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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
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growth 37〔転生竜、笑う門には厄来る〕

 一応慎重に話の流れを、誰かの気を悪くさせない配慮を自分なりにしつつ、説明を締め括る。勿論不要な事は言わずに。


「――なので神器云々、起こった一連の流れは終息したみたいです」


 結果万事解決とまでは言えないが、最大限にすべき事柄を達成できたとは思う。


「そう、良かったわねー」


 真偽はともかく三人の中では最も純粋な喜びを見せる。

 他二人は――。


「……世界の創造」


 ――内一人は神妙な面持ち。

 (ショウ)年に至っては鬱々(うつうつ)とした表情で(もだ)し口を開かずにいる。

 ふと幾つかの気になる点が、生じる。


「そういえば、二人はイツ目覚めたんですか?」


 明確にその答えを知っているのは、たぶん一人だけ。自然と、その人物に目が向く。


「意識が戻ったのはショウ君が先、エルフの彼女さんが起きたのは三十分位後かしら?」


 なるほど。

 察するに、瑠唯はショウ年の情態を理解していたのかもしれない。

 つくづく内面、何を考えているのかが掴み難い。

 ――正体不明とまでは言わないが、得体の知れない胡散臭さ。――それは一種の。


「怖かったわねー、起きて早々に怒るんだものー、エルフの彼女さん。ね、ショウ君」

「ぇ。ぁ、いや……」


 まるで何事も無かったかの様に接してくる相手に対し、明らかにショウ年の方は対応で困っている感じが、見て取れる。

 少年よ、それもまた人生経験。私とて、目の前で起こる事を理解するよりも大抵は状況が先に動き出す、――専ら。

 エルミア嬢の鼻頭が瑠唯の方を向く。

 理由はさて置き再び一触即発か、そう判断する矢先に。


「エルフの彼女はやめてください。ちゃんと、……エルミアです」

「……あら」


 途端にあの艶笑(笑み)


「ならエルミちゃんかしら」


 ――エルミちゃん、だと……。


「言っておきますがワタシはアナタよりもずっと年上ですよ」

「あら、エル子さんだったのかしら」

「……エルコ?」


 ああ多分そういうセンスは古いです。







 何はともあれ現状、そして今後の流れについても話を合わせたいと思った。


「私とエルミアさんは目的を果たしました。神様の提言もあり、あとは迷宮を攻略して戻ります」


 何処に戻るのかは、今のところ明確ではない。が恩寵を得る必要もあり、そうせざるを得ない事の次第だ。


「そーね、どのみち地下迷宮から出るには守護者を倒さなきゃダメねー」

「ココって……地下迷宮だったんですか?」

「あら、逆さ水晶よ。確認せず入ったのー?」


 というより直行で送られたから機会は無かった。


「背水の覚悟って感じかしらー」


 そんなカッコイイ内容なら……、下手しい二進も三進も行かない状況になっていたら如何する積もりだったんだ?

 イヤどうせ何も考えてはいまい……。

 本当、事なかれ主義の隠蔽は神様でも陥り易い、と覚えておこう。


「――帰還の石は?」


 エルミア嬢が問い掛ける。ぁなるほど、となるが。


「……帰還の石、何かしらー?」


 よもや。と思ったが、そうか。

 別の世界である以上は必ずしも同様であるとは限らない。

 ソレにはエルミア嬢も薄々感知はしていたのか、特に追及する素振りは無く。


「いえ、知らなければ今話題にする必要はありませんね」

「あらそう、残念ねー」


 全く気持ちが残っている様には見えない。しかし事実今話すべき事ではない。ので。


「じゃあ、協力しませんか? 一緒に守護者を倒しましょう。……ただ」

「いいわよ、恩寵も私達は要らないわー」


 ェ何で。無論、助かりはしますが。


「……理由を聞かせてください」


 当然エルミア嬢も不気味に思うが故の、質問であろう。


「言ったでしょー、私は元々自分の意思で来た訳じゃないわー。上司の尻拭い、さっさと片付けて休暇に戻りたいのよー」


 そういえばそんなコトを言ってたな。ただ――。


「――ショウヤさんは?」


 達と言うのは、本人の気持ちを無視した発言と思うが。真相は。


「ショウ君も同じと思うわよー」


 何故か本人ではなく瑠唯が答える。


「……――本当ですか?」


 こういうのはちゃんと、本人の口から。


「そう、だね……。恩寵は僕が壊した世界の為に、使ってほしい……かな」


 自分(オレ)にというよりかはエルミアの方を気にして言ってる感じが散見される。

 まあ分からなくはない。


「ああ、そーね。いちお言っておこうかしらー」

「――何ですか?」

「ショウ君の仕出かした事は、大半は剣の呪いが原因よー。本人が免罪符にする気が無いみたいだから、代わり弁明しておくわねー」


 瑠唯が言い終わると同時に二名が顔をしかめる。

 一人は居心地が悪そうにし。

 もう一人は当人を目で見るが直ぐに逸らして、先を向く。


「“結果”で示してもらえれば、ワタシは文句もありません」


 シビあこです、エルミア嬢。

 よもやエルフが背中で語るとは。

 心なしショウ年がほっと胸を撫で下ろした様に見える。


「……ありがとうございます」

「不当な感謝は止めてください……」


 そう言ってエルミア嬢は歩き出す。

 続いて、今居る階の転送装置を探す意を酌み始動する皆の意志を乱さぬ程度の声量で、隣を歩く相手へ気になっていた小さな疑問を投げてみる。


「あの、黒い猫って見ましたか?」

「そーね、見てないわねー」


 そうか。懐いている様に見えていたが、知らないのであれば。


「何故かしら?」

「いえ、気の所為だと思います」


 ただどうしてだろうか、もう姿を見る事はない。そんな気が、する。




  ※




 ソレは思念を凌駕する執念。

 今にも喪失し滅する精神を支えたのは純粋な執着心。

 それも今現在尽き果てる寸前、風前の灯火であり、(つい)える心――は、器を見つける。

 しかし奇跡は偶然ではない。

 既に器には満たす力が在り、僅かな隙すら無い。

 ――割り込む、等と弛緩した遣り方では(たゆ)い。

 喰らい尽くす。元在ったモノを呑み込み我が糧として尚、足りず。

 萌える、燃え盛る心が渇望する唯一の潤いなくして精神は満たされる事がない。

 たった一つ、たった一つの願望が再び――芽を生やす。

 我が望みは類い無い。

 唯一無二の好敵手、――勇者瑠唯。その命を取るコトでのみ――消化する。

 目覚めは尚早にして且つ妥当と成る。




  ※




 意外にも最後は平凡な出口。

 丸い装置の前で、引き締まる思いを各々が表現している。

 イヤ。


「あら、ネタ切れかしらー」


 一名だけは、常に緊張とは隔たる所に居る。

 ……本当に。


「瑠唯さん……」


 ショウ年も、自分と似た心境か。


「なーに? もう、るいって気軽には、呼んでくれないのー?」


 まさかそんな、少年よ。と戸惑いながら見る、その顔は同じく困惑していた。


「……足元、なにか落ちてます……」


 呆れ果てた末の対応、中年(オッサン)にはその様に窺える。


「あら……」


 護身符、所謂神社等で売っているお守りの類いだろうか?

 足元に落ちていたソレを、珍しく困った表情をして拾う。と。


「不吉ね……。誰か死んじゃうかもー」


 だったら、その笑顔を絶やして言ってください、ね。








  転生竜、笑う門には厄来る/了

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