第一章:プラーナの風が吹く/02
そんな昼休みから時間は過ぎて、放課後の夕暮れ時。窓から差し込む茜色の夕陽に照らされたエーリス魔術学院の校舎廊下を、ウェインとフィーネは二人揃って歩いていた。
今日の課程は終わり、ホームルームも終了。教室を出た二人は特にやることもないから、そのまま学生寮まで直帰だ。
「それでウェイン、週末はどうしたいか決まったか?」
「本気だったのかよお前……」
「当たり前だ。で、どこに行きたい?」
「お前に任せるよ、フィーネの好きにしてくれ」
「何を言う、ここ最近はずっと私が連れ回すばかりだったじゃないか。今度はウェインの行きたいところに私を連れて行ってくれ」
「って言われてもなあ……」
肩を揺らしながら、フィーネの問いかけにただただ困り果てるウェイン。
と、そんな風に会話をしながら、二人で廊下を歩いている時のことだった。
「――――――お二人とも、ちょっと!」
背中から呼びかけてくる声に気付いて、立ち止まり振り返ってみる。
すると、近づいてくるのは見慣れた青年の影ひとつ。ウェインたちを呼び止めて、駆け寄ってくるのは……二人のクラス担任でもある学院教師、あのエイジ・モルガーナだった。
「すみません、急に呼び止めてしまって」
「構いませんよ先生、それで……私たちに何の御用が?」
「お二人に伝え忘れていたことがあるんです、それも割と重要なことを」
一本結びに結った銀髪の尾を揺らしながら、駆け寄ってきたエイジ。それにフィーネが応じると、すると彼は普段通りの爽やかな笑顔でそう言って。
「実は今度、ナイトメイル競技会が行われることになりまして。もしよろしければ、お二人もそれにエントリーしてみてはどうでしょう……ということを、お伝えし忘れていたんです」
と、続けてウェインたちに告げる。
「ナイトメイル競技会……?」
「っていうと、一体どういうことだよ先生?」
揃ってきょとんと首を傾げる二人に、エイジははいと頷いた後。
「文字通りの競技会です。学院全体から選出した生徒の方々がトーナメント形式で戦い、その技術を競い合う……いわば大規模なナイトメイルの模擬戦です。年に二回ほど開催されるのですが、私のクラスからも何人か出る予定でして……折角なら、お二人もどうかなと」
「ふむ……」
「なるほどなあ。んでも……どうするフィーネ?」
「面白そうではあるが……さて、これはどうしたものかな」
「強制参加ではありませんから、エントリーされるかどうかはお二人次第です」
顎に手を当てて思案するフィーネと、同じくなんとも言えない顔のウェイン。
そんな二人にエイジが注釈っぽく付け足して言う中、二人は……特にフィーネは突然のことに判断しかねている様子。
「返事なら、今すぐじゃなくても結構ですよ」
と、そんな二人にエイジはいつも通りの爽やかな笑顔で言って。
「まだエントリーの締め切りまでには余裕がありますし、明日にでもお返事を頂ければ大丈夫ですから」
「……そういうことでしたら、私とウェインとで今夜一晩ゆっくり考えてみます」
「はい、それで結構です。ではお二人とも、よろしくお願いしますね? 色よいお返事を期待しています」
ニッコリと笑ってエイジはそう言うと、クルリと踵を返し……コツコツと靴音を立てて歩き去っていく。
去っていくエイジの背中を見送りながら、二人は顔を見合わせて。
「ナイトメイル競技会、ねえ……?」
「これは……どうしたものかな」
突然舞い込んできた思いがけないイベントに、ただただ微妙な顔を浮かべ合うのだった。




