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真紅の霧 ペル

僕は人間が大好きだ。吸血鬼にしては非常に珍しいというかほぼいないだろう。大抵のやつは僕の話を聞いてこういう。

「あんな醜い虫のどこがいいんだ?」ってな。


確かに醜いことはそうだ。いろんな品性に欠ける策を作って、吸血鬼を貶めようとしているのだから。

だが、結局負けるという我々からしたら恥で死んでもおかしくないようなことを平然とする。害虫にも満たない虫だ。

その上、一般の吸血鬼一人狩るのに何十人も必要なほど力が弱く、繁殖能力すら乏しいという。なぜ滅んでないのかわからない種族。


そう。”なぜ滅んでいないのかわからないんだ”。

単に、運がいいだけとみんな言うが、果たしてそうだろうか?流石にこの2000年以上、運だけで生き延びてきたわけではないと思うんだ。


次第に興味が出ていったため研究をしてみたのだが、コレがまた面白くて、そこで人間が大好きになった。



様々なことをした。歴史や文化、科学などから学べることも大きかった。人間を飼った……いや結婚して子供を作ったこともあったな。結局、殺したんだが。


あっ、流石に結婚したのは隠しとうしてる。墓まで持ってくつもりだ。バレたら九牙を降りることになりかねん。



だからもちろん知っている。

吸血鬼を真似できる技術が生まれたことも。



ここに、奴らが忍び込もうとしているってことにもな。



だが人類のみんなは安心してほしい。僕はこの情報を漏らすつもりはない。


まず漏らしたところで、今の人間の技術ではここに損害を与えるのはほぼ不可能と言っていい。


だからこそ言わない。そして、僕の秘密の研究の材料にさせてもらうよ。「人類最強の吸血鬼狩り」さん。


ここだけの話だが、僕が研究で成果を出して、九牙まで成り上がれたのは人間の力が大きい。

人間の研究や機械をパクってそのまま出すだけで儲かることもあるしな。



ひとまず今の仕事がひと段落したので、僕は一階に向かった。何をするか?もちろん決まっている。


それでは、さっそく人間探しと行こうか。






……困ったな。

吸血鬼モドキになったとはいえ元は人間。仕草などでなんとなく怪しくなると踏んで、とりあいず怪しい子を絞り込もうと思ったが、


「わからない。」


100鬼以上の吸血鬼の資料を机の上に積み、そう呟いた。


新人が多い影響が、はたまた人間の模倣技術の賜物か、いやおそらく両方だろう。


このままではまずいな。もし、僕以外の前で人間がボロを出してしまったら、殺されてしまう。そうなったら僕の研究機会が、最強とやらを拝む機会はもうない。

そうなったら本当に困る。なんとか見つけ出さないと…

そう困っている俺の背中から、お馴染みの声が聞こえてきた。





「……ペル、困り事?」



「っ、びっくりした。吸血鬼なんだからマナーをしっかり守って。ノックして入ってこいよ。」


全くいつも品性のない。僕が言えたことではないが…

ドールは、いつも通りの無垢な瞳でこちらを見つめてきた。可愛らしい少女。

人間の言葉で例えるなら、ロリババアってやつだ。



「スパイの調査、ごくろぅ。でも、なんの成果も得てないようだね。」


「いやーその通りだよ。早めに動いてくれればいんだけどね〜」


「動かれたらぁもう手遅れ、でしょ。その前に止めなきゃ意味ない。」

相変わらず警戒心が強いな〜

この子も俺と同じ類の吸血鬼だ。


「調査。手伝ったげる」


「マジで?あの仕事激遅で有名なドールさんが。明日は槍でも…」


「終わってないよ。……飽きてきたから。」


やっぱそんなとこか。子供ってのはすぐ飽きるからな、仕方ない。

いつもなら叱るところだが、今回は好都合。こちらの趣味に利用させてもらおう。


「手伝わせて?」


「んじゃ遠慮なく頼むよ。とりあいずこの50人…」


といって、資料を渡そうとした時、もうそこの彼女の姿はなかった。




……もしかしてあいつ、手探りで全員分調査する気か?

この広すぎる館のなかを?


…ひとまず、追いつける気もしなかったので、ドールはほっておいて探すことにした。




ドールの好きなエリアは北側だから、おそらくそっちを探るだろう。だから僕は南側のエリアを捜索することにした。


ここら辺は研究施設や実験施設、機械などが中心のエリア。それゆえにあまり人気がなく、隠れてるなら監視のやつにバレそうなんだが…

無駄足にならないといいな。と、そう思っていると、


…ん?




こちらに向かって、走ってくる人がいた。



“人”がいたんだ。


!?



どうやら吸血鬼に追われているようだ。


しかし、どうやって館に忍び込んだ。なぜこんなところに、なぜだ、さっぱりわからない。



その人間は、人間にしては、かなりの速度で走っていたが、力を使いすぎたか、少し躓いた。

その隙を逃さず、後ろの吸血鬼が速度を急激に上げ、男の手を掴もうとした。



そして、僕はその手を振り払った。




どう言う状況であれ、相手が誰であれ、状況を知らないままことが進むのはよくないと思った。それに相手は人間だ。死なせる前になるべく情報を聞き出したい。


「そこの貴方。その虫ケラを殺していただけますか?」


吸血鬼の女がギロリとこちらを見た。

「すまない。止めて悪かったが、僕はちゃんと情報を聞き出した方がいいと思ったんだ。相手が人間だろうと油断は禁物だからね。」


目の前の吸血鬼は仕掛け人でない。


この子は3年前以上からいる。つまり、似鬼血が開発される前からここに勤めている子だ。確か名前はカルドという名だったはず。


吸血鬼は感情によって、「人間と協力することなど絶対に不可能」と世界のルールとして設定されている。

目の前の人間の協力者であるはずがない。


となると……ますます意味がわからない。なぜ、人間がこんなところに入り込むことができたのか…

いや、よく考えると、ここは人間に対する対策が甘い。入ること自体は可能っちゃ可能だろう。誰もやらないだけで。

となると少し読めてきた。差し詰め死刑囚か、大罪を犯した兵士あたりがダメ元でスパイとして送り出されて……

ふむ、少し読めてきたが、


とりあえず捕縛の術式を編んだ。この先は捉えてから考えることとする。



今思えばこの気楽な考えが、






大きく間違っていたんだな、とそう思った。



これからも頑張ります

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