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66話 通じ合う思い③

 今日の授業が終わった。久々に頭を使ったからか、強烈な眠気に襲われていた。これは帰ったらすぐにベッドに飛び込んで寝てしまうかもしれない。石田さん……美月の席にでも遊びに行こうかと思ったところ、俺の机の横に京平がやってきた。


「勇也、放課後時間ある?」

「ん、まぁあるけど」


 いきなり京平にそんなことを聞かれたのでびっくりした。一体何の用だろうか。


「オッケー。さっき先生に頼まれてさ、文化委員で階段にある掲示物を張り替えてきてほしいってさ。勇也も手伝ってくれるか?」


 そういうことか。最近文化委員としての活動をほとんどしていなかったので、自分がそんな役職についていたことを思い出した。確かに文化委員は今年から掲示物の管理もあると、4月のHRで言われた気がする。それのことか。


「おう、大丈夫よ。でもちょっと待っててな」


 俺は今日、美月と一緒に帰る約束をしていた。前川先生に部活をやめること、そして美大を受験するということを話したところ、今日からでも辞めてよいということだったらしい。

 俺は急いで美月のもとへと駆け寄る。


「石田さ……美月、今日なんだけど」


 まだ慣れなくてつい名字で呼んでしまう。


「ふふ、まだ慣れないんだね。私はいつでも勇也って呼べるよ」


 美月は企んでいるような秘めた笑顔を作る。なんだか付き合い始めてから美月のSっ気が増してきた気がするのだが、気のせいだろうか。


「しょうがないだろ。女子のこと名前で呼ぶなんて初めてだし」

「まぁ、かくいう私も初めてだけどね。友貴のことはずっと友貴だったけど」


 そうか、石田さんには弟といえど異性が身近にいたからそこまで気負わずに話すことができているのだ。


「あっ、それで本題なんだけど、ちょっと文化委員の仕事が入っちゃって。申し訳ないけど、今日は一緒に帰るの無理っぽい。また明日帰ろう」


 俺は申し訳ないと、両手を合わせて謝る。だけど、美月は不思議そうに首をかしげる。


「委員会の仕事でしょ。いいよ、私も手伝う」

「えっ!」

「だって私学級委員長だから、別に各委員会の手伝いしちゃダメってことはないじゃん」


 あー、確かにそうだった。


「それってなんだか職権乱用してるみたいだな」

「使えるものは使わないとね。それに、せっかくの記念日なのに、一人で帰るのはちょっと……寂しいかな」


 下唇をぎゅっと噛みしめ、そう言った。


「記念日? 何の?」

「え~、交際記念日だよ。勇也と私が付き合い始めて最初の一日!」


 なるほど、言われてみればそれもそうか。というか、石田さんは付き合うということに関してあまり恥じらいはないらしい。たぶん周りの女子にも今の話は聞こえているだろうし、かなり積極的だ。若干俺が置いていかれてしまうくらいに。


「ってことで私も手伝うから!」


 グッとサムズアップをしながらウィンクをする。いや、器用だな。


「分かったよ。じゃあ京平も一緒だから3人で頑張ろっか」


 美月の押しに負けた俺は、3人で共同作業をしていくことにした。



 階段にて


「いやぁ、まさか石田さんと勇也がホントに付き合うなんて思ってもいなかったよ。で、勇也は石田さんのどんなところに魅かれたんだ?」


 左から俺、京平、美月という順番で掲示物を剝がしていっている。


「いや、なんで京平にそんなこと言わなきゃいけないんだよ。恥ずいわ」

「またまた~。じゃあ石田さんはこいつのどこに魅かれたんだ?」

「私? うーん、全部かな」


 きっぱりと言い切る美月。それを聞いていると、なんだか俺まで恥ずかしくなってくる。


「おぉ~。石田さんって大胆だなぁ。ってか結構雰囲気変わったよね?」

「うん。色々あってね。あ、それと私、バスケ辞めることになったの」

「……マジかよ!」


 京平は一瞬フリーズした後に、言葉を上手くかみ砕いて何とか理解できたらしい。


「石田さんレベルで上手い人っていないからな~。俺としてはもったいない気がするけど、まぁ他人がどうこう口出しするもんじゃないしな」


 京平は同じく男バスの2年生のエース、いわば次期キャプテンみたいなものだ。そんな人物にこれほど言わせるのだから、美月は相当バスケがうまいのだろう。今度練習頼まれたらどうしよう。


「にしても先週、勇也が石田さんのために俺の自転車借りてまで学校から抜け出していったのは驚いたな。勇也、お前よっぽど石田さんのこと好きなんだな!」

「うるせぇ。あの時は必死だったんだよ」


 本当に、あの時の行動は思い返すと恥ずかしくなる。金曜日にこっぴどく2人の先生から怒られたし、ひどく反省もしている。だけど、あの行動がなければ、美月は友貴君に会えていたのか分からなかった。美月が着いてから30分ほどで友貴君は息を引き取ったらしいので、あのまま車を待っていたら間に合わなかっただろう。だとしたら俺がやったことには、少し意味があったようだ。人の役に立てたのはいつぶりだろうか。


「こっち剥がし終わったよ」


 美月のほうを見てみると、既に掲示物がすべてなくなっていた。京平も残り2枚となっており、俺のところだけまだ5枚近く残っていた。


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