カグツチとの話
カグツチに話をするためと連れられ、洞窟に行く事になった俺。
当然だが、洞窟が何処にあるか解らないので、カグツチに言われるがままについていく。
「そういえば、少年は何も持たずにこんな所いたのか?」
カグツチが、俺に寄ってきた恐竜達をオリハルコン(笑)の弓で、あしらいながら聞いてくる。
「何って何を?」
「いや、だから。武器も何も持たずにいだけど大丈夫だったのか?」
「あ、そうゆうこと」
そりゃあそうだ。こんな獣(?)だらけの所に何にも武器無しにいるとこを見たら、ただの馬鹿か
「武器か?……武器は俺自身だ!!」
的な人以外無いだろう。
そこで、俺はついさっき知ったばっかりの自分『能力』について話すことにした。
「えっと……俺はなんか能力を持ってるみたいで。あの幼じ……アマテラスに誰から(動物系限定)でも愛されるみたいな能力を貰ったんだ。だから今あんたが首絞めてるラプトル放してやってくれ」
「……す、すまん」
そう言って、慌てて緑色のラプトルの首を放すカグツチ。すると、気のせいか。ラプトルは目に涙を浮かべ俺にすり寄ってきた。とりあえず頭を撫でると、ラプトルは「ギャウ……」と俺の後ろに隠れてしまった。……怖かったんだな。
「それにしてもいいなぁ。その能力は。俺なんか、火を操るだけだぜ?」
ガッハッハと笑うカグツチ。
いや、あんたの能力の方がいいよ……。
「ガッハッハ……さて、着いたぞ」
そう言われ、前方を向く。
目の前には、大きな崖の真ん中に開いた、洞窟があった。
カグツチが、前が見えているのか。真っ暗闇の中、どんどん入っていく。
そして、3分程歩いた後、少し開けた所にでた。
幅にして三メートル位あるだろうか。そこの壁は円状に削れており、何本かの松明がメラメラと燃えていた。
カグツチは「よっこらせ」と言いながら俺と二人分位はいれるぐらいの布を引き、そこに座った。
そして、俺も座る事にする。
「さぁて。俺がなんで死んでないかって事だよな?」
カグツチが、布のひいていない所に何故かあったハッチの中から一つの酒のビンを取り出す。そして、一口煽った。
どうだ?とビンを此方に向けられた為、とりあえず受け取って一口煽った。
「ふぅ……そうだけど、早く教えてくれよ」
「まぁ、そう急かすな。ほれ。肉焼けたぞ」
カグツチが自身の火で、何かの肉(何の肉かはあえて考えなかった。)を一瞬で焼き、俺に渡してきた。
とりあえず一口。
「モグモグ……」
うん。うまい。何の肉かはあえて聞かないが、噛めば噛むほど肉汁が溢れ出てくる。
「うまいうまい……じゃなくて」
「?飯を喰いに来たんじゃ……」
「いつからそうなったんだよ!!」
何時の間にか話を 変えられていた……。
「で、何で俺が死んでないかだよな」
「ああ。俺の記憶だと、十拳剣だか、天之尾羽張だかでイザナギに切られたってってんだが」
「あー……それ嘘だ」
「……は?」
「いや。表向きはそうなっているけど、俺りゃあ、母さんの陰部なんか焼いてもいないんだ」
「……衝撃的だ……」
まさかの事実が発覚した。カグツチは、嘘をついていたという。
「おいおい、嘘ついたとか言うな。神が嘘ついたらおかしいだろうが」
カグツチが少し不満そうな顔をする。
つうかおい。心読むな。覚妖怪か。
「じゃあ、何でそうゆう事になってんだよ」
再び、カグツチから肉を貰いながら聞く。
「モグモグ……いやな。前に父さんが言ってたんだがな。……以前、一度だけ人間の前に顔出したとき、話をしろとせがまれたんだと。そん時に、話を盛りすぎたら……俺が死んだ事になった」
「……そうなのか……」
カグツチは、災難な奴。今解った。それにしてもカグツチの父さん……イザナギだっけか。どんだけ話を盛ればカグツチが死んだ事になるんだ……ん?
「人間に話した?もう人間が居るのか?」
「は?お前「柚木だ」……柚木はここの人間じゃないのか?」
「え?」
……なんだろう。どうも話がかみ合わない。
と、今までのカグツチとの会話を思い出す。
「(あ、アマテラスにはあったって言ったけど、転生したとは言ってないや)」
これはどうしたものだろうか。転生したって言った方が良いのか否か。
うーん……。
「いやな。気が付いて今まであんた以外会わなかったからさ」
というホラを吹き、少し悲しそうな顔をする『フリ』をする。
「それは……なんかすまない」
カグツチが本当に申し訳なさそうに謝ってきた。……うん。俺、つくづく最低な奴だな。
「さてと……俺の事は話したから柚木も……と行きたいところたけど、聞くのはまた今度にしよう」
あああ……ますます罪悪感があああ……。
「さて。じゃあ寝るか。ついでだから、明日人間の居る所まで連れて行ってやるよ」
カグツチから、思いもしなかった提案が出た。
……人間か。やっぱり、現代の歴史が違うのか。まぁ、過去の事なんかタイムマシンかなんかがないとはっきり解らないしな。
よし。
「本当か!助かるよ!」
連れて行ってくれるなら、その気持ちを受け取ろう。
「じゃあ、明日は早く出るぞ。それなりに遠いからな」
そう言って、カグツチは横になり、いびきを書き始めた。
パチパチと、松明が燃える音を聞きながら、俺も横になり、襲ってくる睡魔に身を任せた。