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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
21/48

growth 20〔転生竜、吃驚仰天はじまりの門出〕

 ――最後は若干ゴチャついたが、いよいよ出立の時。

 当初の目的は直接会っての一言。だったが、大きく方針は変わり。

 我々二人の目的は、とある目標物の回収と可能性な段階ではあるが統合される世の救済。

 既に転生先となった世界は自分が元居た所、原初世界に現界しているらしい。

 先ずは現界した世で異世界迷宮と化した内部に女神の力で、送られて。


“朗報を待ちます”


 続く定型句を聞きながら、隣に居るエルフの緊張した横顔を見る。と不意に目が合う。

 船上で見たあの時の様に、ひと吹きの風が流れる笑みを作る。

 がそれは無理からであると直ぐに理解したものの、同じく表情をこしらえる。

 結果彼女もまた気付き。


「君の事はワタシが、絶対に守るからね」


 ならばと。


「エルミアさんの事は、私が守ります」


 強い気持ちを築く、互いに。


“新たなる刻、世界を彩る祝福が稀少な一輪の華を生まん”


 さあ行こう。

 再び相異なる世の境界――迷宮へ、出発だ。




  …




 到着と同時に燃え盛る業火で視界が真っ赤に染まる。

 開く扉、見覚えのある物体。

 そして充満する白い煙が晴れる段階で気付く、記憶にも新しい人物に。

 何故。だが疑問を解消するよりも先に緊迫した空気を察する。


「……こっちに来るのかも。――ランディ君」


 耳を立てて言うエルフ。

 大丈夫。――今変転は完了した。


「ワタシが魔法で牽制するから、突っ込もう」


 返事として頷く。

 開始早々慌ただしい状況だが、これはこれでテンションは上がるっぽい。

 よし、行くぞオラァ!




  △




「――にしても何で居るんだオマエら!」


 嬉しそうに、見るからハシャグ様子でピュアモルトさんが見知らぬ二人に寄り添い言う。

 その二人は見るからにヤメて欲しそうだ。


「……マスターは何故こちらに?」


 幼く見えるのに確りとした口調で話す、十歳くらい……? の子供だ。


「そりゃアレだ、気づいたらアレでだな」

「どのアレですかマスター……」


 呆れ気味に息を吐く、その姿はまるで。


「貴方エルフねー、迷宮に居るなんて珍しいわー」


 長身、尖った耳と丸っぽい眉。よくある一般的に周知されていると思う特徴だ。


「……えっと。アナタは?」

「私は瑠唯よー。そこに座ってるのはアキ君」

「――……明仁です、よろしくお願いします」


 未だ走り続ける車両内で少し離れた座席(ロングシート)に腰は下ろしたまま、挨拶をする。


「ご丁寧にありがとうございます。私は、ランディと申します。今後ともよろしくお願いいたします」


 ……本当に。子供なのだろうか、と明仁は思う。すると上からガシガシと頭頂を撫で回すのはその言動からして乱雑な人柄なのだろうと思っているピュアモルト。


「マジで変なヤツだろっ、コイツ」


 と言うその顔は知り合いに会えた事で分かり易く、楽しそうで。


「にしても、マジどうなってんだ? オマエらが生きてたのは嬉しいけどよ。ずっと訳が分かんねぇぞ」

「マスター、それは……」


 エルフさんの視線が向く。と気が付けば直ぐ近くに来ていた瑠唯がくすっと笑う。


「感動の再会、積もる話もあるわよねー。私達は隣の車両にでも行ってましょー」


 ニコリと合図され、先行く瑠唯の後を三人に会釈してから――追う。

 気になるのは、その瞳。

 ……目が。

 コツコツと音を鳴らして歩き隣接する扉の前で、一時的に立ち止まる。

 静かで緩やかな動作は大人の女性らしい温かみすらも感じるが、隣へと促された時の眼には冷たさ、冷酷と思える瞳で――発する声色と比べて全く笑ってはいなかった。

 明仁は思う。これまで深く追求する事はなかったが、この人は一体何者だろうかと。

 悪漢達から助けてもらった恩人、と言えばそうなのかもしれない。が何故あの時、あの場所に居たのか、偶然――だとしてその後の。


「アキ君、疲れたでしょ?」

「ぇ。ぁハイ、少し……」


 精神面の疲労を加えると大分辛い。


「しばらくはこのままよ、安全だし今の内に休んじゃっていいと思うわー」


 そう言った相手が、先に腰掛ける。と。


「膝枕したげよっか?」


 ポンポンとセミロングの布越しに叩かれる細長い美脚。


「い、いいですっ。こっちで寝ます……」

「あら、健全ねー」


 ソレに何か問題でもあるのだろうかと思いつつ、特に何も返さず近場の座席に体を預ける。そして眠気とは言い難い、不思議な脱力感に意識は朦朧と――落ちていく。




  ▼




 彼女が言うビルは巨大水晶柱の直ぐ傍らに在る。

 古く、周囲の高層建築が存在自体を薄くしていて何年も空き家状態だとも聞いた。勿論それ以上の情報や関係性は全く無い。

 しかし規制線が張られた今、其処はある種の穴場だった様で。

 最上階の窓を開けると目の前には手で触れることが出来る距離に水晶が在った。


「貴方も来る?」


 何処に。というより何故自分はここまで付いて来たのか。

 建物の前に来た時点で、案内はとっくに終わっていた。

 けれども彼女は拒まず軽い雑談すらもあり、来ている事を容認していた。

 そして戸惑う僕に彼女は微笑み、告げる。


「君には、叶えたい願いってある? もしあるのなら、中で待ってるわー。でもなるべく早く来てねー、バーイ」


 水晶に触れる彼女の身体が輝く。

 と次の瞬間には其処に彼女の姿は無く、忽然と消えていた。

 僕は唖然とし混乱する。

 が時が進むにつれて落ち着き。独り。

 その後、自宅へと戻る道を選んだ。




  ▲




『まもなく地下2階に到着いたします。お出口は――』


 聞き覚えのある音声でも、その内容は初めて耳にする車内アナウンスが流れる。


「お、止まんのか? なんて言うか独特な転送方法だな」


 共感している様子は僅かの一名。

 それもそれで不思議な気はするが、新しい状況に緊張しているのは皆が同じだと思える。


「とりあえず前回みたいな事もあるからな、開始地点ここに戻る事も頭に入れておけよ」


 特に誰も声を出して返事はしていないものの概ね雰囲気で同調はしている。

 すると乗っている列車の速度が緩やかに減速していき。


『――扉が開きます。ご注意ください』


 次いでピュアモルトさんが先頭に立つ扉、ではなく――皆の後方でドアが開く。

 ただ自分を含めて半数以上がそうなる事を案内で知り覚えていたのだろう。やや対応に困っていた様子のエルフさんを小さな手が引っ張り、それに合わせて一名を残して開いた扉から車外へと出ていく流れで。


「……――ちょッ待てよ! オマエら分かってたろッ?」


 小さな笑いも起き、程よく緊張が解れる。

 結果踏み出したのはコンクリートで舗装された――地下駐車場。

 番号の書かれた角張った柱と、剥き出しの天井には見える限りで照明器具が点々と駐車場を照らしている。


「なんだ、堅ぇ床だな?」

「……ここも見たことのない材質ですね」


 そういえばこの二人は雰囲気だけでなく反応もよく似ている。

 性格、価値観がというモノではないが初めて見ると言った物に示す感じが近く、逆に変だなと思うのは。


「アレは何かな……?」

「クルマ、ですね」

「分かるの? ランディ君」


 出会った瞬間からずっと違和感の付き纏う子供。

 と唐突に瑠唯さんがその子のそばへと行き。


「あら、貴方転生者だったのねー」


 転生者……?


「お仲間さんと会えるのは嬉しいわー、よろしくねーて言っても私は転移者の方だけど」


 驚いた。もの凄く衝撃的な顔をして、奇妙だと思っていた子が見て分かる程に仰天した。








  転生竜、吃驚仰天はじまりの門出/了

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