第六章:逆襲のデュエルフィールド/01
第六章:逆襲のデュエルフィールド
爆破され崩壊したビルに押しつぶされるようにして、瓦礫の下敷きになった二騎が巻き上がった土埃の中に消えていった。
後に残るのは山のように折り重なった瓦礫と、崩れ落ちたビルの残骸のみ。そこに二騎の姿は……ファルシオンとジークルーネの姿はない。
「おいおい……チョイとこりゃあやり過ぎじゃねえの?」
そんな光景を――フレイアの近くのビル屋上に陣取って眺めていた風牙が、ドン引きした様子で呟く。
フレイアはそれに対して「これも戦術です」と平静な声で言い返して。
「それに……あのお二人、この程度の小手先で倒せるような相手とも思えません」
「だけどよ、マジでやり過ぎだろこれ……たかが模擬戦でここまでやるかね普通ぅ?」
「いかなる時、いかなる状況下でも全力でお相手するのが、私の流儀ですから」
「ホント相変わらずだよなあ、その顔に似合わないエゲつねえ戦法……」
あくまで冷静な声で呟くフレイアに、風牙は呆れたように大きく肩を竦める。
――――フレイアは、昔から用意周到な性格だった。
こうしてナイトメイルでの模擬戦がある度に、彼女は入念な下準備をして……こういう風に相手を罠に嵌めるような戦い方をしてきた。フレイアとずっと一緒に居たからこそ、風牙は誰よりもそのことを理解している。
そんな彼女が最も得意とする戦法こそ、こうした地形利用戦術。相手の足場を崩したり、地形を崩して逃げ場をなくしたり。こういう戦い方は、フレイアが一番得意とする……まさに十八番と言ってもいい。
…………とはいえ、今回のはかつてないほどにド派手な戦術だ。
故に風牙はこんな風に、完全にフレイアにドン引きした反応を見せているのだった。
「さて、次のターンと参りましょうか」
〈おっけー、リフレクターはもう展開終わってるよ。調整はボクに任せていいからね〉
「ありがとう、デュランダル。――風牙、そちらも弓を構えなさい」
〈こっちも負けてらんないわよ、気張んなさいよねお兄ちゃん〉
「へいへい……にしたって、ホントにまだ戦えんのかねアイツら?」
フレイアが積み上がった瓦礫の山の周囲を取り囲むようにミラーリフレクターを展開する中、風牙も膝立ちになってライトニングアローを構えつつ言う。
「お二人なら、必ず這いあがってくるでしょう」
それにフレイアは短く返しつつ、ガシャンと右手のバスターライフルを構えて。
「しかし、その時こそ最後……四方を囲む鏡の結界に閉じ込められた今、お二人が逆転できる可能性は万にひとつもありません」
スッと鋭く目を細めながら、どこか冷たい響きの声でそう呟いた。
「これで、チェック。…………あと一手でチェックメイトです、フィーネさん」




