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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
26/48

growth 25〔転生竜、ワタシは新しい事どもをする〕①

 



  …




 荷物用のエレベーターにしたって広い。

 大型車両でも運ぶつもりだったのかと思えるほど。しかし内装は極めて平凡、通常がただデカくなっただけ。


「……変わった乗り物だね」


 面積だけなら自分もそう思う。


「なんて言うか、……浮いてるみたい」


 実際上昇はしている。よね?


「――コレは、昇降機(エレベーター)ですね」

「エレベータ……?」

「上下に移動する為の装置です」

「……鉱山とかで使われている昇降機、かな?」

「まさにソレですね」


 なるほど。――全くという訳ではないか。

 己の思い上がりを反省。


「ただ凄く閉塞的……ここだけじゃなくて、この迷宮全体の雰囲気が、かな」


 そう、かもしれない。それはきっと。


「――女神様が言ってましたね、迷宮は環境に影響されるって。ソレが原因なのかもしれません」

「てコトは、迷宮の外の世界が要因。確か十三の……原初、元のランディ君が居た所だったよね?」

「……――そうなりますね」

「どんな所かな?」


 えっと……。どう言えば的確か。


「ココで見た物は外にも在る、よね?」

「あります」

「不思議、知らない形や理解の及ばない仕組み。でも世界が違うだけで同じ人の手で作られた文明――古い遺跡を見たり、其々の文化に触れる時、それ等とも異なる不思議な感覚だよ」


 自分にとっては何の変哲もない、見慣れた壁。しかし異世界となれば特筆することが無い物ですら格別に感じてしまう。

 本当どうなってるんだ、俺の異世界は。

 普通逆じゃない? まあエルミア嬢が興味を持つ事に関して不満は一切無いが。


「エルミアさんは、そういうのが好きですか?」

「ぇ。遺跡? 全然興味ないよ、寧ろ無関心」


 なんでやねん。


「……ワタシってエルフだけど、そういうのを面白いと思ったコト、今まで一度もないんだよね……、変かな?」


 いいえ、知りません。というか基準も分かってません。――ただ。


「変か如何どうかは分かりません、けど周りに合わせるのが正しいとも限りません。なので自分が思う様に、感じる様に生きるのがベストと、私はそう思います」

「……ふーん。そっか、そうだったね」


 ェ何。マズい事でも言ったのか……?

 心当たりが、と動揺している内にエルミアが近付く。


「ランディ君って確か転生者だっけ、その見た目とは違う人物って」


 やっぱり、あの女神め。

 余計な事は伝えていないと言っていたが、案の定だ。


「本当はいくつかな?」


 更に歩み寄ってくる。不気味な動静で。


「いくつ……」


 指の数? な訳ないか。

 しかしどの自分を指して言っているのか。


「初めて会った時から変だとは思ってたよ、だって子供っぽくないよね」


 うわぁ。

 これは覚悟を決める時か。

 それしか、逃げ場も無い。


「……――四十です」


 ェっとエルミアの足が止まる。

 心も決めろ。もう隠す理由は何も無い。


「元は四十代で、冴えない平社員でした……!」


 真面目に言ってて恥ずかしいです。


「……ヒラしゃいん?」


 其処は特に聞き返さないでください。

 とはいえ止む無しとも思える。


「えっと、役職のない立場ってコトです」

「そう、一般の」

「はい一般の職員的な」

「で四十代……」


 本当すみません。


「それだけかな?」

「誓ってソレだけです。逆に聞きたい事があれば、これを機に全部言いますので」


 覚悟なら十全に完了、前を向いて進め!

 という次第だったが何故か相手の方が呆気に取られている様子。

 別の表現で言えば物足りなさ、拍子抜けをした顔で――突如として笑い出す。

 ヘ? 何。


「ははっ、四十ってまだ全然子供だねっ、あはは」


 ェ。ぁそうか。


「――真面目に言うから、五百歳位いってるって、言うのかと思ったよっ」


 本当エルフ、マジのエルフだなって本当思う。てか。


「……エルミアさんは」

「それはダメだよランディ君」


 ゴメンなさい。

 眼鏡も無いのに何が光ったその瞳の威圧感。


「ただ本気で知りたいのなら、ちゃんとした……決意で聞いてね」


 なるほど。発言のニュアンスで、分かった気がする。ザッツ文化の違い。

 で――さて、と互いに雰囲気で見合わせる。


「なんか変な話になっちゃったね……」

「でも十分に気が紛れました」


 今の自分達にはそういうのが必要だったのだと思える。

 事実俯いた気持ちで話すよりも、互いを見てちゃんと話せる方がイツだって望ましい。


「それとね、ランディ君。仕事は大切だけど、全てじゃないよ。肩書きなんて気にせず、誰かに称賛される生き方をしている方が、ワタシはかっこ好いって思うからね」

「……――分かりました」


 んん? イヤ、まあいいか。

 告げた本人が納得した様子で頷いているし、何か言葉を足す必要がない。

 それよりも暫くはこのまま、次層へと向かう合間。――その間に。


「エルミアさん、今の内に一度話を纏めませんか?」

「うん、そうだね。ワタシもそれが良いと思う」


 ならば先ずは前回の園、そして今後の展開を予想した話の組み立てを――、ぬ?

 自由というかは形式に囚われない一匹の黒い獣が、二人の足元を横切る。


「なんて言うか、変わった生き物だよね?」

「そうですね」


 どうも元居た世界に猫と呼ばれる生物は、存在しないとのコトで。


「……なんか、あざとく見えるね」


 それがまたイイんですけどね。

 ただ場所が場所なので、こちらから関わろうとは思っていない。

 いつの間にか気付くと近くに居る。大体そんな存在カンジだ。

 では再度――改めまして仕切り直し、次の段階に移行する。




  *




 幼き頃の記録――。

 いく度も描き重ね合わせた薄い紙の上に僕の夢は、変わらず。

 僕の夢は最強の空想、竜――をも倒す“英雄(強者)”になること。

 何度も描いて重ね合わせた夢の絵は想像として動き出し、イツまでも強く。

 いつしか空想は現実のものとなり。

 僕の夢は――変わらず、竜をも倒す英雄――を屠る、最強の存在。

 今や空想はより現実のものとなり。

 僕は――変わらず弱者のままで、英雄をも葬る。




  ※




 瑠唯の指が僕に触れる。

 直接触れられたのは救助された時以来。


「やっとかしら、神器の力は呪いと同等ねー。勇者の加護で触れても、直ぐには解呪されないわー」


 神器? 呪い? 勇者――瑠唯さんは、一体ナニを。


「アキ君、いいえ――貴方は誰かしら? 私と同じ転移者、元居た世界と異なる場所で、貴方が何をしでかしたのかを(おぼ)えているかしらー」


 転移者……。

 ――ぁぁ。そうだ。全てを――、――思い出す。


「……何、で」


 なにもかも壊れてしまった過去が――、回顧する。

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