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growth 3〔転生竜、竜生活の幕開けそれは運悪く〕②

 初っ端の女神と話した時とは少し違う空間。けれども雰囲気は似たもの。

 目の前には神託を行う神が居て、俺が居る。それだけの異空間。

 世界は暗く、なのに互いを明るく認識できる。

 そしてハッキリと分かる相違点を見つつ断言するとすれば、その神々しさ――だろうか。


「うわぁスッゴク胸にぶっ刺さる言葉ですよ、ソレ」


 おっと、ここでは口にしてもしなくても同じ扱いなんだった。なっと。


「失敬、忘れてくれる?」

「……神の格に触れる発言をしておいて、それを忘れろとは如何かと……」

「でも実際下なんでしょ?」

「う、上とか下とかではなくっあの方は総轄そうかつなんです!」


 言ってるコト的には一緒じゃんか。


「一緒じゃありませんっ、アナタが元居た世界の基準で話さないでください!」


 うーん、ではそもそもの器の差なのか?


「更に失礼が過ぎますッ」


 せっかく見た目はゆるふわで俺好みなのに、勿体ない。


「ぇ、そうでしょうか……?」


 ま、推定で考慮すると。ブッチャケそれでもキツイか。


「キツッ、――いい加減にしてください! 第一さっきから内心ばかりで、こっちは内なる声を聴くのに疲れるので止めてくださいっ」


 はいはい。


「ハイは一回!」


 はい。ほいだら――。


「――女神様、質問です」

「まったく。ハイ、どうぞ」

「迷宮内で成長が出来ないというのは本当?」

「はい、迷宮内は外界と時の流れを共有していますが感覚としての成長を除き、肉体的な生育はありません」

「つまり元から出来るだけの力があれば技術面的な成長は可能と」

「その通りです」


 なるほどな。

 それはそれで悪くない。が、――肝心なのは。


「て事は俺の成長は……?」

「全く進んでません。最初地上に居た一時間程度の成長具合です」


 殆ど無きじゃん。生後一時間のままじゃん。


「なのでアナタの願いが成就する為には後九十九億――」

「ああもういいっ」


 聞く気すらも起きない。


「これはひとえにアナタが原初の創造竜を選んだが故の足枷の様なモノであり、こちら側の責任ではないと……」


 それは分かってる。――けれども。


「俺はバハムートでお願いしたかっただけで、その創造竜ってのは……」

「結論として同じ事です。その様な名の竜種は存在しないのですから、つくるしかありません。創造竜は世界を創りし原初の竜、名も無き個体に名を持たせ馳せる以外に方法はありません」


 そう言われるとって抗議の意思を呑み込みはする。

 ――ちなみに。


「それ以外だと他にはどんな最強種が……?」

「最強……と呼ぶかは分かりませんが、人々に恐れられていると言う点を押さえて五種、火竜の炎種サラマンドル、水竜の氷種タカオカミ、地竜の震種ヤマタノオロチ、風竜の嵐種テュポン、空竜の天種ハクリュウ、これらを五大龍と呼び人々はあがおそれ時にたてまつる事があります」


 うわー、そっち系は存在したのかァ。

 一つ知らない奴が居ながらも概ね有名じゃん。


「――で、其奴らはどれくらいで成熟するの?」

「大体一万年位です」


 永ッく無い!

 イヤ長いけど、百億(オレ)とは比べ物にならないな。フッ。


「そこ比較して自負するところでしょうか……」


 べつに自惚れてはいない。が。


「永い目で楽しまないと、やってられないでしょ……」

「……それもそうですね」


 ま、取り敢えずは。


「とりま現状は脱出するのが先決、例の話はその後だな」

「はい。拝命だけでなく、いち女神としてアナタの願いが成就する事を願う傍ら助けとなる神託をしましょう」

「ぁ、やっぱり上司なんだ?」

「違いますぅ!」


 まあいいや。――んじゃま、今回はこの辺で。


「あ! 女神よりも先に行くなんて――!」


 さいならー。




  ※




 目を覚ますと、早速未探索の領域へと歩んで行った。

 迷宮内での当初は常互いに離れず警戒をし続けることで危険な状況を避ける、懸念を抱きながらの怖々とした進行だったが。

 現在はやや先行し状況を確認してから相棒に合図を送るなどして安全と進度を上げている。――というのも。


「ありがとう、スプランディ」


 いいってことよ。

 やはり、背後からの襲撃はとんとない。

 この迷宮内で戦闘は殆どが進行した先の部屋で待機しているか、一定の順路で移動し続ける形式の――魔獣のみ。

 今のところは、だが。

 そして各階の目標とする何かを達成すれば次階へと上がれる転送装置が起動する仕組み。

 大抵は強そうな奴を見付けて倒す、事で先に進めては来れた。が。

 ――ム?

 今回は、これまでとは少し毛色が違う様子。


「スプランディ、これって……」


 間違いなく、これまでと同じ転送装置(ゴール)だ。

 見たところ起動してはいない。

 何故だ……?

 来る途中に別の道は無かった。

 最初、分かれ道が在ったのは結構前の話で――。

 うわマジか。

 ――あそこまで戻らないとイケないのか……。


「……戻らないと、かな?」


 やはり考え方として同じになる。

 面倒だが他に当ても無い。

 ま、RPGだと度々起こる事だ。行き止まりだった等という状況は。

 ただ今回の場合は行き詰ったというより先の進行ができなくなったので、戻る訳だが。


「戻るのは大変だけど。もう少し、頑張ろ」


 そうだな。

 B2階(ここ)まで来た以上残すは最後の階そして砦、――迷宮の守護者(ボス)

 無論この階層での目標を達成した後、まだまだ油断は一切できない。

 しかし当初の絶望的な展望を潜り抜け、ここまで来たのは本当偉い。

 過去を鑑みて、引き返す程度の苦労など屁でもないわ。


「行こう、スプランディ」

「クァ」


 ちいとばっかしおっさんの方が励まされちゃったな。

 何故だか胸が締め付けられる感じの痛みがしてくる。

 イヤ、と言うか本当痛いぞ?

 何――。


「スプランディ? どうしたの」


 ――いや、急に。


「……スプランディ?」


 待っ、――変だ。


「“スプランディ”」


 視界が、オカシイ。


「“食べて”」


 何を――?

 同時に口の中で苦味が。

 ふっと、知らないうちに周囲の様子が一変して暗転。

 どうなってる? ひょっとして女神の園。――いつの間に。

 イヤそれよりも少年は――。

 ――マテ苦しい。今や胸の締め付けは確かな感覚となり、身体を激しい苦痛で苛む。

 何だ、何だ、何だ。――息が、止まる……。

 けれどもその前に、残された肺の、……吐息を!




  ※




 激しい熱量を肌で感じた直後、不自由であった肉体の緊張が解ける。

 ――正確には拘束していた蔓が離れ床に落下した痛みは、全てを思い出させる。

 痛ェ……。

 でも、そうか。――そうだった。

 完全に記憶を呼び覚ます。

 俺は、俺らは現在、迷宮のボスと戦っていた。

 分かれ道に戻る事なんてしなかった。

 選んだ道は、ハズレではなかった。


「――ッァ!」


 捕らえた筈の獲物が逃げ、慌てているのかそれとも怒りか。

 どちらとも分からない。

 何故なら相手は迷宮の大部屋に根付く巨木の怪物。

 入室後の不意な出来事その全てがハッキリと想起する。


「クァァッ!」


 思わず声にまで出てしまったが。本当言うまでもない。

 ――が敢えて鼓舞する感じに。

 この落とし前はキッチリと、その身をもって知っていただこうかッてね!

 行くぞゴルァ!

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