表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/100

39話 石田さんという存在⑥

 起きたのは次の日の昼過ぎだった。正確には毎日同じ時間になるアラームのせいで7時に起こされたのだが、学校に行く気になどなれず、そのまま二度寝をした。自然と目が覚めた。

 いつものように頭が重い起床ではなく、目を覚ました瞬間数学の問題が解けてしまうようなスッキリとした目覚めだった。


 枕元においてあったスマホを手繰り寄せるようにして手にして、画面を見る。そこには普通であれば考えられないほど多くの通知が来ていた。これまでクラスメイトからメッセージが来ることはなかった。なのに、急にどうしてだろうか。


 俺はメッセージを開き、誰から来ているのかを確認する。

 1人目は石田さん。そういえば昨日の夜も来ていたのだが、俺はそれを無視して眠ってしまった。そのあとにもメッセージを送ってくれたらしく、3件着ていた。


 そして驚くことにもう一人は京平からのメッセージであった。タップしてメッセージの内容を見てみると、「どうした? 大丈夫か?」と、数時間前に来ていた。恐らく教室で俺の無断欠席が話題になったのだろう。

 返信をするかどうか悩んだが、せっかく心配してくれているのだ。そんな大切な親友の気遣いを無下にするわけにはいかないだろう。


 大丈夫。ちょっと体調悪かっただけ。明日には行けそう 三代勇也

 13:35


 そう入力して送信した。

 そして石田さんからのメッセージも確認する。昨日の夜に来ていたメッセージは「どこか行きたい場所見つかった?」というものだった。昼間、学食で悩んでいたからそれで心配してくれたのかもしれない。そして今日の朝になって


 大丈夫? 体調悪かったりする? 石田美月

 8:38


 と心配のメッセージを送ってくれていた。SHRの開始が8時35分なので、始まってすぐに送ってくれたのだろう。

 正直言って京平だけでも十分すぎるくらい嬉しいのに、石田さんまで心配してくれているのは言葉にできないほど嬉しい。

 そしてその後、少し時間を空けてもう1件送られてきていた。


 今日、学校終わったら三代君の家に行くから 石田美月

 12:50


 その一文を見て、慌ててスマホを持ったまま体を起こした。寝ぼけているのかもしれないと思い、ゴシゴシと目をこすってみたが、その文章は確かにそこに存在していた。

 そもそも俺の家の住所を石田さんは知らないはずだ。なのにどうやって来るというのだろうか。それに部活はどうするのだろう。きっと今日も放課後に部活があるはずだ。


 頭の中でぐるぐると情報が渦を巻いて回転している。

 時計を確認した。現在の時刻は13時39分。であればまだ5時間目は始まっていないはずだ。俺は急いで返信の文章を考える。


 そんな時にピコンと通知音が鳴った。通知を見てみると、京平からで「そっか。お大事に」という文章と、ペンギンのキャラクターが「了解です」と敬礼しているスタンプが送られてきていた。

 それも嬉しかった。が、やはり今は石田さんのことしか頭になかった。家に来るといわれて、断るのはなんだか拒絶しているようで気が引ける。かといって、分かったと承諾するのもなんだか厚かましい気がする。


 俺は一体どうすればいいんだ?


 数学の問題を解くとき以上に頭をフル回転させる。そもそも、断る必要はないのかもしれない。そうだ、親父は今日から遊びに行くといっていたからこの家には誰もいないわけだ。


 ぐぅぅぅぅぅぅ


 とお腹が鳴る。それもそうだ。昨夜ご飯も食べずに寝てしまったのだ。流石に返信をしたら何か簡単に作って食べておかなければいけない。

 空腹のせいか、頭がうまく回らなくなってきた。なのでいったん最初に戻って、冷静になって考える。


 そもそも、石田さんにこの家に来てほしいのか。


 答えはYESだろう。それは恋愛感情などではなく、人肌恋しいのが原因だ。今は誰かと他愛のないことでいいから会話をしていたい、そんな気分だった。

 では、家に来てもらうとして返事はなんとすればよいか。

 素直に「来てほしい」というのは、流石の俺でも気持ち悪いと感じるし、恐らくそんな返信をしたら石田さんも来なくなるだろう。


 では、遠回しに来てほしいことを伝えるしかない。つまりは俺の家に来る口実を作ろうというわけだ。改めて考えても、なんで俺はこんなめんどくさいことをしているのだろうと感じてしまう。今まで人間関係を築いてこなかったからだろうか。

 俺はスマホに文字を入力していって、最後まで入力して読み直す。誤字脱字はないだろうか、文章で変なところはないだろうかなど、読書感想文の推敲のように真剣に文字と向き合っていた。


「よし、これでいいか」


 意を決して送信ボタンを押す。それはポンという音と共に石田さんに送られた。

 しばらくそのまま画面を眺めていると、すぐに既読がついた。まだ、ギリギリ昼休みだったようで返事が来るのかもしれない。


 ポン


 返事はすぐにやってきた。それを見て俺はホッと胸をなでおろす。今まで胸にのしかかっていた重みがふんわり消えていった感じだ。

 俺はスマホをポケットに入れて、何か食べれるものを作ろうと思い部屋を後にしてキッチンに向かっていった。

 その返信が正解だったのかは、今はまだわからない。



 嫌なことがあってサボってた。心配かけてごめん。あと、今日の宿題を教えてほしい。 三代勇也

 13:45


 うん、分かった。待ってて。 石田美月

 13:45



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ