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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
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growth 21〔転生竜、迷宮には見せかけの友が居る〕①

 見るからに広い地下駐車場。

 構造は取り立てて気になる所もない内装。けれども静まり返った空間にコンクリートで舗装された床の足音が響く感じは常に空恐ろしい。

 それでも独りで行動する事は考えたくもないし付き従う他の選択は無力な僕に存在しない。だから十字路の様な場所まで来た時、ピュアモルトさんが提案する内容に身の毛立つ思いで聞くしかない。


「手分けすっか」


 つまりそれは分担して、周囲に居る人の数を減らすというコト。


「ラン坊はアキヒトの護衛って感じで、そばに居てやれ」

「ならワタシも一緒に」

「いやオマエはルイとだ」

「……マスターは?」

「アタシは独りだ、気楽でイイ」

「それ私利私欲で決めてませんか?」

「バッカ、適材適所だろ」

「馬鹿って言いましたね、ヤメます」

「何をだよッ」


 取り敢えずこの二人は、仲が良いのか悪いのか、よく分からない。




  *




 女神に転送された直後に起こった一騒動。

 迷宮と伝えられて向かった先が見慣れた景色の多い事にやや戸惑いつつも、その場の流れで次層へと向かう到着したばかりの列車に直ぐ逆戻り。

 その際に偶然、奇跡と言える再会でギルドマスター、ピュアモルトと乗り合わせる事ができたのは自分達としても幸先の良い出だし。

 そして現状の流れも決して悪くはない。

 列車内での三人、ピュアモルトにこれまでの経緯や事情を説明した。

 当初は唖然として驚いていたが、元々の性格。

 あっけらかんと対応をしているところが今や元ギルドマスターとしての器を感じ取る。

 先導や指示も自然だし、何かしらの思わくがあるとは恐らく思っていないだろう。

 というか本当に何か考えがあっての人選なのだろうか……。

 今はただ言われた通りに探索作業を分担し行っているだけ、なのだが。

 まあここまでの次第を聴き取る上では一対一ってのは悪くない状況。でも。

 ――見るからにオドオドとしていて声を掛け辛い。

 しかしながらここは年長者の気持ち、で。


「お二人は、お知り合いですか?」


 横で不安げに歩く少年の肩が僅かではあるがビクつく。


「ぇ。……瑠唯さん?」

「そうです」

「……あの人とは、会ったばかりだよ……」


 そうなのか。てっきり。


「知り合いかと思いました。仲が良さそうなので」

「うん……変だよね、会ったばかりなのに。なんて言うか……」


 ――考え込んでしまった。

 で自分も思うのだが、なんというかこの少年は見た目の割に……。


「アキヒトさんはスポーツとかをしていますか?」

「ぇ。あぁ、それは……一応部活とか」

「なるほど。何の部活に入っているのですか」

「……分かるの? その、部活……」


 ぁそうか。

 一方的にどうこう気にする立場、様相ではなかったのだ。

 しかも先刻ブッチャケられたばかり。


「――えっと、転生者って分かりますか……?」

「……異世界にってヤツなら、なんとなく……」

「いわゆるソレですね、私は」

「ェじゃあ子供、だけど子供じゃない……?」

「ハイ、中身はいい歳したおっさんです」


 外見につきましては色々とあったので省略します。


「そう……なんですね」

「話し方は変えなくて結構です。その方が私としては助かりますので、今は」

「ぁ。なるほど……」


 まあ真実が知れた以上、いずれ何かしらの説明をしなければならない時は来るだろうけど。現時点ではゆっくりと話す機会、付随する追究もまだない。


「アキヒトさんは、そういうのとは違うのですか?」

「僕は……ただの一般人だよ、普通の高校生」


 高校生、確かにそれ位の(おもむき)だ。

 ――しかし。


「最近は一般のノリで、こういう所に若者が来てしまいますか……」


 自分の事を棚に上げる訳ではないが、もしただの人だったのならば不用意に近付く等といった行動には至っていない、と思う。


「ノリって言うか、こんな感じだとは思ってなくて……」


 ああ、なるほどね。


「好奇心は若い内の特権ですよ」


 そもそもな話だが、外の状況を知らないで評するべきではなかった。

 ――こっそりと内省。


「……好奇心、だったのかな?」

「ではどんな気持ちで」

「うーん。……衝動、なのかな……」


 ソレを興味というのではないか。


「でも楽しい気持ちじゃなかった、かな……」


 フム。若者らしい、安定しない気色。


「なら楽しくなる様に努力しましょう、貴重な機会を選んだ訳だし」

「……そうだね。頑張ってみる」


 うん。今に至るまでの事情はさておき、始まってしまった事の止めようがない。だったら楽しむ他にない。


「ところでランディさんは」

「ランディでお願いします」

「ぁ。ランディ、君は……どうやってその、強くなれてますか……?」


 それでも、まあいいか。――そんで。


「これにはいろいろと複雑な事情もありまして、教えれる類のものではありません……」

「……そうなんだ」


 とはいえ言いたい事は分かる。

 そしてなるべく早急に解決しなければならない問題だとも思う。ので。


「えっと、迷宮では外界にない変わった道具を見つけることがあります。探索をしている内に手頃な物でも見つかれば、一時しのぎでも身を守る物としましょう」

「ぁ、ハイ。そうで、――そうだね」


 うんうん、それでイイ。


「でも探せる様な場所ってあるのかな……」


 確かに。見渡す限り駐車区画の光景は続いている。

 仮に商業施設のだとすれば、とんでもない規模の地下スペースとなるだろう。

 ……一応、迷宮の扱いだしな。

 内装は現代風で雰囲気は台無しだが、全体的に含まれる要素としては人を惑わす建物である事に変わりはない。

 て言うか、今更な気もするが。

 とある事を確かめたくなる唐突な行動に少年もまた察して逆の側面へと合わせてくれる。


「動くのかな……?」


 その前に開くか、だが。

 意外にも呆気なく扉は開いた。――ただ。


「動きそうにはないですね」


 キーが無いのは勿論だが、それ以前の問題。


「ぅん、偽物だ……」


 模型という意味でなら精巧過ぎる作りではあるが本来の、車としての性能は全くと言っていいほどに無い。

 文字通りの形だけ、ペダル等は動きもしない。

 何より手応えが乏しい。

 自動車であれば必ず感じられる重量の反発、それが軽薄。

 二輪車程度、とまではいかないが変転をすれば持って投げられそう。


「ランディ君? どうしたの」


 ェ何が。というか何処に向かって声を発して――。

 そもそもしゃがんでいたので顔すらも車体に隠れて見えていない筈。

 ――第一自分は此処だぞ。

 と顔を上げる。助手席のドアウィンドウ越しに見える明仁少年の上半身、何故か顔はこちらではなく車の後方に向いている。

 疑問符――頭上でハテナが起こる。と次なる異変、自分の居る完全に開けた運転席側の扉、その窓枠内で硝子を通し明仁少年の姿が見えた。

 ハ? と思わず。次いで助手席側と車の前方を交互に見定める。

 ぇ二人居る。

 ――な訳ない。

 ただ突然の出来事で判断は遅れた。

 立ち上がりはしたが、同時に勢いよく閉められる扉の間に挟まれ痛みも生じる。


「ゴッ! ゲゥ、――ッ!」

「――ヒッ」


 助手席側から小さな悲鳴。

 マズい。

 油断していた。

 だが通常の会話を行う為には仕方がない事。


「ギガガガ……」


 おいおい凄ェ奇怪な声を発してるな。

 見た目はそっくりだがそれだけで容赦なくヤれる。

 ――変転完了。

 一方的に抑え付けられていた状況を容易く押し返す。


「ッガ、ギガガ……!」


 ギガ? 悪いけど、竜体と成った今の俺にはメガとも感じないわ。


「ひィッ」


 よし、今助けに行くぞ。

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