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転生竜 ー最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?ー  作者: プロト・シン
一章【最強種になったら成熟する前に世界が消滅って、どういうコト?】
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growth 9〔転生竜、女神アマウネトの思案〕

 迷宮での最終、守護者(ボス)との戦いで亡くなった一般の子供を救う。

 要するに生き返らせる為には、更なる迷宮の攻略が必要との事だが。

 それとは別件で大切な、というより主要と言える己の願望その行く末や。


「元より途方もないアナタの願い成就には追加の恩寵を受ける他はありません。此度を足掛けに迷宮攻略をすすめる予定でした」


 なるほど。


「無論アナタが望むのであれば此度の恩寵での昇華も可能ではあります」


 ふむ。――言ってる事は分かる。が。


「あの子は? どうなるの」


「当然亡き者とし魂は消化の過程へと進みます。それを阻止する為にも此度の恩寵で魂の保護をするのです」


 で、それだけでは不完全なので。


「それで身体の方は俺が管理する、と」

「はい。肉体の成長等は残りの恩寵で加護し保てますが、足りていなかった分を生命活動で補う必要があります」


 だから“彼の者として活きると言うコト”か。


「この場を含め肉体の成長を抑える場所が世界には少ないながら存在します、迷宮もその内の一つです。が殆どはアナタも知る時の中で生くる場、魂の不在は死者と同じで瞬く間に亡者の体と成り果てます」

「……――それって、どれくらい持つの?」

「そうですね、例えるなら人が水の中で息を止めていられる範囲くらい、ですね?」


 何故潜水可能時間で例えるのか。とは聞き返さずに――。


「――……ほぼ実用性がないな」

「ですのでここから出た後の外界での活動は基本、人の子のままで行ってください」


 まあそうなるな。

 ――そして暫く間が空き。

 まごまごとし始める女神様の様子を何気なく楽しんでいると。


「本当に宜しいのですか」

「ん、何が?」

「……アナタは転生したばかり、こちらの人道にのっとった計らい等は――まだ」

「あぁ。まあ、気になる?」

「懸念している訳では……」

「ならいいじゃん。それに神様程じゃないって」


 ――心を読めると言うわりには、意図までは測り兼ねるのか。それも神様らしい。


「とにかく考える時間はください」

「ハイ、伺い立てる必要もありません。全てはアナタの独断で選ぶ、決定事項です」


 固いねェ。ま、人の命が懸かる選択だし仕方ない。

 人道に則った計らいってのは気にしないが、そもそも竜の身だし。ただ初っ端から幼い命を犠牲にして始める異世界生活ってのは後味が悪い。そうは言っても今後の事だ、確りと方向性というか行動の方針は欠くべからざるってね。

 てな訳で。――暫し寝ます。


「エェーッ?」




  *




 原始の女神アマウネト、その由来はさて置き。

 ――不穏な動きをしていた。

 転生者を見送った後は普段ならば本分として世を見守るのだが何故か直ぐには移れない。

 心配、不安、思い遣る、そのどれとも相反する憤りすら心中渦巻く。

 女神の前で寝る? そもそも寝る必要のない、この場で。

 その結果数時間も寝顔を見続ける事となった。

 外見は竜の子そして人の魂、でも神の眼には真理として映る。

 今はまだ転生直後で、姿は前世の素性が主体とし反映されている。

 正しく特徴がそのまま性格にも表れてしまう直情的な成り立ちは穏和で毒気の無さそうな感じだがその実は無邪気に突き詰めるであろう。


「……――神は賽を振らない。神の前では皆が……」


 さすれば我、汝らを尊ぶべし。


「本当世話の焼ける転生者ですね」


 言うは早く、その頬は遅れて照れ隠す。




  △




 ギルドからの連絡とやらを聞かされてからの明朝、乗っていた船は見知らぬ近海で停船して上陸の為の小舟に乗り換えた。

 その際、良くしてくれた乗員の皆様には丁重な挨拶とお礼を述べ。

 短いながらもステキな船旅を満喫できたと陸に着くまでの間に思い返す。


“お、ボウズよかったらこれ食べるか?”

“こんなお菓子って好きかな?”

“遠慮せずに食えよ! まだまだ一杯出てくるからなっ”


 イヤ、めっちゃ食わすやん。

 田舎の祖父母かって位ひたすらに食べ物を提供されたわ。

 おかげさまで腹(パン)状態のまま一夜を過ごし吐き気まではないものの若干気分が悪い。

 ぇ何、俺ってそんなに痩せ細って見えてるの?

 成長期の男子ってこんなに待遇が良かったっけか。

 申し訳ないけど、現状(イマ)の自分に伸びしろは全く無いよ。多分ね。


「そろそろ下船の準備を」


 ぉ、とうとう上陸か。

 明朝と言っても夜明けに近い時間帯だった所為か朝靄が出ていて、視界がそれほど良くはない。密入国をしている情調です。


「朝方にこんな、この時期とは思えない珍しい……。――ところで坊や、これ食べる?」


 ぅおっぷ――。


「――……ありがとうごぜえます」




  …




 この身体は小さいが俺にとっては記念すべき大切な――。


「――うっぷ」


 酸っぱい味が一瞬迫り上がってきた。


「それではエルミアさん、自分は他の皆と先に戻ってます。お気をつけて」

「ええ、また街のギルドで会いましょう」


 ダメだ、下手に動くとマジのリバース。


「坊やもし困った時は、いつでも街のギルドにお出でよ」


 ありがてぇけど今は会釈するので、精一杯ッス。

 そして乗ってきた小舟は来た道を――度々手を振りつつ、引き返す。

 早々に霞むその姿、次第と見えなくなった頃合いにて。


「大丈夫……? ひょっとして酔っちゃったかな」

「……ご心配にはおよビ、ません……」


 本当動けるようにはなってきた。


「うん、無理しないでね……? ――さて、出迎えが来るって話だけど」


 よし。――なんとか持ち直した。

 ただ此処はいったい?

 というか余計に霧が濃くなってきた。

 上陸して直ぐの所だし海辺であることは間違いない筈だが、本当に……?

 いやオカシイだろ。

 いくら何でも濃過ぎる。

 先は疎か手許すらも怪しい状況に当惑するしかない。

 と次の瞬間、視界を覆う微小な水滴を縫うようにして現れた掌が細い腕の前部を掴む。


「大丈夫、安心して」


 エルフの嬢、改め。


「……エルミアさん?」

「うん。この霧、やっぱり変だね。微かにだけど魔法の気配がしてる……」


 おお、なんか異世界(それ)っぽい発言だ。


「アレって見えるかな?」


 ム、どれどれと示す方向を知る術が無い為に探る感じで周辺の様子を見てみる。とアレは直ぐに発見できた。


「明かり……?」

「そうみたい。行ってみる?」


 聞かれても自分には判断ができる材料は何も無い。

 しかし、気付いてしまった。

 幼い腕を掴む、その小さな震えに。

 ――よし。


「行きます」

「……――絶対に離れず、ついて来てね」


 恐怖からではない、が彼女の意志を尊重するつもりでガッシリと体を寄せ腕を掴み直す。

 と何故か揺るぎは良くなった。


「君の事はワタシが、絶対に守るからね」


 霧で表情は見えないけれどもその雰囲気でどんな顔をして見せたのかが伝わる。

 てか逆じゃないか? 普通こういう時って。――ん?


「――さ、行くよ」


 おっと。脇見も振らず頑張っているのに、身勝手な事は出来ない。

 出だしは恐る恐る、だが確かな歩み出し。

 それに付き従う形で寄り添って、行く。

 目指すは霧の向こうで微かに見える謎の光源。

 ま、もしもの時は一時的にでも。

 これだけ濃ければ何も見えはすまい。――例の神器もあるし、ね。








  転生竜、女神アマウネトの思案/了

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