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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『金色の姫騎士』
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第五章:金色の姫騎士/01

 第五章:金色の姫騎士



 ――――そして時は過ぎ、遂に訪れた模擬戦の当日。

 学園都市エーリスはアリーナエリア、その一角にある仮想都市フィールド。市街地を模して造られた広大なそこの中央交差点で、二人と二人がじっと向かい合っていた。

 ウェイン・スカイナイトとフィーネ・エクスクルード、そして二人と対峙する雪城風牙とフレイア・エル・シュヴァリエだ。

 仮想都市フィールドには、以前に風牙との決闘で使ったコロシアムと違って観客席はない。

 だが……フィールドの至るところに設置されたカメラや、上空をふわふわと飛ぶカメラドローンの捉えた映像を通して、多くの学院生徒たちが四人のことを見ているはずだ。

 きっと、決闘の時以上に多くの……ほぼ全校生徒に近いぐらいの大勢が、固唾を飲んで四人を見守っていることだろう。

 そんなカメラ越しの視線を浴びながら、二人と二人は交差点のド真ん中でじっと向かい合い、静かに睨み合っていた。

「おうウェイン、今日は負けねえからな」

「へいへい、好きに言ってやがれ。てめえの手の内は知れてんだ、今度も叩き斬ってやるよ」

「言ったなコノヤロー! 二度も同じ手にやられるような俺っちじゃねえってこと、思い知らせてやるよ!」

「ハッ、言うじゃねえか! だったら精々楽しませてくれよ、風牙ァッ!」

 そうして向かい合いながら、風牙とウェインの男二人は例によって挑発し合っている。

 だが、その横で……互いにじっと視線を交わすフィーネとフレイアの表情は、どこか真剣なものだった。

「……その顔を見るに、どうやら覚悟は決まったようだな」

 ポツリと呟いたフィーネに「……はい」とフレイアは静かに頷き返す。

「覚悟なら、もう出来ています。フィーネさんが仰ったように、私は……私の本当の心に従うことにしましたから」

「ふふっ、ならば私も一安心だ」

「ですから……そのためにも、容赦はしませんよ?」

「無論だ、全力で来るがいい」

 ふふっと微笑んだフレイアに、言われたフィーネはフッと楽しそうに小さく頬を緩めて。

「お前とも風牙とも、一度手合わせしてみたかったんだ。手を抜かれてしまっては私が困る」

 そう言った後で、一瞬だけスッと瞼を閉じて。

「だが――――私とウェイン、そう易々と崩せると思うなよ?」

 再び目を開けると、今度は鋭く尖らせたルビーの瞳で……そう、フレイアに真っ正面から告げる。

 それにフレイアが「望むところです」と返したタイミングで、フィールドの各所に設置されたスピーカーから聞こえてくるのは……例によって今回も監督役を務める、エイジ・モルガーナの号令だ。

『では皆さん、ナイトメイルを展開してください』

「っしゃあ! いくぜ天雷! 俺たちのリベンジマッチだ!!」

〈うん! 今日こそ絶対に勝つわよ、お兄ちゃんっ!!〉

 エイジの号令を聞いて、真っ先に風牙がナイトメイルを展開する。

 お兄ちゃんと呼ぶ相棒の声――天雷の甲高い少女の声に呼応するかのように、風牙はバッと構えた左手に着けた金のブレスレットを激しく輝かせた。

「この生命(いのち)、燃やし尽くす時だ! ――――天雷ッ!!」

 雷鳴の木霊する空から、風牙目掛けてバシンと叩きつけられた眩い稲妻。

 それと同時に現れるのは、鮮やかなオレンジ色のナイトメイル――――天雷(てんらい)

「フレイア!」

「……では、参りましょうか」

 現れた天雷のすぐ横で、フレイアもコクリと小さく頷き返し。そして……左手をスッと静かに構える。

 太陽を反射してキラリと光るのは、左の中指に着けた綺麗な指輪。ルビーのような赤い宝石が埋め込まれた、美しい指輪だ。

 フレイアが目を閉じて、意識を集中させること数秒。そのキラリ輝く赤い指輪を着けた左手を、カッと目を開いたフレイアは天高く突き上げて――――。

「フォトンウェーブ・イミッション! コール――――デュランダルッ!!」

 ――――フレイアの叫び声が轟いた瞬間、指輪の赤い宝石から閃光が瞬いた。

 目も眩むほどの、太陽の輝きにも似た眩い閃光。

 その瞬きが止んだ時、そのほんの一瞬の強烈な光に目を逸らしたフィーネたちが再び視線を戻した時。

「金色の、ナイトメイル……!?」

「まさに黄金の騎士……これがフレイア、お前のデュランダルなのだな……!!」

 彼女たちが目の当たりにしたのは――――黄金の騎士だった。

 全身を、キラリと輝く金色の甲冑で包み込んだナイトメイル。まるでおとぎ話に出てくる聖騎士のような魔導騎士の頭には、角のような三本の鋭いブレードアンテナが生えていて。更にその背中には……黄金の翼を纏っている。

 翼といっても、ファルシオンのプラーナウィングほど生物的なものじゃない。背中から生えた、六本の大きなフィンのような突起が……まるで翼のように見えているだけのことだ。

 …………美しい、ナイトメイルだった。

 ウェインも、フィーネも、そしてこの光景を見ているであろう観戦者の生徒や教員たちも。誰もがその美しさに息を呑み、言葉を失ってしまうほどに……それほどまでに、彼女の魔導騎士は美しかった。

 ――――『デュランダル』。

 それが彼女の、フレイア・エル・シュヴァリエの駆る黄金のナイトメイルの名だった。

 無論ウェインもフィーネも、潜入任務が始まる前にデュランダルのことだって予め頭に入れていたし、このタッグマッチの前にも――風牙と決闘をした時と同じように、ニールに頼んで詳細なデータを送って貰っている。だから知らないわけじゃないのだ。

 ……が、こうして直に目の当たりにすると、どうしてもその輝きに目を奪われてしまう。

 それほどまでに彼女のナイトメイルは……デュランダルは、美しかったのだ。

「お褒めにあずかり光栄です。お二人も早く、ご自分のナイトメイルを」

 じっと三八メートル上から見下ろすデュランダル――と融合するフレイアに言われて、ウェインは「おうよ」と、フィーネは「言われるまでもない」と頷き返せば、二人もまた自身のナイトメイルを展開する。

〈恐らく相手はかなりの強敵……油断せず行きましょう、ウェイン!〉

「なあにフィーネが一緒なんだ、負けやしねえ! さあ来い――――ファルシオンッ!!」

〈参りましょう、お姉様っ!!〉

「ああ! ――――ウェイクアップ・ジークルーネ!!」

 ウェインは突き上げた白い短剣から閃光を放ち、銀のペンダントを握り締めたフィーネは吹き荒れる疾風に身体を預けて。そして現れるのは、白と青のナイトメイル。

 ファルシオン、そしてジークルーネ。

 対峙するのは風牙の天雷と、フレイアのデュランダル。二騎と二騎は無言のまま互いに大きく間合いを取って、じっと戦闘開始の号令を今か今かと待ちわびる。

『ウェインさん、フィーネさん、雪城さんにフレイアさん。皆さんに騎士として、魔導士としての誇りある戦いを期待します』

 スピーカーから聞こえてくるのは、どこか形式ばったエイジの声。

『皆さん、どうか善き戦いを。――――戦闘開始(ファイツ・オン)!!』

 そして、次に聞こえてきた彼の号令を合図に――――二騎と二騎、魔導騎士たちの誇りを懸けたタッグマッチの火蓋が切って落とされた。

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