指でやきそばを食べる
人間は、何かを食べなければ生きていけないが、だからといって何でも食べられるわけでなく、そして──
インド人のカーンさんが叫んだ。
「フォール・イン・ラヴ!」
その声は空に広がり、キャベツとウィンナーを撒き散らした。
爽やかな冬の晴れた空に現れたそれを見つけて、日本の人々は声をあげた。
「やきそばだ!」
神の左手、悪魔の右手──
僕の気持ちを聞いてほしいから、僕は両手をあげて、それを地面にくっつけた。神は見てくれていて、その証拠には何もしてくれなかった。これぞ神の存在証明! しょーもない僕が生かされている!
そして、やきそばを食うのだ。朝もはよから。
しかし、箸を忘れた。フォークもスプーンもない。つまようじもボールペンもなかった。
僕はカーンさんのことを思い出した。
インド人は手を使って食事をするという。
そのほうが食べ物をダイレクトに体で感じられて、うまいのだという。
しかし……、待て! 神の左手悪魔の右手なのではないのか!? なぜ、悪魔の右手でメシを食う!?
どーでもいーよね
日本人の僕は、タッパーに入れて持ってきたやきそばに、右手を突っ込んだ。
車の中で、右手を使ってもしゃもしゃとやきそばを食う僕に、窓外のスズメがツッコんだ。ちょん、ちょん!
うまいなー
自分で作ったやきそばほどうまいものはない!
それを手で食うことほどツッコまれるものはない!
しかし、うまいのだ!
止まらない悪魔の右手!
そして──、指!
どうか──酒井よ──いや、世界よ──
無宗教の日本人に拍手と野ッ菜を!




