第三章:……私はお前の剣であり、盾なのだから/04
その日の夕方、太陽が西の彼方に没しかけた頃……ウェインとフィーネはようやく学院に戻っていた。
フィーネと一緒に、くたびれた顔で校門を潜っていく。飛び出してから丸一日も経っていないのに、学院の景色がなんだか随分と久し振りに思えてしまう。
「あー……なーんでこんな時間まで引っ張られなきゃならねえんだ……」
「仕方あるまい、後始末というものがあるからな」
――――現れたDビースト、不可視超次元獣インヴィジリアは無事に倒した。
夜明けとともに奴は撃破したものの、その後の後始末やら引継ぎやら、色んな煩雑すぎる手続きでやたらと時間を食ってしまい……なんだかんだと帰宅がこんな時間になってしまったのだ。
後始末が無ければ、朝には寮に帰ってぐっすり眠れていたはずなのに。
それを思うと、ウェインの口からは疲れ切った声のボヤきが漏れてしまっていた。
「マジで眠たくて仕方ねえ……よく考えたらほとんど寝てねえよな、俺たちって」
「仕方ないだろう、これが私たちの務めなんだから」
ふわーあと眠たそうに特大のあくびをするウェインの横で、そう言うフィーネは何故か平然とした顔。全く同じ睡眠時間のはずなのに、どう見ても寝不足で眠そうな感じには見えない。
「……よく平気だな、お前」
そんな彼女が不思議で、ウェインが問うてみると。するとフィーネはうむと頷いて。
「私は案外平気なんだ。それにヘリの中で少しだが仮眠も取っている」
「へーえ、良いよなあ眠れて。俺ぁなんだか気が立っちまってよ、寝ようにも寝れなかったんだ。お前よく眠れたよな?」
「お前の傍はよく眠れるからな、知っているだろう?」
ふふん、と胸を張って何故だか自慢げに言うフィーネ。
それにウェインは「あら、そう……」と肩を揺らすしかできない。目元に濃い隈の出来た眠たげな顔では、もうこれ以上何かを言う気力もなかった。
「まあ寮はもう目の前だ、帰ったらゆっくり寝るといい」
そんな彼の横を歩きながら、フィーネがぽんぽんと肩を叩いて言うと。するとその直後――――。
「――――おーい、ウェインとフィーネちゃんじゃねえか?」
といった声が後ろから、駆けてくる足音と一緒になって聞こえてきた。
振り返ってみると、どうやら声の主は雪城風牙。フレイアも一緒になって校門の方から走ってきていた。
「偶然ですね、今お帰りですか?」
「うむ、そんなところだ。……お前たちは?」
「ま、チョイと野暮用でな」
「そこで偶然、お二人をお見掛けしたものですから」
風牙たちも、丁度あの仕込みを終えて仮想都市フィールドから帰ってきたところだった。そこで偶然にもフィーネたちの背中を見かけたから、走って後を追いかけてきたらしい。
「お二人とも、今日は大変でしたね。手続きのためとはいえ、朝からエルドラゴンまで往復ですもの」
「ん? ……あ、ああ。まあ色々とあってな」
(そういう言い訳になっているのか、ニールめ……先に言っておいてくれないと困るぞ)
フレイアに言われて、フィーネは一瞬戸惑いつつも適当に話を合わせる。
「まー、お疲れだったなお二人さん」
「おうよ……そっちは変わったこと、無かったか?」
「あるわけねえだろ、早々あってたまるかよ」
「ふふっ、特に変わったことはありませんでしたよ? いつも通りの、平和な一日でした」
「ふむ、ならば何よりだ。平穏無事なのが一番だからな……ウェインもそう思うだろう?」
「……まあな」
コクリと頷きはしたものの、ウェインは完全に眠気マックスな様子。眠すぎて完全に目が据わってしまっている辺り、いつマトモな受け答えが出来なくなってもおかしくないレベルか。
「風牙、フレイア、すまんがウェインがこんな調子なんでな。先に失礼させて貰う」
それを見たフィーネは限界を察して、二人には悪いと思いつつ……早々に話を切り上げて寮に急ぐことにした。
「おうよ、んじゃあまた明日な」
「今日はお疲れさまでした、ゆっくり休んでくださいね」
「うむ、また明日だ。……ああそうだ、週末のダブルデートは楽しみにしているよ」
「はい♪」
「いやダブルデートってこたあねえだろ……まあいいや、んじゃあなフィーネちゃん、それにウェインも」
フレイアと風牙、二人とそんな会話をしてから別れて……フィーネは眠気限界突破なウェインを半ば引きずるようにしながら、彼を連れて学生寮に向かって歩いていくのだった。




