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growth 0〔転生竜、成長とは何よ?〕

記号等で区切るなどし主観を変えたりもしています。

※作者は文章力が拙いので。予め、ご了承ください。m(_ _)m ヒラニ




この作品はフィクションです。

実在の人物や団体など、現実的体制や根拠仕様とは一切の関係がありません。


ご理解の上、ご覧ください。

 








 幼き頃の記憶――イヤ、記録だ。

 いく度も描き重ね合わせた薄い紙の上で僕の夢は変化することなく走り出す。

 そして今や空想は現実のものとなった。




  ※




 息も絶え絶えと走り続ける少年に鞭を打つかの様な獣の咆哮が後を追って響く。


「ハァハァ――!」


 それでも走るのを止めない。――止める訳にはいかない。

 身体中の血液が頭に上り、心臓が口から飛び出してしまいそうな程――、それでも。

 幼い足は全力で石床を蹴り閉塞的な迷宮内をひた走る。


「ァ――」


 限界が差し迫っている。

 しかしそれ以上に死がすぐ傍にある。

 今立ち止まれば少年の小さな身体は瞬く間、肉塊かそれに近しい何かへと苦痛を伴う形で変貌するだろう。

 故にいとけない脚で窓一つ無い迷宮を駆ける、駆ける、駆ける――足が止まる。


「ハァ…ハァ…、ハァッ――ウッ」


 文字通りに何も無い。

 限界を超えて辿り着いた小部屋で少年の身体は終わりを告げる。

 最早立つ事すらも叶わぬと、膝を突き四つん這いとなる少年――の背後に大柄の四足獣が、牙をあらわにする。

 子供ながらに善くぞ此処まで走った。などとは言う訳もない。

 ただ只管に獲物を追う獣の本能だけが口を開く。

 獣口ソレはダラダラと涎を垂らし無防備な年若い身体に牙を――突き刺す。


「ガ、ガッ……?」


 次の瞬間“(イテ)ェじゃねぇか”そんな心の内が獣の口腔から言葉ならぬ声となり低い唸りに発せられる。


「ガ! ッッ?」


 刹那獣の脳裏に過ぎる、もとい焼き付く灼熱の最期キオクは追い詰めた筈の獲物を前に内部から焼け焦げる臭いと――消失イタミだった。




  …




 いやァ上出来、上出来。

 心からそう言って、褒めてやりたい。が当人はそれどころではなさそうなので先に自身の傷を確認しておく。

 うわァやっぱり少し血が出てる。――チクッとしたもんな。

 とはいえさすがの頑丈さ。

 生身で受けていたのなら今頃は焼き鳥宜しく牙に刺さった焼き物にでもなっていたかもしれない。――最悪歯の隙間を埋めるセラミックス。


「……ゥ、ッゲホ! ゲホッコグゥ――ゴッ」


 おっとフザケてる場合ではない。

 正しく疲労困憊と言える少年の傍へと、風切って。


「クァァック?」


“大丈夫か”とは当然伝わらず。


「……ゥん、あり、がと……」


 気がかりな思いを声色にめる事だけが唯一の意思疎通コミュニケーションを図る手段。

 イヤ、――他に頷くこと等も含まれるか?

 まあとにかく、乏しいという事実は確かだ。


「……スプランディ? 血が、出てる……ケガをしたの?」


 敢えて確認を入れておくが、――俺はスプランディなんて言う洒落た名前ではない。

 花江はなえ明人(あきと)、四十歳――という日本生まれの男子名である。


「クァク“軽い傷だ”」


 まあ伝わらん。


「……見せて」


 おいおい、先に自分を気遣えよ。

 ――本当まだ肩で息をしているだろ。


「薬草が、まだあったはず」


 イヤ、それは絶対に駄目だ。


「クァック!」


「……どうしたの?」


 貴重な回復アイテムをこの程度の傷に使うのはナンセンス。

 この位は自力で治る。

 ――本当やせ我慢とかそんな意地ではない。

 の身体は人の其れとは違う。

 皮膚は硬い鱗で覆われ肉は人間の時とは比べ物にならない程の筋線維で骨格を成す。

 正に最強の生物と名高い竜の性質、多少の傷は手負いとも似つかない。

 ――故に。


「クァックァ」


 調子良く翼を広げ、不安げにしている若者の心配を払拭する狙い。


「……気にするなってコト?」


 ぉ、――悪くない感じで伝わった。


「クァッ」


「……うん、分かった」


 まだ少し気掛かりな表情は残るものの概ね了承って感じ。

 そうして少年の視線は今しがたの戦いを終えて没した散り行く骸へと向けられる。


「これで、次に進めるね……」


 だが嬉しそうではない、何故ならソレは同時に新たな危険をも伴うから。

 ……少年、イヤ。


「クァック!」


 ――心配するな。君のことは必ず俺が地上に、戻してやる!




  ※




 俺の名前は花江明人、四十歳――日本生まれの男で、何処にでも居るしがない中年の会社員だった。ちなみに未婚。

 そして、だった――というのは今や中年の会社員どころか人ですらなくなった。

 ――ドラゴンに、転生したからだ。

 子供の頃からずっと好きで、いつか成りたいと願ったりもした竜に俺は本当に成れた。

 ただ念願叶ったその始まりは余りにも過酷で、途方に暮れる永い成長の道のりだった。




  ※




 地下迷宮“蔓延る魔獣”のB3階で最後の戦闘を終えて次なる段階の中間、休憩地(レストエリア)と呼ばれる所で暫し休息して目覚める。

 竜でも普通に夢を見る。

 それが特別な事なのか如何かは現時点で知る由がない。

 故に地上へと戻ることは自分にとっても有益であり待望の悲願。

 なにせ異世界に転生し一日も経たずして石壁に覆われる薄暗い地下の迷宮へと送られた。

 このままでは女神ギフト付き異世界転生という最高のファンタジーライフを堪能する予定が前売り券を手にしただけで終わってしまう。

 そんなバカな話があるか?

 いいや無いね、本当無い。

 必ずこんな息苦しい景色だけが続く空間からは抜け出し壮大な異世界の風を切る。

 ――その際には。


「ぁ、起きたんだね。調子はどう? スプランディ」


 と。本当スプランディじゃねぇって、カッコ良すぎて恥ずかしいわ。


「お腹……、やっぱり空かないよね」


 ずっとそうだ。迷宮内ではそうらしい。


「ぇっと、スプランディ……触ってもいい?」


 オジさんはそういうの全然平気よ。

 ホレと先んじて頭を差し出す。

 すると現在の頭部とそう変わらない少年の掌が、頭頂から首筋を撫で摩る。


「……硬い、でもホッとするよ」


 撫でられている側としては複雑な気持ちになる。が。

 真意を汲み取るのなら、――不安なんだなと。

 当然も当然。身体的にはまだまだ幼い十歳の子供が身の丈など優に上回る凶暴な魔獣の出る迷路に送られ正気を失わずに居られているコト事態が本当奇跡と言っていい。


「僕が強い、大人なら、スプランディを助けられるのに……そうすれば怪我だって」


 だから掠り傷だ。ぶっちゃけ既に治り掛かってもいる。

 まったく。ほれ見ろ、と言わんばかりに二本の後ろ足で立ち上がり翼を広げ披露してやる。傷ではなく身体(オレ)そのモノを。


「……?」


 分からんのんかーい。

 竜じゃん竜。ほら、どうしたって竜だぜ凄いんだぞ。


「……まかせろ、てコト?」


 まあ及第点か。と疲れたので前足を下ろす。

 言ってもまだそれほど実感はわいていないのだが、今のところ当たれば一息で倒せてはいるし。

 きっとこの先も。


「そういえばスプランディは何の竜なんだろ……、図鑑でも見たことがないし、もう少し大きくなれば分かるのかな?」


 ――もう少し、か……。


「五年? 十年? 僕が大人になる頃には僕よりも大きい……?」


 スケールは知らんが女神は教えてくれた。――成熟するには。


「きっと僕の成長とは違うよね、竜だもん。人間なら十五で成人だけど、竜は……」


 ――百億年。オレが成竜と呼ばれるには、それだけの歳月が必要とのコト。


「……どのみち僕は死んじゃうね。きっと」


 それどころか世界の方が先に滅びるらしい。

 ――本当どういうコトよ?








  転生竜、成長とは何よ?/了








投稿を安定させる為、マイペースに公開をしております。

※執筆が遅いです。平常時、月2程度のペースです。

――但し人気や意欲のある時にはより頑張っていると思います。

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