48話 2人で④
早めの昼食を取り終えた俺たちは、まだ映画まで2時間近くあることに気付いた。
このままフードコートにいるのが一番いいのだが、何も食べないのに座っていてもよいほど人の数は少なくない。既に満席状態。席を探し回っている親子連れがたくさんいるので、流石にその場を後にすることにした。
映画館のほうに向かって足を進めていると、その手前に賑やかな音楽が鳴り響いているゲームセンターがあった。
「そうだ。映画まで時間あるし、ちょっとゲーセン寄っていかない?」
石田さんが大きなUFOキャッチャーの機械を指さす。ゲーセンに興味があるのは意外だった。
「そうだな。石田さんってゲーセン来たりするの?」
「結構行くよ。部活の帰りとかにみんなで来たりする」
「そうなんだ。やるのはクレーンゲームとか?」
「うん。ユメ……あ、前話した中学の時から部活が同じだった岡崎夢って覚えてる?」
「岡崎……夢……あぁ! 思いだした。高校も同じだったのか」
まさか同じ高校だったとは。去年も今年もクラスにその名前は見なかったので、俺と面識はなさそうではあるが。
「そうそう。そのユメがね、結構なぬいぐるみ好きでね、毎回みんなで必死になってどうやったらとれるか考えてる」
「大きいぬいぐるみとかだと取るのも難しいからな」
よく一定の金額以上お金を投入しないと取れないように設定されているものもあると聞いたことがある。
「そうだ。三代君何か欲しい景品とかある? ユメに付き合っていつもやってるから結構自信あるよ」
石田さんは口角を上げて自信満々にそういった。
「欲しいのか……」
何が欲しいだろうか。ぬいぐるみは流石にちょっとどうなのかなぁ、という気もするし。そうなればフィギュアだろうか。
「じゃあちょっとフィギュアのところ見に行ってもいい?」
「オッケー」
ぬいぐるみゾーンを抜けて、フィギュアのコーナーにやってきた。
そこには今放送中のアニメ作品のフィギュアがずらりと並んでいた。アニメを見ないというわけではないが、そこまで最新の作品を追うほど通ではないので、ほとんどが知らない作品ばかりだった。
左右に並べられたフィギュアの景品をみながら歩いていると、俺はある作品のフィギュアに気付いた。
「あ、これ。今日見る映画のフィギュアだ!」
今日の映画はざっくり説明すると、吸血鬼と人間がお互いの正義をかけて戦う、といった内容だ。原作の漫画が非常に人気で、少し前にTVアニメをやっていたようで、今回はそれの総集編のようなものになっているらしい。
そしてそこにあったフィギュアは人間の敵である吸血鬼だった。
「ほんとだ。よし、やってみよう」
そういうと、石田さんはバッグから財布を取り出し、100円玉を投入する。ピロンという電子音とともに、筐体が急に喋り始める。
“きみならきっと取れる! 頑張れ!”
最近のクレーンゲームはすごいな、と改めて感心した。
フィギュアが真ん中に置かれており、その上と下が突っ張り棒で支えられているといった形だ。この間に景品を落とせばいいのだろうが、その幅が中々に狭い。景品を横にしてもギリギリ通るだろうかといった狭さだ。石田さんはどうやって攻略するのだろうか。
「この景品は細長いから……横にしたほうがいいかもね」
そう言って、迷いもなく1ボタンでクレーンが横に移動していく。それはアームのひじの部分が景品の側面に来るくらいの位置で止まった。
「あぁ、寄せる感じか」
「うん、寄せて横にしてみようかなって」
続いて2ボタンを押すとクレーンは奥へと移動していく。中心よりも少し奥の位置で止まり、アームが開いて降下していく。爪が箱の側面を添うようにして降りていった。
「どうかな~」
なんだか見ているこっちも緊張する。金額としては100円しか使っていないわけだが、それでもこの後どうなるのか、気になって仕方がない。
結果、景品はビクともしなかった。降りてきたときと同じように箱の側面を撫でるようにして上がっていっただけだった。
「う~ん、これは厳しそう」
「そもそも全然動かないもんな」
「あきらめて他のにしよっか」
ということで、撤退。流石にこれはいくらお金があったとしても取れそうにない。そういうのは早々にあきらめて退散するのが吉だろう。
他にも何かないかと店内を二人でぶらぶらと歩き回っていると、またしてもさっきと同じ映画の、今度はストラップを見つけた。
「あっ、これなら取れそう」
石田さんはそういうと、すぐに100円玉を投入する。
今度は景品が乱雑に積み重なって置いてあり、それを3本爪でキャッチして獲得口まで持ってくるといったものだ。
「この辺かな……。三代君、横みてくれる?」
そう言われて俺は横から奥行きの確認をする。なんだかこうしていると、プロのクレーンゲーマーになった気分だ。
「ん、もうちょい後ろ。おっけ、そこで大丈夫」
俺は的確な指示を出して石田さんに操作をしてもらう。これなら真っすぐ降りてくれれば、少なくとも掴んでくれるだろう。




