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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『金色の姫騎士』
75/137

第六章:逆襲のデュエルフィールド/03

「……まだかよ」

 ウェインとフィーネ、二人が飛び出してくるのを虎視眈々と待ち構える中、ジリジリと張りつめた緊張感の中で……焦らされた風牙がひとりごちる。

「待つのです、時は必ず来ます」

 辛抱たまらんといった様子の風牙に対し、フレイアはあくまで冷静なままで返す。

 だが、そうした直後――――ハッと彼女は感じ取っていた。空気中にあまねく満ちたプラーナが……激しく震え始めたのを。

「ッ、これは……!?」

 見ると、折り重なった瓦礫の山の隙間から……緑色の閃光が漏れ出ているのが見える。

「おいおい、これって……まさかあの時のじゃねえよな……!?」

 まさかとフレイアがハッとする横で、目を見開いた風牙も顔を真っ青にして戦慄していた。

 ――――ファルシオンブラスター。

 その常軌を逸した威力は、決闘の折に二人ともよく知っている。特に風牙は直に浴びているのだ、今何が起こっているかはすぐに分かった。

「来ます! 風牙……構えてっ!」

「お、おうっ!」

 ハッとしたフレイアが叫んだ直後――――猛烈な閃光が、二人の視界を覆い尽くした。

「――――――ファルシオン・ブラスタァァァァァッ!!」

 遠くから聞こえる雄叫びとともに瓦礫の下から噴き出してきたのは、眩い緑色に輝く猛烈なプラーナビーム。強大な力を秘めた純粋プラーナエネルギーの塊は、大気をプラズマ化させながら飛び出して……山のように積み重なっていたビルの瓦礫を一瞬で吹き飛ばした。

 飛び出してきたそのプラーナビームは、デュランダルのバスターライフルのそれを遙かに超える火力と大きさだ。

 そんなファルシオンブラスターが噴き出して、突き上がった光柱が雲を散らし天を衝く中――――ひゅんっと飛び出してくる影を、フレイアの双眸は確かに捉えていた。

「あれは……ジークルーネ!」

〈フレイア、来るよっ!〉

「分かっています! マキシマムチャージ……シュートッ!!」

 ハッとした彼女は瞬時にバスターライフルを構え、トリガーを引いて発射するが――――。

「読めていたぞフレイア……お前の魂胆はな!」

 しかし、飛び出してきたその影――――ジークルーネはバシュンと射出したアレスターチェーンで、空中に浮かんでいたミラーリフレクターのひとつを絡め取ると……そのまま力任せにバスターライフルの射線上まで引っ張り上げる。

「なっ!?」

 そうすれば、ミラーリフレクターは迫っていたプラーナビームをバシュンと反射。真後ろに跳ね返ったビームは……撃った本人であるフレイアの方に飛んでいく。

「くっ、こんな乱暴な……っ!?」

 予期せぬカウンターに驚きながらも、フレイアはどうにか飛び退いてビームを回避する。

 だがその直後、回避した彼女の隙を突いたフィーネが超高速で突撃。ミラージュレイピアで一気に斬り掛かった。

「――――風牙!」

「あいよ!」

 無論、このままやられる彼女じゃない。

 フレイアは叫び、突っ込んでくるフィーネを風牙に撃墜させようとした。

 だが……風牙が矢を放とうとした寸前、下から飛んできた別の何かに邪魔をされてしまう。

 下から飛来して、天雷にぶつかったそれは両刃の長剣――ファルシオン・バトルキャリバー。

「おおっと、俺を忘れて貰っちゃ困るぜぇぇぇっ!!」

 風牙の邪魔をしたそれは、下からウェインの投げた剣だった。

 どうにかパワーダウンから立ち直ったようで、風牙の援護射撃を妨害したウェインはすぐに翼をはためかせて飛翔。一気に加速して風牙の懐に飛び込めば、風牙との接近戦にもつれこんでいく。

「やりやがったなこの野郎! 痛てえじゃねえか!?」

「残念だったな、お前の相手はこっちだ!」

「野郎とタイマンなんざお断りだっ! 俺はフィーネちゃんがいいんだよっ!!」

「そりゃあこっちの台詞だ! 俺だってお前なんざ相手にしたかねえんだよ!!」

「んだとこの野郎!? ああもう仕方ねえ……フェイルスピアだっ!!」

「いいねえ、ノってきたぜ! ――ファルシオン・バトルキャリバァァァァッ!!」

 風牙は三又の長槍『フェイルスピア』を召喚し、ウェインもバトルキャリバーを再召喚。互いにしのぎを削る激しい剣戟に突入する。

 これで、フレイアを守る弓兵は居なくなった。後は……存分に戦うだけだ!

「アテが外れたな、フレイア!」

「流石ですフィーネさん、貴女も私の戦術を壊すイレギュラーということですか……!!」

「そういうことだ!」

 厄介な風牙をウェインに任せた今、フィーネを阻むものは居ない。

 持ち前の超スピードで追い詰めるフィーネと、後ろに飛んでどうにか間合いを取りつつ、バスターライフルを連射するフレイア。

 時に直射、時にミラーリフレクターで反射してのトリッキーな迎撃だ。

 だがフィーネはひゅんひゅんっと凄まじい速度で右へ左へとステップを踏みながら、四方八方から降り注ぐ全てのビームを回避。そのまま更に加速しつつ、フレイアを射程圏内に収める。

〈今です、お姉様っ!〉

「ああ! ――アレスターチェーン!!」

 瞬間、フィーネは右手首の裏から再びアレスターチェーンを射出。ひゅんっと空を切って飛んでいった細いチェーンがデュランダルの右手首、バスターライフルを持つその手を縛り上げた。

「っ、しまっ……!?」

「もう遅い! 捕まえたぞフレイア……!!」

「ッ……!!」

「お仕置きの時間だ! ――――ショックバーストッ!!」

 フィーネはバチンと指を弾くと、縛り上げたチェーンを通して強烈な電撃をフレイアに叩き込む。

「きゃぁぁぁっ!?」

 チェーンを通して流れ込んできた電撃に焼かれて、思わず悲鳴を上げるフレイア。

 流石にその電撃には耐え切れないのか、いつの間にか右手のバスターライフルを取り落としてしまう。

 長く大きなライフル銃が、ガシャンと音を立てて足元に落下する。

「ッ、フレイア……!!」

 このまま電撃を浴びせ続けてやれば、いつかは行動不能に出来るだろう。

 しかし、その光景を横目に見ていた風牙が――――ウェインと交戦中だった彼が、意外な行動に打って出た。

〈お兄ちゃん、このままじゃフレイアがっ!!〉

「やらせねえよ! ――――どおりゃああああああっ!!」

 風牙はウェインとの剣戟の最中、手にしていた得物を……フェイルスピアを、あろうことかフィーネ目掛けて投げつけたのだ。

 無論、その隙にザンッと風牙はウェインに叩き斬られてしまい、大きなダメージを負ってしまう。

 だがその行動は、代償に負ったダメージは無駄ではなかった。

 風を切り裂き飛んでいった三又の長槍は、そのまま緩い弧を描いて飛翔し……フレイアを縛り上げていたフィーネのアレスターチェーン、その細いチェーンをピンポイントで切り裂いたのだ。

「なっ……!?」

〈嘘、あんな遠くから……っ!?〉

 かなりの距離がある中、槍投げでこの細いチェーンを正確に刺し貫いた。

 その常軌を逸した風牙の狙撃にフィーネと、そしてジークルーネまでもが唖然としてしまう。

 だが何にせよ、チェーンが切れたのは事実。半ばでアレスターチェーンが千切れたということは、即ちフレイアを蝕んでいたあの強烈な電撃も伝わらなくなるわけで。

「すみません風牙、助かりました……っ!」

 フィーネたちが唖然としている隙に、拘束から脱したフレイアはタンタンっとバックステップを踏んで離脱。バスターライフルを拾って回収しながら、一気に遠くまで間合いを取っていく。

「ッ、やはり風牙が邪魔になるか……ウェイン、ひとまずアイツの相手は任せるぞ!」

「おうよ、任されて!」

 そうすれば、フィーネは彼女の相手を一度ウェインに任せる形でその場から離脱する。

 同時にウェインも風牙を蹴っ飛ばしつつ、今度は逃げるフレイアの方に向かって飛翔していく。

 ――――今のファルシオンは、まだ本調子ではない。

 こうして戦闘行動が出来る程度には回復したファルシオンだが、まだブラスター発射後のパワーダウンから完全に復帰したわけではない。ああも有利な状況下で、未だに風牙を倒せていないのがその何よりもの証拠だ。

 だからこそ、フィーネは敢えて互いのポジションを入れ替えるのを選択した。

 ウェインが調子を取り戻していないように、フレイアもまだ体勢を立て直したわけではないのだ。

 あの拘束してのショックバーストで負わせた手痛いダメージは、確実に彼女のテンポを崩したことだろう。そんな状態であれば、いくら本調子でないとしても……ウェインならば問題なく戦えるはずだ。

 故にフィーネは、まず厄介な風牙から先に叩き潰しておこうと行動に移したのだった。

「美味しいところは譲ってやるよ、さっさとやっちまえ!」

「うむ、そちらも任せたぞ!」

 すれ違いざまにパンっと互いに手を叩き合いながら、それぞれの標的に向かっていく二人。

 ウェインが逃げるフレイアに斬り掛かる中、フィーネもまた超スピードで一気に風牙に肉薄。猛烈な斬撃のラッシュを彼に浴びせ始める。

「うおっ、ちょっ、早すぎんだろ!?」

〈な、なんなのこのスピード……対応しきれないっ!?〉

「例え狙撃能力が高くても、こうも懐に入られては撃てまい!」

〈覚悟しなさい、天雷! 風に乗った私とお姉様は……誰にも止められないっ!!〉

 風牙が反応し切れないほどの速度で斬り刻み、フィーネは一瞬の内に天雷を傷だらけにしていく。

 鋭く尖ったオレンジ色の装甲が、みるみるうちに刀傷にまみれてしまう。

 ――――天雷にとって、ジークルーネはまさに天敵といえる相手だ。

 地上でのハイスピードバトルを得意とするジークルーネは、ドンと構えての狙撃戦に秀でた天雷にとって最も相性の悪い相手。狙撃しようにも速すぎて捉えにくく、一度こうして懐に飛び込まれてしまえば、後はもう逃げる術はない。

 これが仮にファルシオンだとしたら、対空射撃もできる天雷は……状況次第だが、いい戦いが出来たことだろう。

 しかし、ジークルーネは……文字通りの天敵だったのだ。

「うおおおおおお!? 無理無理無理! 無理だってこれ!?」

〈弱気にならないでよお兄ちゃんっ!〉

「いやでも……うおっ痛ってええっ!?」

〈っ、確かにこれはキツ過ぎるわね……っ!!〉

 だからか、抵抗虚しく風牙はどんどん劣勢に追い込まれていってしまう。

〈こうなったらイチかバチかよ、お兄ちゃんっ!〉

「しゃーねえ、やったろうじゃねえか! ――――ディスチャージ・アロォォォッ!!」

 そんな中でも風牙は一瞬の隙を見出して、バッと飛び退いて間合いを取れば……破れかぶれにあの巨大な光の矢『ディスチャージ・アロー』を撃ち放つ。

「よっと」

 だがフィーネはひゅんっと加速すると、いとも簡単にその巨大な光の矢を避けてしまった。

「おいおい……なんつー速さしてんだよ、反則じゃねえ?」

 起死回生の一手で撃ち放った全力の一射が、避けられてしまった。それこそ道端の小石を避けるように、いとも容易く。

 だからか呟いた風牙の顔に浮かぶのは、諦めと尊敬と戦慄と……それ以上に強い、ドン引きの表情で。

 そんな彼に向かって、フィーネは風を切って突っ込んでいく。

〈今がトドメです、お姉様っ!〉

「ああ! 仕掛けるぞルーネ――テンペストイリュージョン、発動だっ!!」

 超スピードで突撃しながら、ジークルーネは満を持して分身。八つの影に分かれながら風牙の懐に飛び込めば、ザンッと振り上げた刃で風牙を空中に打ち上げて……そのまま、四方八方から彼を斬り刻んでいく。

「これで終わりだ! ミラージュ……テンペストブレイクっ!!」

 そうして一秒に数十閃と猛烈な速度で斬り刻んだ末に、フィーネはトドメと言わんばかりに全ての分身で同時に斬り掛かった。

 本体と分身、閃いた八つのミラージュレイピアの刃が同時に天雷を撫で、ザシュッと深く斬りつける。

 その瞬間、七つの分身体は姿を消し……残ったジークルーネ本体が火花を散らしながら地面を滑走。ザァァッと砂埃を上げながら止まると、身じろぎひとつせず静かに残心する。

「…………いやあ、やっぱ強ええわフィーネちゃん」

 しん、と場が静まり返ること数秒。

 残心するフィーネの背後で、風牙がフッと笑いながらひとりごちると――――瞬間、天雷は空中で爆発した。

 爆発といっても大したものではなく、爆ぜた天雷は原形を留めたまま、力なく地面に落下する。

 ドスンと地響きを立てて天雷が落ちる中、残心を解いたフィーネはそっと刃に空を切らせて。

『――――天雷、行動不能。雪城風牙さんの撃墜を確認しました』

 そうした時に仮想都市フィールドのスピーカーから木霊するのは、風牙の撃破を告げる……エイジ・モルガーナの号令だった。





(第六章『逆襲のデュエルフィールド』了)

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