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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『金色の姫騎士』
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第四章:ダブルデート・アタック!/07

 始まりがあれば、終わりもある。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもので、陽が落ちた頃……四人は学院エリアに帰っていた。

 慣れ親しんだ校門を潜って、エーリス魔術学院の学生寮へ。全員が寮暮らしだから、帰る場所も四人一緒だ。

「では私たちはここで失礼する。今日のダブルデートは楽しかったぞ」

「また週明けにな。……だからダブルデートじゃねえって」

「細かいことは気にするな。ではな二人とも」

 学生寮は二階の廊下、最後にそんな挨拶を交わした後で、フィーネとウェインは203号室に――同じ部屋に入っていく。

 そんな二人にフレイアは「はい、おやすみなさい」と、いつもの笑顔で手を振っていたのだが。

「嘘……だろ……アイツら同じ部屋に住んでんの………………?」

 その横で風牙といえば、同室に入っていく二人を見て驚きの表情を浮かべていた。

 目を見開いて、ぽかーんと大口を開けたまま。呼吸も止まるほどのレベルで驚いて硬直する風牙。

「マジで……? それってもう完全に同棲じゃん……? は……? 良いのかよそれ……嘘だろ……? あんなん最初っから俺っちに勝ち目なんて無かったじゃん……いやそれは分かってたけども。マジで言ってんの……? あんなスーパー美人な女の子とひとつ屋根の下で……?」

「えっと、風牙?」

「ち、畜生……羨ましすぎんだろうがあの野郎…………」

 戸惑うフレイアをよそに、風牙は驚きを通り越してただただ震えている。

 もう血涙を流すような勢いで風牙は「羨ましすぎる……」なんてブツブツ呟きつつ、とぼとぼと歩いて自分の部屋に帰ろうとするのだが。

「――――風牙、ひとつ訊いてもいいですか?」

 そんな彼の背中を、フレイアが呼び止めた。

 珍しく、どこか真剣な声色で呼びかけられたから。立ち止まった風牙は割と真面目な顔で「どしたん?」と振り返る。

 するとフレイアは、逡巡するように少しだけ間を置いてから。

「例えば、例えばの話ですけれど……もしも風牙に好きな人が出来て、その人のためなら生命(いのち)だって懸けられるほどに愛していたとして……でも、添い遂げるにはお互いの立場や家柄が邪魔だったとしたら。その時……風牙なら、どうしますか?」

 意を決してフレイアが話してみた、たとえ話。

 それは……本当はフレイア自身が胸の内に秘めた、彼女の揺れ動く気持ちそのもの。もしも自分と同じ立場だったら、彼ならどうするのか……訊いてみたかったのだ。

 訊いてみて、その答え次第で――――これからのことも考えようと、そんな意図も込めて。

「んー、そうさなあ」

 そんな二重の意味を込めた質問に、風牙は腕組みをして僅かに思案した後。

「ンなもん、簡単な話じゃねーの?」

 と、あっけらかんとした顔で即答した。

「立場とか家柄とかさ、そういう面倒くせえことを考えんのは後回しだ。ソイツのことが好きなら好きだって、まず真っ先に相手に伝える。そして必ずモノにする! 細けえことは後でいくらでも考えられんだ。まずぶつかってみて、それから考えりゃ良いだけだろ?」

「…………えっ?」

 カラッとした笑顔で、あっけらかんと言ってみせた彼の意外な答え。

 それに驚いて、フレイアは思わず目を丸くしてしまう。宝石のようなエメラルドグリーンの瞳がくるんと丸くなるのを見て、風牙はニヤッと笑い。

「でなきゃ俺っち、フィーネちゃんに猛烈アタックなんかしねーよ」

 なんて風に、ケタケタと笑いながら冗談っぽく言って。

「とにかく後先考える暇があったら、とにかく当たって砕けろだ。違うかい?」

 風牙が当たり前のように言ってみせた、あまりにも彼らしい答え。

 それを聞いている内に、なんだかおかしくなってきて。フレイアはふふっと思わず小さな笑みを零すと……。

「そうですか……そうですよね、自分に正直になるのが一番ですよね。後先なんて考える必要ない、ありのままを真っ直ぐにぶつければいい……当たって砕けろ、その通りですね」

「っつーか、なんでまたそんなこと訊くんだよ?」

 クスクスと笑いながら、呟くフレイアに風牙がきょとんと不思議そうな顔で訊き返すが。

「ちょっとした謎かけです♪」

 しかしフレイアは笑顔でそう誤魔化すと、首を傾げる彼にくるりと背を向けて。

「おやすみなさい、今日はとっても楽しかったです。この間お渡しした戦術パターン、模擬戦の当日までにちゃんと覚えておいてくださいね?」

 最後にそれだけ言うと、フレイアは自分の部屋に――212号室に戻っていく。

「お、おう……?」

 イマイチ意味が分からないといった様子で、きょとんとしながら風牙が見送る中。自分の部屋に入ったフレイアはバタンと閉じた玄関ドアにそっともたれかかる。

(…………貴方の言葉で、私の心も決まりました)

「後は、私の気持ちと向き合う覚悟だけ……」

 閉じた玄関ドアに背中を預けながら、薄暗い部屋の中でフレイアは静かに決意を固めるのだった。自分の本心と、隠し続けていた本当の気持ちと向き合う決意を…………。





(第四章『ダブルデート・アタック!』了)

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