善意の宇宙人
ノックの音がした。
こんな夜更けにと思う間もなく、外から勝手にドアが開いた。
泥棒でないことはすぐにわかった。
「宇宙人です」
相手の名乗りどおり、金色で液体状の身体は、宇宙から来たことを物語っていた。
私が、言葉が通じるんですねと話しかけると、宇宙人は金属の棒を振って見せる。
「自動翻訳機です。旧型なので、やや言い回しが不自然になりますが。実は助けてもらいたいのです」
宇宙人が言うには、乗ってきた宇宙船が故障してしまって、代用の部品が必要なのだと。もっと詳しく聞いてみると、宇宙人の技術で、水があればその部品を製造できる機械があるので、必要なのは大量の水だけだとわかった。
私は、一番近い湖の場所を教える。
「ありがとうございます。これで故障がなおります。ぜひ、お礼をさせてください」
私が遠慮すると、宇宙人はさらに言った。
「あなたには助けられました。私に感謝の気持ちを形にさせてください。そうだ、私は、宇宙で害虫害獣駆除の仕事をしています。お困りの害虫害獣はいませんか?」
私は害獣を指定する。
「では、母星に戻って、駆除道具を持ってきます。この星の大きさだと、二時間ぐらいで終わります」
そう言い残し、宇宙人は去っていった。
エヌ氏は、夜更けに目を覚ました。
「ミケや。閉まっているドアなんか見つめてどうしたんだい?」
猫はにゃーんと返事をする。
自動翻訳機を持っていないエヌ氏は、自分が害獣と呼ばれたことを知ることはなかった。
おわり