62話 『最強のお姉ちゃん』
「助けて!」
僕は暗い地下道の薄暗い部屋にいた。目の前にはモンスターが2頭、並んでいた。
必死の叫びも、届くことなく、ここにきて3日が経とうとしている。
僕は町で学校に通う普通の中学生。だけど3日前、学校の帰り道、モンスターに襲われた。
周りに人はいなかったので、叫びも虚しくそのまま連れ去られてしまった。
与えられた食事はパン1切れのみ。これが1日3回与えられる。学校の給食に比べると、天と地ほどの差があった。僕はお腹が空いて、夜も眠れなかった。
翌朝、部屋の窓から朝日が差し込む。その光で僕は目を覚ました。お腹がぐぅと鳴る。目を開けると、昨日と変わらぬ景色が広がっていた。
僕は一生このまま誰も助けに来てくれなくて、死んでしまうのかと心細かった。誰か助けにしてほしいと、ずっと心の中でそう願っていた。
しばらくすると、モンスターがのそのそとやってきた。見た目は豚のような形をしており、憎めない顔つきをしていた。だけど、僕をこんなところに閉じ込めている悪いモンスターに変わりはない。
「ほら、今日の朝飯だ」
豚の形をしたモンスターは部屋の小窓から食べ物を投げ入れる。パンだった。でも今日は1切れではない。2切れだった。僕は不思議に思って豚のモンスターに尋ねた。
「なんで今日のパンは1切れじゃないの?」
そう尋ねると、にっこりと笑ってこう答えた。
「お前がやせ細っていると、美味しく食べられないからな」
そう言った。だけど、その豚は僕のことを食べるつもりなんて全然なさそうで、ポケットから飴を取り出して、それも僕の部屋の中に投げ入れてくれた。
僕はその日の朝は満足だった。いつもに比べたら少ない朝食だけど、満足だった。
そして昼頃、することもなくぼうっと天井を眺めていると、部屋の外の廊下から何やら声が聞こえてきた。
僕は窓に近づいて、外を覗き込むようにして見る。するとそこには、先ほどの豚のモンスターが慌てた様子でこちらに向かって歩いてきていた。隣には人の姿もあった。
豚のモンスターは僕の部屋の前で止まり、鍵を開けた。
僕は部屋から出ることができ、ようやく自由になれた。
そして豚のモンスターの隣にいたのは女の子、僕のお姉ちゃんだった。
「トモ! 迎えに来たよ!」
お姉ちゃんは元気よく僕に向かって片手を差し出す。僕はその手を取って、部屋を出た。
僕のお姉ちゃんは最強だ。
僕がどんなにピンチになっても、どんなところにいても必ず助けに来てくれる。最強のお姉ちゃんだ。僕は、そんなお姉ちゃんが大好きだ。




