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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
15/48

growth 14〔転生竜、世界最期の日〕

 潜水時間で例えられた変転だったが、実に的を得る表現だったと今は思う。

 息苦しくなる、というかこうグゥゥっと胸に迫る感じが似ている。


「ぐぇぇ……食い過ぎた、胸が焼ける……」

「当たり前です……、何人前ですかアレ」


 まあこういう感じではなく本当ヨカッタと思う。


「イケると思ったんだけどなぁ、もう歳か?」

「誰に向かって言ってるんですか、〇しますよ」


 うわ率直の極み。


「オマッ、曲がりなりにもギルドマスターだぞアタシわ」

「公衆の面前で裸出するギルマスなんて死んだ方がマシです」

「ちゃんと隠してはいるだろッ! ったく、街に戻ったらまたその失言を繰り返されると思うと今から気も重いわ」


 日常的とは同情を禁じ得ない。


「街に戻ったら……?」

「ん、ああ。本部に行くのはアタシとラン坊だ。当たり前だろ?」


 ぁそうなのか。


「待ってください、ワタシはまだ一緒に」

「なんでだよ、アタシに預けた時点で本来は職務終わってんだろ」

「でもランディ君は……」

「何だ? もしかして情でも湧いたのか。ご長寿のエルフ様が未成年相手にとかマズくないかァ」

「違います! そういうんじゃなく……普通に心配で」


 なんともお優しいお気持ちで、本当有難い。

 こっちに来て結構短いスパンで色々とあったが彼女と出会えた事は本当好かったと思う。

 ならば尚の事、確りと締め括り迷惑を掛けずに別れたい。


「――エルミアさん短い間でしたが本当お世話になりました。心より感謝申し上げます」

「ランディ君……」

「ほら見ろ、ラン坊の方がよっぽど確りとしてるぞ。大体遠出するにも臨時研修の実技をすっぽかし続けてるだろオマエ、アレが終わるまではギルド関係者として他国には行けねえぞ」

「……同伴するだけなら」

「バカ、それこそ業務の邪魔だ。それともマジで辞めるつもりか?」


 イヤそれは、絶対に駄目だ。――理由を俺とするのならば。


「私は平気です。エルミアさんは本来の職場に戻って、これまで通り職務に従事してください。決して心配などで自分の立場を見失わないでください」

「――君は、……そう、分かったよ」

「はいよ。ならここで」

「マスター、ワタシも一緒に行きます」

「よしハァアッ? なんでだよッ、今の話聞いてなかったのかよ!」


 エルミア嬢……。


「勿論聞いてました。だからワタシ、研修を行います。今から」

「今からッ? なに言ってんだ……マジで情が移っちまったのか。大体どうやって」

「臨時研修の実技は指定された迷宮の二階層までを攻略する。認可は上役、そして付き添いの冒険者が最低でも一人、必要です」

「……それはそうだな」

「あとは指定の迷宮が近くにあれば、条件は整っています」

「待て、上役はイイとして。付き添いの冒険者ってのは? 今から探すってか」

「それはランディ君にお願いすれば、問題なく進められます」


 ぇ俺?


「問題ありありだろっ、冒険者っつてんのに」

「ランディ君は既に冒険者です。試験には合格しましたよね?」

「それはまあ……、けどまだ手続きとかがだな」

「後追い、略式はギルドの十八番オハコです」

「勝手に決め付けるなよ……」

「でも事実です」

「なら本人が嫌だと言ったら? そもそも成るかどうかの決定も一応はまだだぞ」


 それはまあ成るつもりでいた。けども。


「――ランディ君、急な話でゴメンね。今の話を聞いた、気持ちを聞かせてもらえる?」


 本当に唐突だな。だがしかし、本人の意志が確かだと言うのであれば。


「お役に立てるのなら、光栄です。未熟な私ですが必要ならお供させていただきます」


 そして一礼。


「頭まではヤメてランディ君、ね。お願いしてるのはこっちの方だから……」


 これは失礼。


「……おいおいマジか。ったく、オマエらなぁガチの好き好き同士かよ。歳の差分かってんのかァ?」


 嫌いじゃないぜ、その幼稚な表現。


「マスター、それ以上は冗談抜きで訴えますよ」

「それだけは勘弁してください」


 申し立てに恐れをなし過ぎだろ。


「……てか、君はギルドに加入しなくていいとか言ってたのは、どこいったんだよ」

「状況が変われば、事情も変わります」


 エルフの心と秋の空ってな。


「自分にだけ調子良いヤツだ本当によ。――まあいいや。万年変わらねえと思ってた部下がヤル気出して願ってんだ、上司として見過ごすのも忍びねぇしな」


 どうやら話は付いたようだ。


「で言ったからには、いつでも準備は万全だな?」

「はい、大丈夫です……」

「よし。なら馬車に乗れ、そのまま最寄りの迷宮まで連れて行くからよ。幸いこの辺は古い遺跡とか昔の神殿ばかりで往来が少ねぇし込み入った事もない。直ぐに始められる」


 なるほど。異世界で言うところの片田舎的な感じか?

 ――何にせよ。道中色々と楽しもう。

 待望の異世界生活、その幕が開けるのだ。




  *




 アマウネトの表情が強張る。

 同じ神であるモノですらその面持ちを直に見たのは初めてのコトだった。


『スマナイ、アマウネト……。キミには詫びる言葉すらも罪と、断じて許してはもらえないだろう』

「……ヌン。アナタは……?」

『我は此度の不足に自身を戒める枷を課す。我が罪の赦される時が来るまでその神権を封じ導く神の座からも降りて坐する』

「さ迄、アナタが罪を被る起因は……」

『発端は導き手たる神の摂理。逃れる事は出来ぬが定め』

「ですが異世界への変遷へんせんはあの方が仕組まれた事、準ずる者の立場を弁えて従った上での神々です。――あの方は何と?」

『結果如何(いかん)に関わらず、不問。我に申したのはそれだけだ』

「ならば従うのです。こちらの事などは構わずに」

『出来ぬ。滅ぶのはアマウネト、キミが慈しむ世界だ』

「……――それならば今一度、ぁ……ァァ、……ッ」

『スマナイ、アマウネト……』




  ▽




 今居るこの世界は広大な大陸を中心に小さな島や小大陸等が点在する。

 ――マウネ、と呼ばれる名前。で。

 現在地は大陸の東南、アラビカザント国の海岸に沿った旧街道。との事。

 其処をギルドが有する馬車に乗って、エルミア嬢の研修を行う為の迷宮へと向かい進んでいる。

 ちなみに手綱を握るのはギルドマスターご本人。

 エルフのお嬢さんは馬車の屋形後部で実戦を含む成り行きに適した準備を確りと行っている最中。

 そして自分は邪魔にならないようにと御者台で雑談しつつ旅気分を味わっている。


「昔はこの辺も活気があったんだがなぁ」


 へぇ。――昔か。


「マスターってお幾つなんですか?」

「女に年齢聞くもんじゃねぇぞ。まあエルフ程長くは生きれねえよ」


 なるほど。異世界でも、そういう風潮はあるのか。


「なあラン坊」

「はい?」

「オマエ、アイツのコト、どう思ってるんだ?」


 あからさまに後方を気にした素振りを見せている。というコトは、だ。


「エルミアさんは、とても親切でお優しい方だと思います」

「いやそういうコトじゃなくてだな……。――まあいいや、未成年にする話でもないしな。とにかく頼むわ」


 何を。イヤ――。


「――最善を尽くします」


 迷宮内なら時間制限も無いし、なんとかなるだろう。


「よし。あと少しで目的地に着く、段取りとかは本人も知ってるだろうから護衛は戦いに集中すれば問題ない」

「分かりました」


 そして暫く間が空いた後。


「しっかし歳の差が……」


 さっきから何を悩んでるんだ、このヒトは。




  …




「期限は三日、入った瞬間と同じトキまでだ。――まあオマエらなら一日で帰ってくるだろうがなるべく早くな、アタシが暇だし。頼んだぞラン坊」

「分かりました」

「大丈夫、……大丈夫」


 当人は相当緊張をしている様子だな。


「……――じゃあ行ってこい」


 よし。ええと、確か入口の六角柱の水晶に触れるんだったな。


「エルミアさん行きましょう」

「ぁ。うん」


 斯くしてやれやれという風に頭を掻く、保護者はどっちなんだ? と言った顔をするマスターに見送られ迷宮に入る。


「――ん、何だ? 光って」




  △




 その日、眩い光が世界を覆う。そして異世界は完全に消え去り――消滅した。








  転生竜、世界最期の日/了







 

※最終回ではありません。

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