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65話 通じ合う思い②

 そんな石田さんの希望通り、お揃いのハンバーグ定食をゲットした俺たちは、席に戻ってくる。


「先に食べちゃおっか」

「だな」


 流石に食べながら話すというのはマナー的にもあまりよくない。しかも今日は積もる話なので、尚更だ。俺たちは間に少しだけ「このハンバーグ意外とウマイよな」「この値段だとコスパ最強だね」など、他愛のない会話をして食べ進めていった。


 15分ほどしたら二人ともちょうど食べ終わるころだった。石田さんが先に片づけちゃおうといったので、お盆に食べ終わった食器を載せて返却口までもっていく。


 そして再び、元の席まで戻ってきた。

 どちらから話を切り出そうかと、俺たちは妙にそわそわしていた。さっきまでの余裕はどこにいったのだろうか。


「石田さん」


 俺が勇気を出して話を切り出す。すると、彼女は驚いたような表情で


「うん?」


 と、返事をする。既に頬と耳が赤く染まっていた。


「その、この前の返事に関してなんだけど。何ていうか、石田さんが俺のことを思ってくれているというか……」


 うーん、素直に口に出そうとするも、なんだかこそばゆい。これではまるで石田さんが告白してきたみたいないい方になってしまい、男らしくない気がする。そう思って、もう一度仕切り直しの意味も込めて、俺は一旦深呼吸をしてからこう告げた。


「石田さん、好きです。石田さんと一緒に過ごした時間が、とっても楽しくて満たされていて、そんな石田さんとこれからも一緒に隣に居たい。俺と……付き合ってほしい!」


 恥ずかしすぎてもはや目を見て話すことすらできなかった。俺は俯くようにして、石田さんの返事を待っていた。


「うん、三代君ありがとう。生まれて初めてそんなこと言われたから驚いちゃったけど、もちろん私も三代君が好き。三代君のすべてが大好き。こちらこそ、これからよろしくね」


 俺は視線をあげる。すると、にっこりと眩しい笑顔があった。さっきまで緊張していたように見えたが、石田さんは言ってしまえば案外そうではないのだろうか。


「よかった。断られたらどうしようかと思ってた」


 俺は冗談っぽくそう告げる。


「この前の流れからしてここで断ったら性格やばいでしょ。私もさすがにそんなにひねくれてないよ。三代君が好きって気持ちは……ずっとあったから。ただ、それに気づくまでに少し、時間がかかっちゃったけどね」


 石田さんは指先で頬を撫でて、遠くをじっと見つめている。

 太陽に照らされて反射した黒い髪が綺麗だ。まるで息をのむほど。いままで、毎日とみてきたのに、今日はなんだかいつもと違って特別に感じられた。


「あ、それとね。前にも少し話したけど、三代君にも伝えておこうと思って」

「ん、どうした?」

「部活の話。前にさ、これからどうするか考えてるって言ってたじゃん。それの答えが決まったの」

「あぁ」


 確かこのまま続けるのか、やめるのか、3年生が引退する夏までには決めるといっていた。だが、あんなことがあったのだから石田さんの選択肢はすでに決まっているようにも思える。


「部活はやめることにした。バスケはやりたくなったら大人になってからでもできるからね。けど受験勉強は今しかできない」


 そう言って遠くを見つめる石田さんは、どこか心残りがあるようにも思えた。


「本当にそれで大丈夫?」


 俺は確認の意味も込めて尋ねる。


「うん。友貴があの小説を遺してくれたからっていうのもあるんだけど、やっぱり私、イラストの勉強がしてみたいんだ。昨日SNSで色々イラストみてたんだけど、私もこんな風に描きたいなって思っちゃった。だから、これは私の選んだ道。まぁ、バスケも心残りが全くないって言われたら嘘になっちゃうんだけどね。その時は、三代君に相手になってもらおうかな」

「俺じゃ相手にならなそうだけどなぁ……。まぁそういうことなら分かった。他にも何か悩んでいることとかあったら何でも相談してほしい。俺は……石田さんの彼氏なんだからな」


 最後は少し恥ずかしかった。けどそんな俺の表情を見たのか、石田さんが笑う。


「うん。そうだね。私の自慢の彼氏だもん。もう隠していることは何もないよ」

「それならよかった……」


 “自慢の彼氏”、なんと良い響きなんだろうか。石田さんにそう言われると、身がしまる思いだ。何て言っても彼女はクラスの人気者。そんな彼女の隣を並んで歩けるように努力しなければいけない。


「そうだ! 付き合うんだったら呼び方も今のままっていうわけにもいかないよね、勇也?」


 わざとらしく、俺の名前をゆっくりと誇張して呼ぶ。心臓が跳ね上がった気がした。下の名前を呼ぶのは、家族と京平くらいだ。ましてや女の子に呼ばれたことなんて今まで一度たりともない。


「勇也、私のことはなんて呼んでくれる?」


 石田さんは自分のことを指さして、俺の方に迫ってくる。やばい、なんだこの可愛い生き物は。踏ん張って理性を保っておかないと、とんでもないことになりそうだ。


「分かったよ……。み……美月」


 俺が照れながらそう呼ぶと、石田さんはニヤリと悪だくみをするかのような表情で俺のことをまじまじと見てきた。


「うん、よろしい。これからよろしくね、勇也」


 その呼び方をされるたびに、俺の心臓は少しずつ縮んでいくような気がした。それほど、その呼び方は心臓に悪い。

 けれどすっごくうれしかった。


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