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2018年3月6日 す場退々堂表代が我!ばらさよ社V

この日はインターン、説明会と連続して低質なイベントを開催してきた、因縁のV社の1次選考だった。


選考形式は6名によるグループディスカッション。




待ち時間中に同じグループのメンバーと自己紹介をしていったのだが、ここで私は意識高い系のヤバい奴と遭遇する。


ブルーマウンテン学院大学の彼は、まず自己紹介で執拗な帰国子女アピールをしてきた。


まあそのくらいなら別に大したことは無いのだが、問題は、「所属大学名は言わないでくれ」と事前に人事から説明されていたのを無視して、他の人に所属大学名を言うように強要したことである。


それも、「これって言うのがマナーですよね?」といった具合で。


そして、断り切れず他の人が発表していく大学名を査定し始めた。


こういう企業にはこういう人が集まってくるんだろうかと驚愕したのだが、そういう人は割とどこでもいることを後々知ることとなる。


こいつに主導権を握らせてはいけないと誰もが認識した上で、選考会場へと案内された。




部屋に案内されて各々着席していくと、ブルーマウンテンに「あれ?許可されてもないのに着席なんかしていいんですか?」と言われた。


確かに「どうぞ」とは言われてないが、「着席してお待ちください」とは人事から言われていたので、「いいんじゃないですか?」と告げたら、首をかしげながら着席した。


永遠に立ってろお前は。




選考官は髪がボサボサで目が死んでる若い人だった。


お題は『女子ソフトボールを東京オリンピックで盛り上げるためのPRを考えてください』というもの。


選考スタート。


先日のアプリゲーム会社での選考の反省を活かし、まず最初に喋ることで主導権を握る作戦に出た。


というか、ブルーマウンテンに主導権を握られたくなかった。


ソフトボールがあまり盛り上がらない前提でのお題と判断し、その理由を考えて、それを解決する手段をPRの手法で考えていくプロセスが頭の中に浮かんでいた。


しかし、ここで1つ重大な問題が発生する。


私以外、そもそもソフトボールを知らなかった。


先陣を切った、つまり司会役として名乗り出てしまった以上、グループとして一定の案を出すことについての責任は私に重く降りかかる。


限られた時間の中で「ソフトボールを説明する」という作業が追加されたこの状況は、まさに試練といったところだった。




ソフトボールの説明としてよく用いられるのは、野球との比較である。


ソフトボールは野球に比べて安全面に配慮された仕組みが数多くあり、男女関係なく幅広い年齢層で行える点が特徴である。


また、女子ソフトボール日本代表は国際大会でも優秀な結果を残しているなど、盛り上がる要素が多い競技である一方、認知度が低いというのも事実だ。




というようなことを1分かけて説明した。


1分でも結構な致命傷とはなるのだが、できるだけ簡潔に説明したという点は選考官に評価されるポイントでもあるだろう。


「今の説明を踏まえて、ソフトボールを体験してもらうイベントを実施することがアイデアとしては浮かんだけど、どうでしょう?」と話を振る。


これは結果論だが、ここで周囲に話を振ったことが敗北の決定打となった。




ブルーマウンテンが待ってましたとばかりに口を開いて、衝撃の言葉を発した。


「でもソフトボールと野球なんて似たようなものだし、2つの競技を併合して新たな競技として開催すればいいじゃないですか」


もちろん、この発言が他のメンバーの賛同を得ることはなかった。


しかし、彼の発言は私にとっては大ダメージだったのだ。


彼の発言の問題点は3つある。


1つ目は、私の説明を全く聞いていないため、更なる説明が必要となり、大幅な時間ロスになること。


2つ目は、私の質問に対する答えになっていないこと。


3つ目は、私の説明が他の人に伝わっていないという印象を選考官に抱かせること。


1つ目と2つ目はともかく、3つ目についてはこの時気付くことは無かった。私も未熟で必死だったのだ。




ブルーマウンテンの発言はグループに大きな混乱を招いた。


一人、何でも肯定するタイプの人がおり、その人が「いいですね~」と容易く発言してしまったことで、「いやそれは違うだろ」という私を含めた4名の反応が遅れた。


ここで再びブルーマウンテンが「じゃあその方向で行きましょう」と主導権を握ろうとした。


私は「他の人の意見も聞きましょうよ」と促す。


幸い他の4名がブルーマウンテンの意見に反対してくれた。


その後、ブルーマウンテンに「和田さん結構知識あるみたいだし、和田さんのアイデアに期待しましょうよ」という無茶ぶりを喰らう。


しかし、この程度の無茶ぶりは煮卵で慣れているので、容易くアイデアを出す。


煮卵をなめるなよ。




ブルーマウンテンがダンマリを決め込んだことも幸いし、何とか時間内にグループとしての企画を出すことができた。


この間、選考官が一切メモを取ったりしなかったことが引っかかったが、特に気にはしなかった。


そのくらい自信と達成感に満ちていた。


選考の最後に「本日のMVP」を決めてくださいと告げられ、満場一致で私が選出された。


そりゃそうだろ、と私も思っていた。




しかし結果は落選。


V社の選考は、1次選考での敗退となった。




作戦会議のあの日、幼馴染に言われたことがある。


就活なんて理不尽に落とされることなんて山ほどある。


その度に気にしていたらメンタルが持たない。


「あんな見る目が無い選考官くたばればいいのに」


そのくらいの気持ちでやらなきゃダメだ。と。




私はこのアドバイス通り、すぐさま岡田に連絡を取った。


「就活終わったらV社の玄関にウンコしに行こうぜ」




-----2024年3月6日の私より-----


初めて就活で「やることをやった」という達成感を味わえたのと同時に、就活の厳しさも教えてもらったV社には感謝です。


この日の出来事は6年経過した今でもよく覚えています。


未だに気になるのが、人事の方は付きっきりでグループディスカッションが行われた部屋にいたのですが、本当に何のメモも取っていなかったことの真相です。


もう落とす前提のグループだった可能性もありますね。

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