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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
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growth 13〔転生竜、叩けよさらば開かれん〕④

 死を受け入れたその瞬間、死は遠ざかる。

 正確には目と鼻の先にて静止し凄まじい勢いで後方へと吹き抜け、戦意を失う。


「やっぱ変だな……。オマエ本当に竜人か?」


 だから何、その竜人て。

 てか駄目だ。足が震えて立っていられない。

 崩れる様に全身の力と、緊張の糸が切れる。とその行く先にて、この世のものとは思えない程の温モリ、何故か楽園の扉で埋没する。


「――ほいっと。まあ合格にしてやるよ、アタシが男に身体を許すなんて久しぶりだぞ。光栄に思えよっと」


 人聞きが悪い……。というか、どうなってんの此処。

 若干足浮いてるんですが。


「てかコレ、防火布で出来てたんだな。わざわざコレ越しに遣るとか優しさか? 生意気だろ。大人の男だったら怒りで四肢もいで燃やしてるぞ」


 未成年でヨカッタです。


「とりあえず爺がアタシに言ってきた理由も分かったし、終わるか。――ん? なんだオマエ、泣いてんのか……」


 イヤこれはちょっと汗というか、悔しいからとか。――そんなんじゃなく。


「ったく。初めてで女の体を濡らすとか才能あんじゃねえのか」


 そういうコト言うのヤメなされ。


「イイぜ、誰も見てない所で泣きたいのなら胸ぐらい貸してやるよ。その代わり強くなれよ、少年」


 だからそう言うのは、ヤベろ。

 ――ぁぁ、チクショーッ!




  *




 女神アマウネト、彼女は普段他の神同様管轄する俗世を見守り必要であれば神託を行い世を正す。しかし直接関与するのは極稀で、大抵は使者を介し事を成す。

 ――他の神々も同様に。

 また司る世が異なる場合には決して他の神をその領分を侵してはならず、直属でもない限りは神同士が出合う事は数千年、数万年と訪れない。

 故に悠久の存在であってもその時は不意以外の何ものでも、寧ろ何事かと動揺する。


「……ヌン? アナタなのですか。万世永らく、久しい限りですね」

『ああ、アマウネトよ。キミに逢うのは幾許か……、だがこの様な姿で現れた事を先ずは詫びるとしよう』

「いいえ他神の領域に入るアナタの手前そう成るのは致し方ありません。それに美しい光の球と在っては文句の出処もありませんよ」

『お褒めいただき光栄だ。だが我はその様な姿を見せに来た訳ではない』

「元より神同士が存在を逢わすのです、それでサヨウナラとはなりません。――して、如何な事態が? もしやあの方の身に何か稀有な事でも」

『滅多な事を言うな、旧時を忘れたか』

「無論忘却など致しません。が永らくて薄れつつ、あるのかもしれません」

『フッ、キミらしいな。しかしだ、我の訪れはあの方と何ら関わりが無く自らの失態由縁であると先んじておこう』

「失態……? 神々の中でも冷静沈着と名高いアナタが、一体どの様な失敗を」

『ああ、それを伝える前に今一度――キミに詫びる機会を与えてくれるだろうか』

「ヌン……、一体」


 ――女神アマウネト、彼女の統べる世界に暗雲が近づく。




  *




 実に晴天で、環境にも恵まれている。

 無論下心などは一切無い、断じてないぞ。


「かーマジでここの風呂は最高だなッ。な、ラン坊!」


 ワシャワシャと撫でるな頭部。


「ちょっとマスターっ、せっかく綺麗に流したのにヤメてください」

「あん? あとでまた流せばイイだろ。てか洗い終わってんだから関係なくないか」

「マスターに埋もれたところを念入りに洗いました」

「ばッ、アタシはバイ菌か!」

「黴菌なら石鹸で洗えば死ぬんですけどね……」

「残念そうに言うんじゃねえ! あんな泡で死んでたまるかっ」

「菌であるコトは否定しないんですね」

「バッ、――違ェ!」


 とまあ温泉とは混浴でして。

 さすがに弁解の余地がないので、二人には背を向け湯船に浸かっている次第です。


「――で改めて聞くけどよ、ラン坊。竜人じゃないのなら、どういう状況だ? ソレ」


 ム。ええと……。

 どう説明するかを悩む。

 マスターの話では竜と人の間に誕生するのが竜人で、俺は――。


「短時間だが竜の気配はあった、にしては弱々しいし今は全く何も感じ無ぇ。そもそも何ださっきのアレ、爆発したよな? どういう原理だよ」


 ――それはだね。


「まあ言いたくねぇなら無理には聞かねぇけどよ」


 ……ふむ。有難い心遣いではあるが、この際だ。

 言える事は全部言ってしまおう。

 勿論、はぐらかす内容コトも忘れずにね。




  …




 ――言えるとすればこの位の範囲か。

 凡そ包み隠さずに伝えたつもりではあるが、如何だ。


「ヘェ、そんな風に成ってたのかラン坊のカラダは。竜との合体ねぇ……」


 概ね理解はしてくれている感じだな。

 ただお嬢さんの方はやや戸惑い気味な印象を受ける。


「そう言や子竜が一緒だったって話もあったな。それなら納得だ」


 さすがは異世界、すんなりと肯定してくれる。


「けどよ、一体どの竜種だ? 少なくとも火竜じゃねぇぞ」

「そうですか……?」

「ああ、火竜は火を噴くけど爆発なんてしねぇぞ」


 そうなのか。まあ事実竜種は違う。

 確か――原初の創造竜って。


「それ以前に子供の体で火なんか噴いたら、直ぐ死んじまうぞ」


 ェそうなの。でも。


「竜の吐くブレスってのはよ、肺から出す酸素とかそんなんじゃなく血だ。竜血って言う自分の血を吐いて燃やしてる感じっての? とにかく、小せえと血が足りなくて死ぬ。それだけだ」


 なるほど。だとすれば……。


「まあラン坊はどっちとも言えない感じだし、アタシも全種知ってる訳じゃねぇから一先ずは保留だな。ともあれ無茶はするなってコトだ」


 心に留めておきます。


「てな感じで話も済んだし、飯だ飯。腹減ったろ?」


 そういえば激しく動いた後だからか腹具合が漸く、正常に。


「待ってください。その前に大切な更衣があります」

「ん、ああ。ちゃっちゃと頼むぜ」


 そうか。てかエルミア嬢って意外と着痩せするタイプだったのか。おっとスミマセン。




  …




 見窄(みすぼ)らしいと言えば直情的な感想だが正当。

 何処ぞの浮浪者と後ろ指を指されるのならば正しく。

 しかしながら遂には真っ当な着衣に身を包む事ができた。


「こっちは収納袋と言って、口から入る物なら大きさに関係なく一定数納めることが出来るの。便利な物だから大事にしてね」


 おお、本当異世界っぽいぞ。


「ぉーい早くしろォ。腹減って死にそうなんだが……」


 ていうかアナタのソレは本当に下着なのか衣服なのか分からんぞマジで。

 一応外衣みたいな物も付属して身に付けてはいるが殆どハレンチなままだ。


「マスターはもう少し見栄えと言うモノを気にしてください」


 良かった俺だけじゃなかった。

 てっきり異世界流のファッションなのかと。


「嫌なら見んなよ」

「大衆の面前を歩くのなら、それなりに配慮はすべきです」

「いいだろ、自分が好きで着てる物なんだから文句を言われる筋合いねぇよ」

「ならうちのギルドでは今後男性職員の下衣はホットパンツ、上衣は袖無しにします」


 ワイルド過ぎるだろ。


「……全員は嫌だな」

「オシャレ仲間が増えてイイじゃないですか」

「嬉しくないわッ、てかアタシのにはちゃんと理由もあってだな!」


 結局のところは――。


「なんでだよッ」


 ――ただイケ、それだけのコトである。








  転生竜、叩けよさらば開かれん/了

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