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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-01『天翔ける白き翼の魔導騎士』
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第二章:Kissは甘く切なく、愛おしく/02

 午前中の一限目から三限目は、普通の学園とほぼ変わらない授業だった。

 しかしそんな座学もそこそこに、四限目からは場所を移し……始まるのは、魔術の実技授業だ。

 ――――魔術。

 ここで確認しておくべきことは、このエーリス魔術学院の根幹ともいえるそれについてだろう。

 まず前提として、この世界には『プラーナ』と呼ばれる超エネルギーがあまねく満ちている。このプラーナの原理や発生理由は未だに解き明かされていないが……これを使って発動する術式が『魔術』というものだ。

 魔術というのは、プラーナを媒介として発動する超自然的な術式のことを指す。用途は攻撃や防御といった戦闘行為の他、人間の傷を癒す治癒のものや、人が入れないような狭い場所の探査、または人同士のコミュニケーションなど……その幅はかなり広い。

 簡潔に言えば、無から有を生み出すことを可能としているのだ。

 物理法則も何もあったものじゃないが、これが魔術というものの本質である。

 …………だが、魔術も万能じゃない。

 魔術は先に述べたようにプラーナを媒介として発動するものだが、このプラーナは万人に使いこなせる力ではないのだ。人によってプラーナ適性があって、力を引き出せるものはごく限られた才能のある者に限られている。

 プラーナを自在に操り、魔術を行使することのできる特別な才能のある者を『魔導士』と呼ぶのだが……その数は、決して多くないのだ。

 つまり魔術とは特別な力で、それを使える魔導士はごく一握りの特別な存在と覚えておけばいい。

 ……ちなみに魔術には、それぞれ火・水・風・土・氷・雷・光・闇の八つの属性が存在している。これにも人それぞれ得意・不得意があって、個人によって使える属性も、それに伴う術式のレパートリーも千差万別。魔術というのは、まさに特殊能力と呼べるものなのだ。魔導士は超能力者の一種と言ってもいい。

 尤も……右を見ても左を見ても魔導士だらけのエーリス魔術学院に居ると、そんなことも忘れそうになってしまうのだが。

 ――――閑話休題。

 とにかく、ウェインたちは魔術の実技授業を受けていた。

 場所は教室からグラウンドに移し、設置された的に向かって皆がそれぞれ攻撃魔術を撃っている。

 そんな皆の様子を、ウェインとフィーネはとりあえず遠巻きに観察していた……のだが。

「なあ、フィーネちゃんってば」

 その矢先、フィーネはある一人の男子生徒に絡まれていた。

 二人よりも背丈の低い、くせっ毛の茶髪がトレードマークな男子。ここに居るのを見るに、クラスメイトなのは間違いない。

(この男……確か雪城(ゆきしろ)風牙(ふうが)だったか)

 そんな彼にしつこく絡まれながら、フィーネはその男子が誰だか見当を付けていた。

 ――――雪城(ゆきしろ)風牙(ふうが)

 世界屈指のプラーナ技術を持つ大企業連『雪城コンツェルン』の御曹司で、ゆくゆくは次期総裁になると目されている……言ってしまえば良いトコのお坊ちゃん。ただし家柄はもとより、その実力もエーリス魔術学院でトップクラスに位置すると言われているほどの高い才能の持ち主だ。

 間違いない、スレイプニールの資料で見た顔だとフィーネは直感的に理解していた。

 ……ウェインもフィーネも、潜入任務に際してエーリス魔術学院の全校生徒の顔と名前は、事前に全て記憶している。特にクラスメイトとなる者に関しては、細かい経歴なども全て覚えてきた。

 だから、絡まれながらフィーネは彼が誰だかを理解できていたのだ。

 そんな風牙の背丈は163センチで、先に述べたように二人よりも低い。セミショート丈の茶髪はぼさぼさのくせっ毛で、フィーネを見上げる瞳は……なんというか、下心丸出しの色気づいた感じが窺える。当たり前だが格好はウェインと同じ男子のブレザー制服だった。

「ねえフィーネちゃん、フィーネちゃんってば」

「……なんだ、私に何か用か?」

 下心が見え見えだから無視していたものの、しかしあんまりしつこく絡んでくるものだから、フィーネは仕方なく反応を返してやる。

 すると風牙は「そうそう、用があんのよ!」と嬉しそうに笑い、

「俺さ、フィーネちゃんのこと一目見た瞬間にピーンときちゃったワケ。だからさ、折角だし仲良くしたいかなあーって」

「そうか。何にピンと来たのかは知らんが、話す分には構わんぞ」

「えっマジでぇーっ!? だったらだったら、放課後って暇だったりしない? 良ければ俺と二人っきりでお茶しながらゆーっくりと互いの親交を深めたり……」

「待て、そういう方向なら遠慮させて貰う」

「いいっていいって、遠慮しなくたって!」

「いや遠慮しているわけでは……なんだこの男は」

 と、こんな具合に――少しフィーネが気を許しかければ、これ好機と言わんばかりに風牙は強引に話を進めようとしてくる。

 なんというか、この男やたらと押しが強い。軟派で下心が丸出しな感じなのに、どうにも振り払えないぐらいに押しが強くて仕方ない。

「――――おい、ちょっと待てよ」

 そんな風牙の強引さにフィーネが困り果てていると、ウェインが助け船を出してきた。

 低くした声で凄みながら、ガッと風牙の肩を掴んでフィーネから無理に引き剥がす。

 そうしてウェインが割って入ると、風牙は「おい、邪魔すんなよ!」と文句ありげに食って掛かる。

「邪魔するに決まってんだろうが、嫌がってんのが分かんねえのか?」

「うるせえ! これは俺とフィーネちゃんとの話だ、外野は黙ってやがれ!」

「馬鹿も休み休み言いやがれ、外野はてめえの方だろうが」

「なんだと!? お前……俺が誰だか分かって物言ってんのか!? 俺は雪城風牙様だ、天下に轟く雪城コンツェルンの次期総裁を約束された男だ! この名前知らねえとは言わせねえぞ!」

「いんや? 知らねえなあ、どこの間抜けの名前だソイツは」

 無論ウェインも風牙のことは資料で見て知っているが、そこは売り言葉に買い言葉。ふんと鼻を鳴らしてウェインが言えば、言われた風牙もどんどんムキになって。

「お前……喧嘩売ってんのか!?」

「ふざけんじゃねえ、先に売ってきたのはてめえの方だろうが! てめえがどこの何様だか知ったこっちゃねえが、フィーネは嫌がってんだ! それも分からねえのに口説こうなんざ百万年早ええんだよ、この馬鹿が!!」

 とまあ、どんどん口論がエスカレートしていった二人はもう一触即発の雰囲気。ヒリつく空気の中、今にも殴り合いの喧嘩が始まってもおかしくないほど……だったのだが。

「――――こら風牙、そこまでにしておきなさい」

「痛てぇっ!?」

 寸前で止めたのは、風牙の頭を後ろからコツンと叩きながら割って入ってきた……長身の少女だった。

「な、何すんだよフレイア!?」

「それは私の台詞です。初対面の方になんて口の利き方をするんですか。それに一部始終を見ていましたが、今のは明らかに風牙が悪いです。この方はあちらの方を守ろうとしただけ……お二人に謝りなさい、風牙」

「で、でもよお!」

「いいから、謝りなさい」

 叩かれた後頭部を擦りながら振り向いた風牙を、落ち着いた声で叱る少女。その口調も立ち振る舞いも、風牙と違ってどこか理性的だ。

(ふむ……確かフレイア・エル・シュヴァリエだったか)

 そんな彼女を眺めながら――――ウェインの背に隠れるようにしていたフィーネは、彼女が誰かをすぐに理解していた。

 ――――フレイア・エル・シュヴァリエ。

 ノーティリア帝国でも有数の名門貴族、シュヴァリエ家の令嬢だ。

 見ての通りの気品あふれる上品な立ち振る舞いながら、魔導士としては超優秀と聞く。まさに天才の名に相応しい才能の持ち主で、学院での成績もほぼ主席に近いと資料にはあった。

 そんなフレイアの背丈は178センチと、ウェインやフィーネよりもずっと高い、スラリとした高身長。女性としてはかなり背の高い部類に入るだろう。しかも体格は上から93・58・86とかなり起伏に富んでいて、スラッとした脚もかなり長く……それこそ、モデル業でも十分にやっていけるぐらいのスタイルの良さだ。

 そんなフレイアの髪はきらきらと輝く金髪で、短くセミショート丈に切り揃えている。ぱっちりとした瞳はエメラルドグリーン、少しだけ垂れ目気味で……左の目尻にある泣きぼくろがチャーミングな、彼女はそんな魅力にあふれた少女だった。

 ちなみに、格好はフィーネと同じ女子ブレザー制服なものの、彼女のように着崩してはいない。スラリと長い両脚を包む黒タイツがなんとも眩しい、ちゃんとしたお嬢様らしい上品な着こなし方だ。

「申し訳ありません、風牙がとんだご無礼を。……私はフレイア・エル・シュヴァリエと申します。確かウェインさんにフィーネさん……でしたね。同じクラスメイトとして、仲良くして頂けると嬉しいです。……ほら、風牙もちゃんと謝って、それからご挨拶を」

 フレイアはにこやかに微笑みながら、初対面の二人に丁寧な挨拶をしてくれる。

 そんな彼女に促されて、風牙は不服そうにしながらも……何故だかフレイアには逆らえないようで、渋々ながら非礼の詫びと、今更ながらな挨拶をする。

「……悪かったよ、ついカッとなっちまった。フィーネちゃんもごめんな、我ながら流石に強引過ぎた」

「う、うむ……次からは気を付けてくれ」

「分かりゃいいんだよ、分かりゃ」

「…………名乗んのが遅れたな、俺は雪城風牙だ。フィーネちゃんには勿論覚えて欲しいとして……お前、ウェインだったか? ちゃんと覚えとけよ、この俺様の名前をよ」

「ああ、覚えといてやるよ。三時間ぐらいはな」

「お前やっぱ喧嘩売ってんだろ!?」

「だから先に売ってきたのはてめえの方だろうが!?」

「風牙、いい加減にしなさい」

「ウェインもやめろ、今のは煽ったお前が悪い」

 名乗った風牙にウェインが煽り返したものだから、またカッとなった二人が一触即発の空気になりかけたところを……フレイアとフィーネが叱りつけて、とりあえず場を収める。

「――――はい、次は風牙さんとフレイアさん、お願いしますね」

 そうした時に風牙たちを呼ぶのは、遠くで授業を監督していたエイジだ。

 どうやら二人の番が来たらしい。呼ばれた二人は「見てやがれ」「では、行って参りますね」とそれぞれウェインたちに言いつつ、エイジの方に歩いていく。

「さて、二人とも実力は確かなようだからな。これは見ものだ」

「だといいがな……」

 エイジに手招きされて、グラウンドの的の前に立つ風牙とフレイア。そんな二人の様子を、フィーネとウェインは小声で話しながら遠巻きに見物する。

「では、まずは風牙さんからどうぞ」

「分かりましたよっと。……野郎に見せつけてやる、この俺の実力って奴をよ」

 どうやら最初は風牙からのようだ。風牙はぶつぶつと独り言を呟きつつ標的と正対すると、その場でバッと右手を大きく掲げる。

 すると……どういう訳か、その右腕にビリビリと稲妻が迸り始めたではないか。

 間違いない、あれは雷属性の攻撃魔術……それもかなり高度なものだ。

 ハッとウェインが気付くのと同時に、風牙は稲妻の迸る右腕をバッと前に向かって振り下ろし。

「放てよ必殺雷鳴! インパルス――ブレイカァァァァァッ!!」

 雄叫びを上げながら、その右手から強烈な雷撃を撃ち放った。

 パッと目も眩むような閃光が瞬けば、まるで雷が落ちた時のような轟音が鳴り響き……風牙の右手から放たれた稲妻は、数メートル離れた先にあった大きな標的を瞬時に焼き焦がしてしまう。

 ――――『インパルスブレイカー』。

 それが風牙の放った魔術の名だ。雷属性の攻撃魔術の中でも特に高度なものとされる術式で、使いこなせるのは才能ある一握りの魔導士のみとも言われているほど難しい技。それを風牙はさも当然のように撃ってみせたのだ。

 手のひらから迸る雷撃、その瞬間的な電圧は数百万ボルトにも及び、これを喰らった相手は……あの標的のように、一瞬で焦がし尽くされ灰になってしまう。かなり難易度の高い魔術だけに、威力は折り紙付きだ。

 そんなインパルスブレイカーを、風牙はああも簡単に使いこなしてみせた。

 どうやら、口先だけの男ではないらしい。学院トップクラスの才能というのも本当のようだ……と、そんな彼の様子を眺めながら、ウェインとフィーネは共にそう感じていた。

「結構です。流石の腕前ですね、難しいインパルスブレイカーをここまで使いこなせるとは」

「へへっ、もっと褒めてくれたっていいんですぜ先生」

「……では、次はフレイアさんに」

「承知しました」

 エイジに褒められてニヤニヤとする風牙が下がっていけば、次はフレイアの番だ。

 金髪をゆらりと靡かせながら、優雅な足取りで静かに標的と向かい合うフレイア。そんな彼女がスッと静かに右手を小さく掲げれば、空中に――フレイアの周りにパッと現れるのは、金色に光る無数の光刃。

 そう、文字通りの光の刃だ。恐らくは光属性の魔術だろうが……フレイアがそっと右手を掲げた瞬間、そんな無数の光刃が彼女の周囲に現れていたのだ。

「舞い刻みなさい――――ライトニングダガー!」

 そしてフレイアが、まるで号令を下すように右手を前に向けると、それに従い……周りに浮いていた数百もの光刃が標的に向かって一斉に飛んでいく。

 鋼鉄すら紙切れのように切り裂く光刃が、四方八方から襲い掛かり……瞬時に標的を細切れに斬り刻んでしまう。

 ――――『ライトニングダガー』。

 見ての通りの光属性の攻撃魔術だ。術式自体は決して高度なものではないが……しかし、あんな数の光刃を同時展開するのは常軌を逸している、と言ってもいい。魔導士の技量によって同時に展開できる光刃の数は変わるらしいが、まさかこれだけの数とは……。

 見ていたフィーネが思わず息を呑んでしまうほど、フレイアの披露した魔術は常識外れで、そして……どこまでも圧倒的なものだった。

「やるねえ、フレイア」

「フレイアさんも流石ですね、いつもながら惚れ惚れする技量です」

「ふふっ、お褒めにあずかり光栄です」

「さて、次は――折角ですし、ウェインさんとフィーネさんにもやって頂きましょうか」

 ニヤッとする風牙と微笑むフレイアを横目に、エイジは次にウェインたちに視線を流してきた。

 どうやら、今度は二人をご指名らしい。

 初日だから見学だけで済む……とはハナから思っていなかったから、二人とも驚きはしなかった。だが……注目されているのは、否応なく感じてしまう。

 転入生が初めて披露する機会だし、何より自己紹介の場でフィーネが起こした騒動もあって、クラスメイト全員が注目しているのが嫌でも伝わってくる。

「へへへ、まあ精々頑張れよ。俺にゃ敵わねえだろうがな」

「お二人とも、頑張ってくださいね」

 無論、風牙とフレイアも注目しているのは皆と一緒だ。

 すれ違いざまに風牙はニヤニヤしながらウェインを煽るような言葉を口にして、フレイアは相変わらずのにこやかな笑顔で激励してくれる。

 そうして二人やクラスメイトたちに見送られながら、ウェインとフィーネはエイジに指示された通り、それぞれ的の前に立つ。

「ウェイン、あまりやり過ぎるなよ――――」

 と、フィーネが小声でそっと言いかけた矢先。

「見てやがれ……! フレイムシュートォォォッ!!」

 既にウェインは、構えた左腕にかなりのプラーナを集めていた。

 だからフィーネの囁き声なんて耳に届くはずもなく、バッと左手を前に突き出せば、その手のひらから猛烈な火柱を迸らせた。

 放たれた火柱は真っ直ぐに前へと伸びて……その先にあった標的を包み込めば、塵ひとつ残さずに焼却してしまう。

「おいおいおい……!?」

「まさか、ただのフレイムシュートでこれほどまでの威力を……」

 その恐るべき火力を見て、風牙とフレイアは――それだけじゃない、クラスメイト全員はおろか、担任のエイジですらも度肝を抜かれていた。

 ――――『フレイムシュート』。

 火属性の攻撃魔術で、これ自体は決して難しいものではない基本的な術式だ。ごくごくありふれたものだが……問題は、その火力がおかしいほどに猛烈なことだ。

 確かに、例えベーシックな魔術だとしても優れた魔導士であればかなりの威力を出せるのは事実だ。しかし……フレイムシュートがここまでの火力を発揮するというのは、少なくとも風牙たちやエイジは聞いたことがない。

 フレイムシュートは普通の学院生徒が使えば標的を焦がす程度、教師や優れた卒業生が使っても、五秒ぐらい掛けてやっと溶かすぐらいでしかない。

 だが、ウェインの放ったそれは――――ものの一瞬で標的を跡形も無く消滅させてしまっている。

 まるで高位術式のような火力だ。それだけウェインが魔導士として類い稀な素質の持ち主だということだが……同時に常識外れもいいところなのもまた事実。だから風牙やフレイア、クラスメイトたちやエイジは度肝を抜かれ、呆然としているのだ。

「……全く、加減というものを考えろ」

 そんな手加減抜きのウェインを横目に見て、フィーネは小さく溜息をついた後。

「なら、私も手抜きをする必要もないか。――――斬り刻め、ウィンドカッター!」

 そのまま、今度は自分の番だと言わんばかりに攻撃魔術を発動した。

 サッと左手を伸ばし、パチンと指を鳴らせば……ひゅんっと長い銀髪がさあっと風に靡いて。すると直後、どういうワケか彼女の前にあった標的がバラバラに斬り刻まれてしまう。

 フィーネは指を弾きながら、鋭く研ぎ澄まされた風の刃で標的を斬り裂いたのだ。

 ――――『ウィンドカッター』。

 彼女が得意とする風属性の攻撃魔術で、効果は見ての通り。無数の鋭い風刃を放ち、四方八方から相手を切り裂くというもの。どこかフレイアが見せたライトニングダガーとよく似ているが、しかし速さが桁違いだ。ほんの瞬きするほどの一瞬の間に、フィーネは原型が残らないほどに標的を斬り刻んでしまった。

 そんな彼女の見せたウィンドカッターを見て、またもクラスメイトたちが唖然とする。二人の見せた常識外れもいいところな魔術の威力に、皆は言葉すら出ないほどに度肝を抜かれているようだった。

「……しまった、やりすぎちまった」

 と、そこでウェインはハッと我に返れば、唖然とする皆の様子に気付いて今更ながらなことを呟く。

 そんな彼を見てフィーネはやれやれと肩を竦めつつ「別に構わんだろう」と言い。

「朝、お前が言っていた通りだ。多少やり過ぎなぐらいの方が却って不審がられないかも知れん」

「まあ、そりゃそうかもだけどよ……」

「ムキになりすぎなのは問題だがな。既に目立ち過ぎるほど目立っているんだ、今更何をしたところで変わらんだろう」

「……悪りいな」

「気にすることはない」

 二人が小声でそんなやり取りを交わす傍ら、エイジは「はははは……」となんとも言えない苦笑いをしつつ、コホンと咳払いをすると。

「け、結構です。お二人とも想像を遙かに超えています、見事でした。……さて、そろそろ時間ですし授業はここまでにしましょう。午後からはナイトメイルの実技に入りますから、皆さん遅れないように来てくださいね」

 常識外れにも程があるウェインたちの魔術に軽く引きつつも、あくまで教師としての体裁を保ちつつ……そう言って授業を締めくくるのだった。

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