第二章:CROSSING BLADES!/02
『――――戦闘開始!!』
そんな開会式から間を置かず、すぐに試合本番が始まった。
一番手はウェインだ。対戦相手はクラスメイトの男子で、場所は開会式と同じスタジアム。そして今まさにエイジの号令で第一試合が幕を開けた……のだが。
「オラァァァッ!!」
その第一試合は、わずか数秒足らずの一瞬で決着が付いてしまっていた。
試合開始直後、ダンッと踏み込んだウェインは両刃剣『ファルシオン・バトルキャリバー』を抜刀。相手に反撃の隙すら与えずに、たった一太刀で叩き伏せてしまったのだ。
斬り抜けた格好のまま静止し、残心するファルシオン。その背後でがっくりと膝を折って倒れるのは、対戦相手だったクラスメイトのナイトメイル。
『……マジかよ、早すぎねえ……?』
ともすれば、静まり返ったスタジアムに響くのは風牙の、そんな何とも言えないような一言で。しかし気を取り直した風牙はコホンと咳払いをすると。
『あーっと、先生?』
『……あ、はい。では戦闘終了……勝者、ウェイン・スカイナイト』
呼ばれたエイジも気を取り直し、どうにも気の抜けたような声でウェインの勝利を告げる。
そうすれば、やっと轟くのはスタジアムの観客席に詰めかけた生徒たちの歓声。そんな皆の歓声を浴びながら、残心を解いたウェインはバトルキャリバーを肩に担いでみせる。
「ま、ざっとこんなもんよ」
〈とりあえずは初戦突破、ですね〉
「問題はフレイアぐらいなもんだ。一気に勝ち進むとしようぜ、相棒」
〈イエス・ユア・ハイネス、私もルーネとの勝負は楽しみですから〉
と、ファルシオンとそんな風に語らいながら勝利の余韻に浸るのも束の間……すぐに次の試合の準備が始まる。
ナイトメイル競技会は選抜メンバーといえ、かなりの人数が競い合う一大イベントだ。回転率を維持するためにも、こうして開会式が終わって早々に……それも複数のアリーナエリアを跨いで行われているのだ。
だからウェインが秒で初戦に決着をつけてから間もなく、次の試合が始まろうとしていた。
「ミラージュレイピア! ――行くぞルーネ、速攻で終わらせる!」
〈分かりました、お姉様っ!〉
「遅いな、遅すぎる! それで私が捉えられるものかっ!!」
〈これで……!〉
「終わりだ! ――――ミラージュ・テンペストブレイクッ!!」
次の試合はフィーネとジークルーネ。場所は以前のタッグマッチでも使った仮想都市フィールド……対戦相手は別のクラスの女子生徒のようだ。
相手は珍しい射撃型のナイトメイルのようだったが、しかしジークルーネの超高速移動には対処しきれず。フィーネは瞬時に敵の懐に飛び込めば、分身殺法『ミラージュ・テンペストブレイク』で斬り刻み……ものの三〇秒と経たない内に勝負を決めてしまった。
――――そんな二人の初戦から、更に数試合が執り行われた後。
フレイアと彼女のデュランダルもまた、ウェインと同じスタジアムでの試合に臨んでいた。
「では、私たちも参りましょう……デュランダル!」
〈ボクに任せてよっ! オフェンスパターンはどうする?〉
「今回はパターン・スペリオルでいきましょうか。……フォトンバスターライフル、アクティヴ」
〈プラーナエネルギーはチャージ完了! いつでも撃てるよ、フレイアっ!!〉
「マキシマムチャージ・シュートッ!!」
彼女の相手もまた別のクラスの男子生徒、剣を二刀流で振るう格闘戦型のナイトメイルだ。
そんな敵を前に、フレイアはやはり巧みな戦術を駆使して対応。揺さぶりをかけ、心理的な動揺を誘い、そして隙を見せたタイミングで……フォトンバスターライフルからのキツい一撃を喰らわせる。
奴の振るう二刀流、確かに喰らえばタダでは済まないだろう。
しかし、例え無敵の矛であろうと接近しなければ意味がない。そしてそれを許すフレイア・エル・シュヴァリエでもない。
フレイアは一度たりとて敵を自身の懐に飛び込ませないまま、ミラーリフレクターを使うまでもなく……たった一度のバスターライフルからの砲撃で撃ち貫けば、あっけないほど簡単に撃破してしまった。
『……勝者、フレイア・エル・シュヴァリエ』
『いっよぉぉぉしっ!! さっすがはフレイアだぁぁっ!!』
〈……お兄ちゃん、私情を挟み過ぎ〉
『おおっとこれは失敬。いやあ、それにしても……今回もいきなり盛り上がってきたなあオイ!』
…………と、ナイトメイル競技会はこんな風に開幕早々から波乱の展開を見せていたのだった。




