第四章:ダブルデート・アタック!/05
そうしてレストランで昼食を摂った後、更にあちこち遊びまわって。もう大抵のアトラクションは堪能し尽くしたと思えば……気付けばもう夕暮れ時。
流石にそろそろ帰ろうか、なんて皆で話している頃、最後にフレイアが観覧車に乗りたいと言い出した。
これぞ定番中の定番。遊園地に来たならば外せない、まさに主役そのものなアトラクション。皆もフレイアの提案を二つ返事で了承し、最後はその観覧車で締めることになった。
ぐるぐると、ゆっくりとしたペースで回るゴンドラ。
そのゴンドラにはウェインとフィーネ、風牙とフレイアにそれぞれ別れて乗ることになった。
無論、この辺りはフィーネの心遣いだ。
折角ならウェインと二人で乗りたい……という個人的な気持ちもあったのだが、昼時にあんな話をした後だ。どうせ観覧車に乗るのなら、フレイアを風牙と二人っきりにしてやりたかった。
だからフィーネは強引にウェインの手を引いて、風牙たちを置いて先に乗り込んでしまう。
「おいおい、置いてくこたあなかったんじゃねえか?」
「これで良いんだ、今は二人にしてやった方がいい」
「なんのこっちゃ……」
「気にするな、こっちの話だ」
置いて行かれた二人がひとつ後ろのゴンドラに乗り込むのを尻目に、首を傾げるウェイン。
そんな彼のすぐ隣に、フィーネはごく自然な動作でちょこんと腰掛ける。
そうしている間にもゴンドラはゆっくりと回り続けて、もう四分の一ほどの位置に。
これぐらいまで昇ってくると、高さは既に中々のもの。茜色に染まった空と、その下にある薄闇に包まれた街並みを……夕映えに染まる景色を遠くに眺めながら、ゴンドラは更に上へ上へとゆっくり昇っていく。
「……ウェイン、今日は楽しかったか?」
そんな、少しの切なさも覚えてしまう綺麗な景色を眺めながら、そっとフィーネは問いかけてみる。
隣に座るウェインも、窓の外に広がる夕焼け空を見上げつつ「まあな」と静かに頷いて。
「お前はどうだった……って、訊くまでもねえな」
チラリとフィーネの方を見てみると、そこにあるのは満足げな彼女の顔で。一日中楽しみつくしたフィーネの、そんな満足げな表情を見れば……聞かずとも、答えは分かるというもの。
だからウェインは言いかけた言葉を途中で止めて、小さく肩を竦めながら言い換える。
すると、フィーネはそんな彼の横顔を見つめながら。
「――――うむ!」
と、満面の笑みで頷き返して。
「でも最後にひとつだけ、足りないものがある」
「なんだよ、忘れ物でもしたのか?」
「忘れ物……か。ふふっ、そうかもしれんな」
「ハッキリ言えよ、それってどういう――――」
ウェインの言葉を遮るように、彼の頬にそっと手を寄せて。強引に自分の方を向かせれば、フィーネはそのまま急速度で顔を近づけて――――。
――――そっと、短いキスを交わす。
「ふふっ……♪」
真っ赤な夕陽をキラキラと反射しながら、長い銀色の髪がふわりと揺れる。
感じるのは、クチナシによく似た甘いフィーネの匂いと、触れた唇同士の柔らかくて、甘く切ない感触。
呼吸すら止まってしまうほどの美しい顔が、すぐ目の前に近づいたのは……ほんの数秒のことで。フィーネはすぐに唇を離すと、キスを落とした彼の顔を至近距離から……少しだけ頬を朱色に染めながら、じっと見つめる。
「……また、いきなりかよ」
「そう言うな、これぐらいは許せ」
「ま、いいけどよ……」
突然のキスに、やっぱり顔をほんの少し赤くするウェイン。肩を竦めながら視線を逸らす彼を見つめながら、フィーネは楽しそうに笑顔を浮かべていた。
そうしながら――――真っ赤なルビーの瞳は、チラリと後ろのゴンドラの方を見る。
(さて……あっちは上手くやっているといいが)
ひとつ後ろのゴンドラに居るのは、風牙と……フレイア。
ウェインの至近距離に最接近したまま、チラリと後ろを見るフィーネが思うのは……ひとえに、心揺れて戸惑い迷う彼女のことだった。
(……正直になればいいんだ、自分の気持ちに)




