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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
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growth 11〔転生竜、叩けよさらば開かれん〕②

「ま。――そんな訳で説明を頼むわ、お嬢さん」

「最初からそうして大人しくしててください、マスター」


 一体なにがそんな訳なのか、あとお嬢さんと言われるのは問題がないんだなと思いつつ、椅子の背もたれ側を正面にしガニ股で座るギルドマスターの際どい股関節部から清純な森の妖精の方へ目を背ける。


「ゴメンねランディ君、ゴチャゴチャしちゃったね……」


 まあ楽しかったし、特に申し分はない。


「――それでね、本当はマスターから説明するのが普通なんだけど、見た通り話が纏まらない方だから……」


 ぶっちゃけ礼儀とか常識とかは、どうでもいい。

 抑々(そもそも)を知らないし。


「なるべく分かりやすく伝えはするけど、分からない時は正直に言ってね」

「分かりました。よろしくお願いします」

「うん。それじゃあ君の、今後の処遇について説明します」




  …




「――以上が、ギルド本部より命じられた此度の騒動で君が受ける“罰則”です」


 ええっと……。これはその――。


「ま、攻略申請無く迷宮を踏破したとあっちゃ罰を受けるのも当然だわな」


 背後から、話を聞いている間は静かに居座っていた破廉恥ハレンチマスターの厳しい一言。

 ――ウソでしょ。


「ただ現状は執行猶予、本部に行って話をするまでは確定しないとの事だから」


 と言うコトは。


「マスターの監視下で本部へ行き、ちゃんと話をすれば分かってもらえる……と思う」


 思うか……。


「大丈夫だろ、聞いた話じゃ島の連中に押し込まれて入ったんだろ? しかも地下迷宮なら尚の事だ。罰受けるにゃあ不条理ってな、感じでな」


 そう、だよね。


「ワタシもマスターと同意見、君の場合は境遇もあるし処罰されるにしても恩赦、無罪放免だって十分に可能性があると思う」


 ていうか悪い事をしたとは正直思っていない。

 成り行きと言うか、他にどうにもならない状況下での顛末だし。


「かえってラン坊が厳罰になるのなら、島の連中は今よりもっとキツイ話になるわな」


 ランぼう……、よりも。


「島の人たち?」

「聞くに堪えねぇからヤメとっけ」

「……分かりました」


 元より大した関わりは無――、……――ぬ、……――また。


「ランディ君?」

「大丈夫です。――続けてください」


 今は気にする必要はない。

 ――なんとなく、現象の理由は分かっているし。


「うん、辛かったら言ってね」


 心配してくれるのは有難いが非情とかで無理と思う年齢でもない。

 無論他者には知る由の無い内実である。


「――他にはギルドへの加入申請と、その特別試験が課せられます」

「ギルドの……加入?」


 それってもしかして。


「要は管理し易くする為に組織の一部になれってこったな」


 つまりは――。


「だが未成年は原則で冒険者には成れねぇ決まりがある」


 ――なぬ。それじゃあ。


「だから特別試験だ。未成年者でも冒険者に成れる唯一の方法って訳だ」


 おっと、ぬか喜びも束の間を繰り返す。


「それなんだけどねランディ君、君はギルドに加入しなくていいと思う……」


 ェ――。


「――どうしてですか?」

「それは……」


 何、どうしてそんなに辛そうな顔をするの。まだ何も言っていないのに。


「お嬢さんよ、さっきも言ったろ? 遣ってから考えればイイってな」

「マスターっ」

「心配すんなって、ダメでも殺したりはしねぇよ」

「コロ――相手は子供ですよっ!」

「だからしないって! 大体子供だから特別なんだろッ」


 ひょっとして、――この展開は。


「そういう訳だからよ少年、これからアタシと一戦して合格すればギルドに加入冒険者の仲間入りだ。ダメでも本部に行きゃ後もなんとかしてくれる」


 やっぱり。来たか洗礼様式。


「まあそもそも入る気がねぇのなら、話は別だがな。一応聞くが、どうする?」


 勿論――。


「――遣ります」

「なら準備が出来たら早速行くか、昼飯の前に終わらせたいしな」

「……ランディ君」


 心配無用。これは異世界転生では必ず起きるデビュー戦、華やかに飾って魅せまショウ。


「ところで、これは誰のだ? さっきから気にはなってたんだがよ」


 ん? あ、それは――。




  ▼




 女神の園とやらから出るほんの少し前、随分と悩む上で時間を持て余した末に小さな命を救う決断をした。後。


「アナタと彼の者は肉体で紐付きますが精神は一つです。そのどちらに魂を収めるかは自由に決める事が常に可能です」

「でも竜のままだと直ぐに死ぬんでしょ? て言うかその間、(オレ)はどうなるんだ……」

「竜体は人の子どころか他種と比べるまでもない程の丈夫な存在です。まだ子竜と言えど保存方法に気を付ければ呼吸は一日に一度、食事も蓄える等し週一で問題がありません」


 なんか食材みたいな扱いで嫌だな。


「――でも、周りの目とかもあるじゃん?」


 いくら一度でイイと言っても状況的に出来ない時があるのではないか。


「それに付いては恩寵のくだり次第にと告げた褒賞で補う事が出来るでしょう」

「……えっと、たしか神器のコトだったよね?」


 考える時間を取り過ぎてスッカリ忘れてたわ。


「はい。ソレ自体は力の刻印です、アナタの肉体もとい魂に直接刻み付けます」


 それはどんな内容コトだ……?


「ならば早速。――此度の最後となる時を刻む、女神の恩寵を共にし力をその身に刻み」


 ェ待って。その前に使い方は――。


「大丈夫です、刻まれると同時に用途が分かるようになっています」


 ――ぁ、そうなの。それはイイけども。


「さすればアナタの願い、新たなる刻の祝福にて世界を彩る稀少な一輪の華とせん」


 ただ長く滞在した後に気付くのもなんだが。――もしかして寝不足とかですか?

 なんなら若干早く帰ってほしそうにも見える。


「そう思ったのなら不必要な事はせずさっさと決めてくださーい、あと神は眠りません」


 本当ゴメン。でも不服なのに顔色一つ変えない所がァ――スッステキでェェッスッァア。


「そんなコトで調子には乗りませーん!」


 残念ンうわッあああああ――。




  ▲




 ――駄目だわ、全くどころか微塵も華の咲く気配がしない。

 水面に浮かぶ未だ幼い肉体で、木々が風で揺れる葉の向こうまで消失しそうな意識が飛んでいる。されども聴覚は痛みなど意に介さず正常で。


「マスターっなんてコトをするんですかッ? こんなの懲戒処分ですからねっ!」

「待てって、アタシはまだ何もしてねえぞッ」

「なに言ってるんですかっメチャクチャふっ飛びましたよねッ?」

「イヤそれはっ、てか当ててねえよ! 素振りだっつーの!」


 ぇウソ、今の――マジで?


「いいえ思いっきり腹を殴ってましたっ!」

「殴ってないッて! てかなんであんなに飛ぶんだよッッ?」

「マスターが殴ったからですよっ!」

「殴ってなーいッて!」


 正味殴られたどころかその動きすらも見えてなかった。

 一瞬だ一瞬。始めるぞと言ってからパッっと消えたと思ったら凄まじい勢いで恐らくは近くの滝つぼがある川に打ち付けられた結果で浮いている。

 そして今や沈みゆく幼き身体。

 ああ、このまま異世界転生は終わってしまうのか。――無念。


「わっランディ君が、マスター早く行ってください!」

「分かった分かったよ、ったく迷宮を攻略したヤツじゃなかったのかよ。マジでただの子供じゃねぇかッ」


 ――な訳ないでしょ。

 こんな形で、まだ転生竜も始まっていないのに。終われる訳が――。


「ん、何だ?」


 まあ勝つのは無理でも――先ずは一分間。


「なんだよ、驚かせやがって。寿命が縮んだじゃねぇか」


 変転完了。竜の身体に代わり、立ち上がる。


「さっきも言ったがアタシに触れたら勝ちでいいぞ。まあマジで言うと子供に出来るコトじゃねぇけどな」


 そりゃそうだ。さっきのが本気でないのは百パー分かっている。だがしかし子供と言って人の子に見えているのであれば、神器の力が発揮されている。というコトだ。


「んじゃま仕切り直して試験開始だな、次はビビらせんじゃねぇぞ。あと終わったら風呂入って飯食うぞ」

「――“分かりました”」


 よっしゃ。やってやるって気持ちで、遣るぞ!

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