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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
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growth 10〔転生竜、叩けよさらば開かれん〕①

 今居るのが森の中なのか、それとも海沿いなのかも分からない周囲の状況に注意しつつ。

 一筋の光明と信じ向かった先に在ったのは――。


「……これは」


 ――見たところ何の変哲もない普通の木造建築。


「民家……、いえ宿みたいね」


 入り口と思しき扉の上にぶら下がる小さな看板を見、確りと手を握り締めたままでエルミア嬢が告げる。


「……どうしよっか」


 意見を求められている訳でもなさそうだが、実際特に怪しい印象も見受けられない。


「建物自体は普通の物だし、むしろこの霧の方が心配かな……」


 ならば考える余地は無しってコトに、して。


「危なくなったら直ぐに出ましょう」

「うん、そうだね」


 ただ念の為にと先陣を切る勇気あるその行動は――忍びなく。

 次から自分も前に出てみよう。と気持ちを改め宿らしき家屋へと連れ立つ足で進み入る。







 一見して内部の様子は思いの外というより外観通りの何違和感ない普通の内装をしていて、フロントと思われる入口正面の作りに鈴の音を聞いて現れる従業員であろう人物が訪問したまま動きを見せない二人の前でキョトンと目を見開いたのち――(おもむろ)に口を開く。


「……ええと、ご連絡のありましたギルド関係者の方でしょうか?」

「連絡? 誰から」

「先ほどギルドマスターのピュアモルト様より連絡があり、少し遅れるので部屋へ案内し待たせてくれとの事で。お二人はその、ギルドの……?」


 目線は主に自分の方、子連れという疑問に向けられている感じでの質疑。


「じゃ出迎えが来るのはマスターが……自ら」

「あの、お客様?」


 そろそろ質問には答えた方が良いと思う意向を軽くエルミアの袖を引き、示す。


「ぁ、スミマセンっ。ワタシと、彼がその関係者です」

「分かりました。それではギルドの証明書を見せていただけますか、確認が取れ次第お部屋にご案内します」

「ハイ。――ゴメンね、手続きをしてくるから少しだけ待っててね」


 頷く。と微笑みを返すその安堵した様子を見て、――自分も気持ちが晴れていく。

 はぁヨカッタ。――取り敢えず一息は吐けそうだ。


「それではご案内いたします。あ、ボク、これよかったら食べるかい?」


 もうどうか勘弁してください。




  …




 案内された部屋の扉が閉められる。

 両手には受け取った飴等の菓子類が山の様に、直ちにそっと備え付けのサイドテーブルに置く。と間髪いれずベッドへとダイブ、解れる緊張と沈みゆく身体から不意な溜め息。


「はあー、気持ちィー」


 船の寝台は悪くなかったが如何せん硬く。

 転生後としては初の――。


「――ふわふわだなぁ」


 次いでくるりと仰向けに。

 そして、知らない天井。

 て古いかな? 一度やってみたかったのだが。

 とまあ勝手に満足したところで、視線を窓の外へと向けて様子を見る。

 外は今も霧が出ている。なんとなくだが、薄まったような気もする。が。

 一応まだ安心はしない方がいいと別室に入る前エルミアは言っていた。


“外の様子まだ変わらないみたい、一応気を付けてね”


 それと。


“身支度が終わったら後で部屋に行くから、安心してね”


 どちらも留意すべき大切な事だ。

 特に後者は――。


「霧ならもう暫くすれば晴れる。他者の眼を阻む、ただの人除けみたいなもんじゃて」


 ――は、ェ?

 何の気配も感じず、直前まで物音等は一切無く、突如として其処に出現したとしか思えない。完璧なる不意打ち。


「先に挨拶をしておこうかの。わしはギルド本部に籍を置くギルドマスター名をアルベール、皆はアル爺などと呼んでおる単なる余計な世話焼き爺じゃよ」


 えっと……ダ〇ブ〇ドア、違う違う。――思わずその外見から某魔法学校の校長を想像してしまった。ナイスな長鬚、じゃなくて。


「いつの間に」

「おヌシが入ってくる前からじゃよ」


 なるほど。なら入室に気付くことはない。

 ただ――。


「――隠れる所、ある……?」


 室内には寝台そしてサイドテーブルの他に一対の机が在るだけ。

 部屋の大きさは六畳程度とビジネスホテル位で無難な広さ、無論別室も無い。

 しかも児童目線ではあるものの見た目老人にしてはかなりのタッパがある。

 マジでハリ〇タじゃんかよ。


「隠れずとも目に映らなければ同じコトじゃよ」


 お、なんか深そう。て感心するよりも確かめなければならない事柄を、率直に。


「お爺さんは敵、味方、どっち?」

「それは見方次第でどうとでも捉える事が出来るがの。――とまあ冗長した探り合いなんぞは見当外れの場当たり、時間の無駄じゃな」


 ふむ。実を言うと、最初から余り恐怖や不安を感じてはいない。

 逆に馴染みある、懐かしさすらも何故か覚える始末。


「お爺さんと、以前どこかでお会いしましたか?」

「それは無理じゃろ、おヌシは生まれたばかり現実として不可能な事の次第じゃて」


 ああ、そういうコトね。

 なんとなくではあるが実態を掴めてきた。

 確かに現状の自分は幼い。が、生まれたばかり? そんな風に見える訳はない。

 たった一つ、イヤ一人? の例外を除き、それを知る存在と言えば――だ。


「お爺さんは“女神”様の知り合いですか?」

「ほう、よく分かったもんじゃの」

「何分こちらでは知り合いがまだ少ないので。――それでご用件は?」

「なぁにただの視察じゃよ、実際の用件は他の者に託しておる」

「そのわりには手の込んだ遣り方ですね」

「そこまで推察が出来るとは大したもんじゃの」


 最初に人除けと自分で言ってましたがな。


「安心せい。ほれ、窓の外はもう晴れておるじゃろ?」


 ムと外へ目を向ける。

 ――て直ぐさま元の相手に戻す。と。

 あれ? ――居ない。


「いずれ儂の所へお出で、続きの話はその時までお預けじゃ」


 本人の居ない、声だけが室内に。


「それと、置いた物は儂からのプレゼントじゃ。異なる世界を楽しむがよい」


 次いでデハまたと発声し、何かが部屋を去って行く様な――そんな気配の遠ざかりに戸惑っていると響くノックの音。

 続いて扉が開き。


「――ランディ君? どうかしたの」


 天井を見上げていた自分に、気遣わしげな瞳のエルフ。

 いや、それよりも。


「……ランディくん?」

「ぇ、ぁーゴメンね。嫌だった……?」


 イヤそうではなくスプランディ。


「名前が無いままだと実際に不便するし聞き取りで書類にもそう記入しちゃってるけど、どうしよ? 嫌ならまだ」

「いえランディでお願いします」


 寧ろその方が馴染めそうだ。


「ェそう……?」


 何はともあれ俺たちは今日からランディだ。

 と決めた以上はいっそ改まって、姿勢も正し――。


「――本日より自認して名をランディとします。重ね重ねになりますがエルミア嬢、よろしくお願いします」

「エ、エルミア嬢……?」


 あ。しまった――心の内。

 焦る。と次の瞬間。


「――エルミア嬢? アッハッハッハ! オマエにピッタリの愛称じゃねぇかっ!」


 え、と予期しなかった事態に一層面食らうや否やエルフを押し退けて部屋に入って来たのは無論知らない顔の、何方……?

 ただ一つ言えるとすれば随分露出度の高い服装をしていて筋肉質に出るとこは出てる故に視線のやり場が困る粗野な見た目の女、という風貌だ。


「オマエが噂の少年か! 思ってた以上にヒョロッ子じゃねぇか、ちゃんと飯は食ってるのか? 不安でなんか食わしたくなるな!」


 なるほど。そういう――。


「――……本当結構ですので」

「そうか? まあ飯は話の後だなッ」


 イヤそういう意味ではなく。

 しかし、姉御肌な感じってのは本当だな。これほど実感できる人もそうそういまい。


「まあ先ずは挨拶だな。遅れちまったがアタシの名はピュアモルトだ、――少年は?」


 ピュアモルト……、イヤ。


「ご丁寧にありがとうございます。私は、ランディと申します。今後ともよろしくお願いいたします」

「ァン? ――アッハッハ、マジで変なヤツだな!」


 第一インパクト的にはお互いさま、寧ろそちらの方が上だと思う。

 で、ほぼ確定はしているが、話の流れ的にこの方が。


「……マスター、何もかも勢いで進めすぎです」


 やっぱり、ですよね。


「ん、そうか? なら進行は任せるわエルミア嬢、プッ」


 そんなになのか……。


「分かりました、次回遣らかしてもワタシは一切関与しません、なんならヤメます」

「おい待てよ、ヤメるはさすがに行きすぎだろ」

「目に映らないだけで鋭い刃物である事には一切変わりがありません」

「何の事だよッ?」

「前にも言いましたね、言動が時に精神的苦痛を与えますと」

「イヤその眼の方が余っぽど鋭いぞッ」


 うーむ。やはり今のご時世、異世界どこも同じだな。


「ちょ待てって!」


 本当ハラハラご愁傷様です。合掌。

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