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第56話、エピローグ(1)





 私が目を覚ましたのは、それから3日後だった。


 外傷は瀬戸先生のヒーリングであっという間に治った。しかし、激しいストレスと緊張感が一瞬で解けてしまったせいか、それとも精神的な混乱のせいか、私は何日間も気を失った状態だった。


 ベッドの上で目が覚めた時、隣にはぐっすりと眠っている沙也と瀬戸先生がクロスしたままで、床に寝転がっていた。


「三日間ずっと泣きながら君のことを看病していたんだから当然だろう」


 そこで私が初めて会話を交わしたのは、驚いたことにチョ・チョルヒョン総官だった。いつものように背筋をまっすぐに伸ばして、彼はベッドのサイドチェアーに座って本を読んでいた。


「総官が直々私の面倒を見てくださったんですか?」


「まさか。お味噌でももっと貰えるかと思ってやって来たら、たまたま君が目を覚ましただけだ」


 では、果たして瀬戸先生と沙也の上に覆われている毛布は誰がかけてくれたのだろう。 私の視線を感じたチョ総官は咳払いをしながら話をそらした。


「三日前に君が意識を失ったまま運ばれてきた時は、まさか死んだのかと思った。あんなに冷静さを失ったミルは初めて見たんだから」


 ちょうどその時その場にウズクマルタカがいたのが、まさに幸いだった、と彼は付け加えた。


「あの男がいて本当に助かった。君やミルも苦労したが、ジヌが現場にたどり着くまでその場を収拾し、イマエールの連中を拘束していたのは、あの男だったんだ」


 イマエールの名前を聞いて、私はつい我慢できず体を起こしてしまった。


「そ、そういえば、イマエールは!」


 チョ総官は黙って横になっていろと、手で合図を送りながら話を続けた。


「当然、留置場に入っている。これまで明らかになったことだけでも、誘拐、人身売買、暴行、殺人未遂など一つでもばれればその時点で終わりだという罪名が、いくつも出てきている。


 これから少しずつ締めていきつつ徹底的に調べるべきだ。イマエールなんてどうせ中間策に過ぎない。本当の黒幕を掴まないと」


 鋭く輝くその目つきを見ると、彼は本気のようだった。 私なら総官に尋問を受けるよりむしろ名誉な死を選びたい。 イマエールに名誉なんて多分ないだろうけど。


「(すべておまえの因果応報だ。私を恨むなよ、イマエール)」


「君もはっきり目を覚ましたみたいだし、俺は行く」


 総官は本を閉じて、立ち上がった。


「さっさと治って、戻って来い。ジヌも、ミルも、君がこうしているせいか、皆もうまぬけなことしやがっている」


 彼は私の挨拶も聞かずにドアを開けて出て行った。


 そしてドアが閉まる音に、目をこすって沙也と瀬戸先生が目を覚ました。


「うん……あれ?法次…?」


「ほう……足原君がどこに…あら、足原君…!」


 寝ぼけてぼさっとしていた2人は、すぐベッドの上に座っていた私を見てびっくりした。


「あはは…… お、おはようございます」


「ウアァァァン、法次!」


「足原君!」


 ……これ、どこかで見たような気がしますけど。


 大声で泣き叫びながら、ベッドの上に半分横たわっていた私を抱きついてくる沙也と瀬戸先生の重さに、私はデジャヴを感じた。


「クアッー!沙也、先生…!揺れるよ…ま…くらくらする…」





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