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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
46/48

growth 45〔転生竜、神は私たちの希望を叶えたい〕

 衝撃で起きる風に転々とした後、真っ白夜になっていた世界が再び夜を表す。

 光が落ち着くと共に色付く世で唯一立っていたのは瑠唯、見つけた時には輝く小さな粒が彼女の周囲から空へと舞い上がり――消える。

 それとは別に、誰かと話していた様子で。その相手もまた小さく霧散し失われたのが分かった。

 ――ヨイショっと。

 何と無く、普段通りの姿になった瑠唯の所へと行き傍に寄る。


「終わったんですか……?」

「そーね。今のところは、かしら?」


 実に意味深。ただ、それよりも――。


「――……あの剣、持ってたんですね……」


 てっきり無くなった物と思っていた。

 一応周辺を見たところで(ソレ)自体は見当たらない。既に回収された後だろうか。


「神器はそう簡単に破壊できる物じゃないの、言ったでしょー?」


 まぁ、確かに言ってた……。


「迷宮探索で入手した物を活用するのは、冒険の醍醐味よねー」


 同感です。


「さ、融通の利かない上司が来る前に、ショウ君を助けましょ」


 ……ショウヤさん? そういえばショウ年は、何処に――。




  …




 探した結果を言うと少年は近くに居た。横たふエルミア嬢の傍ら、意識は無く殆ど死んでいる様にも見えた。

 と言うのも皮膚が(ただ)れるみたいにくずれており、一見すると外傷の要因は確認できないのに全身は焼かれた跡。――どういう経緯でこうなるのか想像すら働かない。

 故に意識無く倒れている少年の状態に戸惑っていると、瑠唯は全く動じる事のない感じで収納空間から謎の天秤を取り出し、崩れかかった肉体の上に置く。と――。


「我は天秤の針を失いし者……、この者の命の灯を示せ」


 ――片側の皿に突如として蒼い火、魂の様な玉が現れる。

 おお……。――けど。

 その光りも大きさも余りに乏しい、まさしく風前の灯火状態。


「あら、死ぬ一歩手前って感じね」


 なら悠長な感じになってないで。


「ふふ、あとで驚くかしらー」


 いいから早くゥー。







 瑠唯が使い終わったであろう天秤を元の所に戻して直ぐ、倒れていた少年が目を開けて周囲の状況を確認する、と――上体を起こし、不思議そうに自身を見つめて瞬く。


「多少顔に跡が残ってるけど、それくらいは男の勲章よー」


 本人にとっての勲章かどうかはさておき、親玉みたいで恰好良いと思うぞショウ年!


「……僕は?」


 当然だが、やや混乱気味。


「ショウ君は死に掛けてたのよ、だから私の命を分けて治したのー」


 ェ、そういう仕様(コト)だったの……。なのにあっけらかんとした。


「……瑠唯さんの」

「ふふ、遠慮しなくていいのよ。どのみち勇者は死ねないからー」


 マジかよ、それアリなの。


「けど神器の力は呪い、騙し続けるには暫く何をするにも近くに居なきゃ駄目ねー」


 周囲がザワつく、否――俺の胸中だけか……?


「……何で、僕を……」


 イイじゃないか少年、イイ事だと思うぞオッサンは。

 何て冗談は口に出さず問われたであろう人物の返事を窺う。


「あら、勇者が何かを助けるのって、変かしらー?」

「……ちゃんと、答えてください」


 む。――初めて見せる明確な意思表示。


「――……お礼よ、本当にただソレだけ」

「お礼? 何の……」

「それは女の秘密よ、ダーメ」


 チキショウめ、悪魔的だぜ!


「でも、……?」


 駄目だぜ少年、これが男の辛さってヤツさ。グッバイ青春。







 心の何処かで少し期待はしていた。

 ――しかし現実は何もかもハッピーエンドでは終われない。


「亡くしたモノは勇者でも治せないの……」


 そうか。


「……僕の」

「誰かの責任ではないわ。彼女はただ、自分が大切だと思うモノを守っただけよ」

「でも……」


 いや、そうだ。――きっと。

 自責の念を見せる少年の腕をそっと掴む。本当は肩が理想だったが、身長の差がね。


「ランディ君……?」


 もう何も言うまい。ゆっくりと首を横に振る。


「……ぇ、何?」


 ウソでしょ。――今時の子って、コレ分からないんだ。


「あら……世代ねぇー」


 アナタもでしょ。




  …




 今居る空は未だ暗いが世界の変化は特に関係がない。

 二度目となる。


『最終層守護者の撃破を確認――』


 お。なら、お次はと転送されるのを待つ。――が、一向に。

 はて? まさかトラブル。この期に及んで嫌なのですが……。

 不安に駆られる。

 と次の瞬間、光の球体が神々しく渦巻く輝きの中から其々に――合わせて計二つ、状況が進行するのを待っていた三人の前で出現する。


『此度の達成も見事なものでした。迷宮を攻略せしアナタ達には神々からの褒美、兼ね合う願いを授け、もしくは与えましょう』


 姿と場所が異なるものの馴染みある展開に、調教された日本の教育文化宜しく安堵する。


『……――アマウネトよ、キミの正使はなかなかに諧謔(ユーモア)だ』


 ぇ、ァそっか。


『……――上席と位置付けるのは尚早ですよ、ヌン。精々特使が現状は妥当です』

『それならば、彼の者の有権を我に託すと言うのは如何だろうか?』

『世迷い言を……』


 それ以前に俺の人権を無視するな。


()り言は神の定めではないかな』

『ヌン、アナタは……』


 てかこの三文芝居を何時まで見ている必要が、あるのか?

 当事者以外、誰もがそう思うであろう頃合い――を見てか、ため息交じりに瑠唯が動く。


「神の境界に延滞を(おそ)れる観念って、無いのかしらー? だとしたら滑稽(こっけい)よね」


 途端に二球が静まる。

 言い方は遠回しだが恐らく、ぶっ刺さる言葉だったのだろう。今後の事で加味し、俺も見習おうっと。


『……勇者よ、何れにしても二柱の御前なのだぞ』

「命有る者は全て有限よ。それに舞台へ上がるのはいつも道化方、いい加減出演料を貰えないかしらー」


 うむ、御尤もでしょう。


『――そうですね、アナタの言う通りです。少々戯れが過ぎました……。――先んじて、その願望をお聞かせください』

「無いわ、私はねー」


 そう言って顔を隣に居る少年の方へと向ける。


「……僕も、無いです……」


 今の若干脅しじゃありませんか……、大丈夫? 本当。


『ではアナタ達は、有する恩寵の権利を他者に譲渡すると言うのですね……?』

「そういう事ねー」

『――アナタも、それで好いのですか?』

「……ハイ。僕には、好きに選ぶ権利は無いと思います……」


 そんなコトはないと思うが。ショウ年はめっちゃ頑張ったと思うぞ、あんまり見れてはないけどもね。と――。


「――なんか、……遠慮してませんか?」

「してないわよー。私は初めから残業、ショウ君はその方が、後で納得すると思うわー、でしょー?」


 聞かれて、静かに少年は頷く。

 渋々――イヤ、わだかまりはありそうだが概ね了承と言った感じには見える。


『それでは恩寵の行きどころを確定しました。――アナタの、願望をお聞かせください』


 とうとう自分の番が回って来た。

 俺の、――望む事。――その願いは。








  転生竜、神は私たちの希望を叶えたい/了







 

次話にて【転生竜】の【一章】が終結いたします。


又、一章の終結後は投稿を暫く休止し別作品の物語を進める等したいと思っています。

※なにとぞ、ご理解のほど宜しくお願い致します。m(_ _)m

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