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76話 バスケ

 6月16日 土曜日

 週末がやってきた。今日は約束通り、美月とバスケの練習のため、ゲーセンにやってきた。

 このゲーセンでは通常のクレーンゲームやメダルコーナーもあるのだが、それ以外にスポーツが楽しめる施設も備わっている。時間制になっており、俺たちは3時間のコースで入場した。


 バスケのコートがあるのは施設の屋上だった。3つコートがあり、既に2つは使われていた。俺たちは残り1つのコートに入る。どうやら時間制限があり、順番待ちが発生した場合は30分交代になるようだ。


「まずはストレッチしとこっか」


 今日の美月はいつものおしゃれな格好とは違い、動きやすいジャージを着ている。腕まくりをして、細くて白い腕がひっそりと見えている。それを見ただけで俺の鼓動は早まってしまうほど、単純だった。


「美月に勝てる自信はないな~。お手柔らかに頼む」

「そう? 勇也って体育の時結構動けてないっけ?」

「そんなことはないさ。普通だよ」


 確かに帰宅部だが、たまにランニングをしたりなど運動はしているほうだ。だから、帰宅部で家に帰って遊んでいる人や、文化部の人よりかは動けるのかもしれない。


「よーし、お互い怪我だけはしないようにね」

「あぁ」


 俺も簡単にストレッチを終わらせて、最後に手首と足首を入念にほぐす。屋外ということもあって、これだけで少し汗が服に滲んできた。


「最初はシュートの練習からやってみよっか。女子はツーハンドが多いけど、男子だとみんなワンハンドかな。構えてみて」


 俺は渡されたボールを握る。想像していたよりもずっと大きい。片手では中々掴み切れない。


「右手でボールを持って、場所はおでこの位置。そうそう、そして左手を優しく添えてあげて」


 俺の手を、まるで操り人形のように美月がフォームの指導をしてくれる。顔も振り向けば10cmもないくらいの位置にあり、黒い髪からはシャンプーのいい香りが鼻腔をくすぐる。付き合っていなければ、耐えられなかっただろう。


「こんな感じ?」


 俺は言われた通りの姿勢を作った。


「うん、オッケー。あとはそのまま膝を曲げて、シュートの時に伸ばしてジャンプ!」


 美月はまるでボールを持っているかのように、シュートをする。そのシュートの姿勢はとてもきれいで、本当に弧を描いてボールがリングに入ったような気がした。


「よし……ほっ!」


 俺も負けじとシュートを打ってみる。だけど、ボールはリングにかすりもせずに直前でそのまま地面に落ちてしまった。


「姿勢はいい感じだよ。あとは奥行かな」


 美月は転がってきたボールをすっと拾い上げて、片手にボールを置いてシュートを放つ。そのシュートは見事パサッとネットをかすめて、綺麗にリングに入っていった。


「うまいな~。流石2年のエース」


 冗談めかしてそう言った。そんな俺の冗談に対して、姿勢を低くし上目遣いでこう言ってきた。


「私、バスケ上手な人がタイプかなぁ~。あ、ちなみに藤田君は男バス2年の中でも1番に上手いんだよな~」


 にひひと、笑い声が聞こえてきそうなほど不敵な笑みを浮かべ、こちらを見てくる。


「俺も負けないくらいには、上手いかもしれないぞ」


 そうして、美月からボールをパスするよう合図をして俺はシュートを打つ。そのシュートはボードに当たり、反射して綺麗にリングの中へと入っていった。


「どうだ!」


 俺は一人ガッツポーズを決める。


「おぉー! かっこい~!」


 美月のその感想はさっきと違って棒読みではなかったので、本当にそう思ってくれているのだろう。俺も、まさかこんなにきれいに決まるとは思っていなかった。


「まぁ、美月の彼氏とあろうもの、これくらいできないとな」

「お~強気だね。よーし、じゃあフリースロー対決でもやろっか」

「オッケー」


 フリースロー対決、お互いが交互に決められた場所に立ってシュートを打ち、より多く入ったほうの勝ちだ。


「じゃあ、じゃんけんいくよ~」


 そうしてじゃんけんをして、俺がパー美月がチョキを出した。


「10本勝負ね。それじゃあ私から」


 そう言って美月はボールを何度かドリブルした後、両手に抱えてフリースローラインに立つ。その瞬間目つきが変わった。いつも俺の傍にいる優しくて明るい美月ではなく、俺が初めて意識した、委員長として仕事をこなしているときの目つきになった。


 しばらくの静寂の後、美月の両手からシュートが放たれる。髪が揺れ動いて、ジャージも勢いで身体にまとわりつくようにして揺れる。そのせいか身体のラインがいやでも強調されて見えてしまった。


 シュッ


 そのボールは綺麗に弧を描くように、ボードにあたって跳ね返ることなく綺麗にネットをかすめていった。


「やった! 次、勇也の番ね」


 美月は顔の横で小さくピースサインをしていた。どうして、こんなにも美月は可愛いのだろうか。俺の中で彼女に対する恋愛感情は日に日に増していくばかりだった。


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