47話 2人で③
辺りをぐっるっと見回してみると、ハンバーガーにうどん、カレーにパスタ、ステーキなどラインナップは豊富であった。食べるものには困らない。むしろ、どれを食べようか悩んでしまうくらいだ。
「うどんとかは学食でも食べられるから、今日はハンバーガーにしてみようかな」
ここのハンバーガーショップはボリュームが売りのようで、入口のポスターには”肉200%増量中!”と書かれている。結構食べ応えがありそうだ。
「いいね。じゃあ私もハンバーガーにしよっかな」
「よし、じゃあ買いに行くか。あ、石田さん座ってていいよ。俺が二人分頼んでくる。席開空けるとすぐに取られちゃいそうだし」
辺りを見回してみると、俺が来たころとは人の数が倍ほど増えている気がした。もうじきお昼時だ。俺たちのようにこれから予定があって少し早めのひるごはんを食べる人だっているだろう。
「あー、確かに。じゃあ私のは三代君と同じでいいから。あ、お金渡すね」
石田さんはバッグを開いて財布を取り出す。そこで俺は思い出した。
「そうだ、俺も今日の映画のお金渡さなきゃ」
当日でいいということだったので、既にチケットは購入してあるもののまだお金を渡していなかったのだ。
「じゃあ悪いけどよろしくね」
俺は貰った1000円札を握りしめ、目の前にあるハンバーガーショップを目指して歩いていった。
ショップの前には10人ほどの列ができていた。
俺はショップの上部に掲示されているメニューを見ながらどれにするか考える。といったものの、石田さんからは同じのでと言われていたがそもそも俺が何を頼むかなんて言っていないのだ。恐らくそこで二人別々のものを頼み始めたら俺の負担が増えるからという彼女なりの配慮だとは思うのだが、裏を返せば俺にすべて託されているということにもなる。
こういう時は普通は無難なメニューを頼むのがベストだろう。俺はメニューの中から写真付きででかでかと表示されている、”たっぷりチーズ&トマトバーガー”に注目した。
チーズがたっぷりと使われており、それはバンズのヒールにまで届きそうなほどであった。
だが、ここで俺は考えた。女子にこんな高カロリーなものを購入していいのだろうかと。
女子はみんなダイエットしているだの、カロリーには常に気を付けているだの聞いたことがある。だからこういった高カロリーなものはやめたほうがいいか……と思ったが、食堂での石田さんの姿を思い出した。
彼女はよくラーメンを食べていた。麺類はカロリーが高いと聞いたことがあるが、それを何回か食べているということは、あまりカロリーに関しては気にしていないということなのではないだろうか。それか、そもそもに太らない体質だとか。もしかしたら裏で多大なる努力をしているかもしれないが、少なくとも麺類を食べているということはNGではないはずだ。せっかくこんなに美味しそうなメニューがあるので、頼んでみよう。そう決めて、俺は”たっぷりチーズ&トマトバーガー”を2つ購入した。
「お待たせー」
俺はトレイにハンバーガー2つとセルフで注いだ水2つを載せて席へと戻ってきた。
「わざわざありがとうね」
「いいよ。これお釣りね」
そう言って俺はお釣りを石田さんの掌の上に落とす。
「おっ、美味しそうなハンバーガー。最近食べてなかったから楽しみだな」
石田さんは買ってきたハンバーガーを見て、目をキラキラ輝かせていた。よかった。特にカロリーに関してはあまり気にしていないみたいだ。
「よかった。高カロリーだから石田さんに怒られたらどうしようかって」
冗談っぽくそう言った俺の顔を見て、不思議そうな表情をする。
「カロリーかぁ……。あんまり気にしたことないかも」
「えっ、そうなのか」
「っていうか、部活でそれ以上に消費しちゃうから基本的には何食べてもプラマイゼロみたいな?」
「部活かぁ」
それもそうだ。バスケ部となればずっと走り続けたり、体力を要する競技だ。そんなに動けば多少高カロリーなものを食べても、全て消化してしまうのだろう。盲点だった。
「早速食べよっか」
そんなカロリーのことなど全く気にせず、石田さんはハンバーガーを手に取り、テープをはがして袋から半分ほど出す。俺も同じように手に取って開けてみると、チーズの香ばしい匂いがした。
「いただきます」
「いただきまーす」
一口、食べてみると口の中で肉汁があっという間に広がっていく。よく俺が食べる安物のハンバーガーとは違い、肉々しい歯ごたえが口の中を覆っていた。
「美味しいね」
石田さんも笑顔でハンバーガーをほおばっている。口元にはチーズが少しだけついていた。
「やっぱり高いだけあるな」
「高いものは美味しいからね」
「そうだな」
そんな他愛もない会話をしているうちに、ハンバーガーは綺麗に食べ終えてしまった。




