこようかな」
未咲「交渉課に戻ったくせに」
小池「どうしてそれを?」
未咲「捜査一課長が来た。小池は交渉課に戻したから安心しろだって」
小池「未咲はどうする。現場に戻るのか」
未咲「復職は当分無理。でも警察官になってこんな大怪我して本当ならもう辞めるべきなんだろうけど…やっぱり現場が好き」
小池「警視正で特別捜査官っておかしくないか?」
未咲「私が復帰するまでお願いね、交渉課課長代理」
小池「へ?」
未咲「篠崎管理官から何も聞いてない?私の復帰先、交渉課でしかも課長だって」
小池「えーーーー!」
翔大「ここ病院ですからお静かに」
それから二年後。
無事交渉課に復帰した未咲と僕は交渉の切り札として警視庁にいた。勿論一年前に式を挙げて。
背中や右肩に残った傷跡を見られたくなかったのかウエディングドレスを頑なに拒否した未咲は父親と兄の説得には勝てず、
結果ショール付のドレスで手を打つ事になった。
結婚後も同期の絆が切れることなく篠崎との交流は続いていた。加瀬課長は相変わらず捜査一課を、篠崎は管理官の職務を全うしていた。
翔大さんも東京豊洲警察病院に戻り未咲の主治医となった。
一方の未咲は交渉課課長として現場指揮を執りながら特別捜査官としての職務も全うしていた。
未咲「さて。今日はどうしようか?」
小池「忘れた?朝あれだけ言ったのに…」
未咲「あぁ…結婚一年目の記念日でしたっけ?」
小池「もう一年も経つのか。お互い気にしてなかったような気がするけど」
篠崎「何だお前ら気付いてないのか?警視庁交渉課のバカップルとして認識されてるぞ」
二人「…それはない」
篠崎「じゃあなんで結婚したんだよ…」
二人「一生お前には教えない!」
これで一応完結です。
相変わらず「ボイスドラマの脚本」としての側面が消えてないですが。
構想上バットエンドを想定していましたが、何とかハッピーエンドに持って行けました。
アフターストーリーも書き始めますので、そちらも宜しくお願いします