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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『金色の姫騎士』
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第二章:ムーンライト・デュエル/08

〈ウェイン、後ろです!〉

「畜生、またかよ――――ッ!」

 透明化を解除したインヴィジリアが、ウェインの背後から何度目かという奇襲攻撃を仕掛けてくる。

 頭の立派な一本角を突き立てての、勢いをつけた突進攻撃。見えない相手にどうしても反応が遅れがちのウェインには避ける暇などなく、勢いづいた一本角が今まさにファルシオンの背中に突き刺さらんとした時。

「――――でやぁぁぁっ!!」

 流星のような勢いで飛び込んできた青い人影が、真横からインヴィジリアの巨体を蹴り飛ばした。

 横っ腹に直撃した鋭い飛び蹴りに悶えながら、遠くに吹っ飛んでいくインヴィジリア。その巨躯で何度もバウンドしながら、ゴロゴロと瓦礫を踏み潰して転がっていく。

「待たせたな!」

「ったく、遅えんだよ!」

 ウェインの窮地を救い、彼と背中合わせになって立つのは青いナイトメイル――ジークルーネ。

 合流したフィーネは背中越しにフッと彼に笑いかけつつ、左手に細い長剣……ミラージュレイピアを生成する。

「……また、お前の勇気に救われてしまったな」

「あ? 何のこったよ藪から棒に」

「分からないならそれでいい、気にするな」

 きょとんと首を傾げるウェインに小さく笑って言うと、フィーネは静かにミラージュレイピアの(つか)を握り締めて。

「で、実際に手合わせしてどうだ?」

 背中を合わせた彼に、そっと小声で問いかけてみる。

 するとウェインは「……正直言って、参ってるぜ」と肩を竦めて返す。

「野郎そのものの攻撃力は大したことねえ。だが……姿が見えねえってのがネックだ」

〈かといって、奴を探知する能力は我々にはありません。手詰まりに近い状況です〉

 あくまで冷静な声で言うファルシオンに「ふむ……」とフィーネは唸り。

「ルーネ、お前の意見を聞かせてくれ」

 と、己が相棒にも意見を求める。

〈率直に申し上げれば、倒すのは非常に難しいかと。ですが……お姉様、その顔は何か秘策がおありなんですね?〉

「そんな大袈裟なものじゃない」

「秘策か何か知らねえが、結局どうすんだよ? 見えねえ相手じゃあ……流石に分が悪いぜ」

 大きく肩を竦めるウェインに、フィーネは小さく振り向くと。

「…………気付かないか、ウェイン?」

 そっと、耳元で囁きかけるような仕草で呟く。

「んだよ急に、なんの話だ?」

「確かに奴は目に見えない相手だ、しかし……感じないか? 微かにだが……奴の周りだけ風が乱れている。プラーナの流れが少しだけおかしいんだ」

「……って、言われてもな。俺にゃ分かんねえよ」

 実際、ウェインには分からない感覚だった。

 前に述べたように、フィーネは空気中のプラーナの流れを『風』として感じ取ることのできる特異体質の持ち主だ。そんな彼女の人並外れて敏感な感覚ならば、確かに分かるのかも知れないが……しかし、その点では凡人なウェインに理解できるはずもない。

 ……が、彼女が言うのなら事実なのだろう。

「じゃあお前にゃ分かるのか、野郎の居場所が?」

 いつの間にか、インヴィジリアは再び透明化で姿を消している。

 こうなれば、相棒の鋭い感覚に賭けるしかない。二つ返事でフィーネの言葉を信じたウェインが問いかけると、フィーネは「無論だ」と頷き返し。

「風がざわめいた時、プラーナの乱れを感じた時……そこに奴が居る」

 と、自信ありげないつもの表情で応えた。

「お前が言うんなら、野郎は瞬間移動じゃなく単に透明になってるってことだろうがよ。でも簡単に言ってくれるよな……」

「フッ、確かに一人では無理かもしれんな」

 参ったような顔をするウェインに、フィーネはまた小さく笑いながら言って。

「だが――――私とお前、二人でなら出来るはずだ。私たちに不可能はない、そうだったな?」

「……へッ、かもな」

〈今はフィーネさんの感覚に賭けましょう、それが勝利を掴むたったひとつの鍵ですから〉

〈ファルシオン兄様の言う通りです、お姉様に全部任せてください〉

「へいへい、ルーネご自慢のお姉様だもんな」

〈ええ、私のフィーネお姉様は誰にも負けません〉

「……ウェイン、準備は?」

「出来てるよ」

「タイミングは私に合わせろ、お膳立ては全部やってやる」

「オーライ、んじゃあ美味しいトコは持ってかせて貰うぜ」

「好きにしろ、今日はお前が主役なんだ」

 フィーネと頷き合いながら、ウェインもまた左手に長剣――ファルシオン・バトルキャリバーを生成。彼女と背中合わせになりつつ、握り締めた剣をギュッと構える。

 インヴィジリアの姿は、今再び夜闇と炎の中に融け消えている。

 だが、相対するウェインの顔にさっきまでの焦燥感は無かった。

 それはひとえに、背中を合わせた彼女の……相棒のことを信じているから。彼女を信じて全てを預ける覚悟が出来たからこそ、ウェインの顔から焦燥感に満ちた表情は消えていた。

 そんな彼と背中を合わせながら――――ミラージュレイピアの切っ先を突き付けて、フィーネは叫ぶ。

「覚悟しろ! 貴様だけは……許さんっ!!」

 レイピアを構えながら、怒りに燃える真っ赤な瞳を震わせて。叫んだフィーネはダンッと地を蹴って飛び出せば、未だ姿を見せぬ異形の化け物を討ち滅ぼすべく……その剣を振り上げ、走り抜けていく。

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