第二章:ムーンライト・デュエル/01
第二章:ムーンライト・デュエル
――――しかし、突然の出来事は真夜中に起こった。
午前二時を少し過ぎた頃、草木も眠る丑三つ時のこと。203号室に突如として鳴り響いたけたたましい緊急アラートが、穏やかな寝息を立てていた二人を叩き起こした。
「ッ……!」
「何事だっ!?」
ビーッ、ビーッとわめき散らすアラート音を聞いた瞬間、二人がバッと飛び起きる。
フィーネが先にベッドから飛び降りて、隣のベッド――物置と化しているフィーネ用のそこから、二つ折りの大きな通信機を引っ張り出す。
これがやかましいアラート音の発生源だ。この音が示すのは緊急の呼び出し、それもかなり差し迫った事態の時にしか鳴らないものだ。
戻ってきたフィーネが元のベッドの上でパカッと通信機を開けば、すぐに灯ったモニタの光が薄暗い部屋をぱあっと照らす。
暗闇に慣れた目には少しばかり刺激が強かったが、でもすぐに慣れてきて……そのモニタに映ったニール・ビショップの顔が、すぐに二人の目に飛び込んでくる。
いつも通りのぼさぼさ頭の赤髪と不精ひげが二人を出迎えたが、しかしその面持ちはかなり深刻な様子。それを見てウェインもフィーネもただごとではないと察し、真剣な面持ちでモニタ越しの彼をじっと見つめる。
「どうしたニール、一体何事だ!?」
「おいおっさん、何があったってんだよ!?」
『――――緊急事態だ、コードDが発生した』
コードDが、発生した。
その短い一言を告げられた二人が、ただでさえ真剣だった表情を更に強張らせる。
…………コードD、それは次元災害を示す単語だ。
それが発生したということは、即ちどこかにワームホールが発生し――――超次元帝国ゲイザーの尖兵が、現れたということだ。かつてフィーネが家族を、妹を奪われた……あの夜のように。
『海軍がDビーストの出現を確認している、スレイプニールにも出動要請が出た。こんな夜中に悪いが……二人とも、すぐに出てくれ』
「言われんでもそのつもりだ! Dビーストが相手なら……俺たちしか対処できねえんだからな!」
「五分で寮を出る! ニール、合流地点を教えてくれ!」
『場所はポイント2‐6、そこでヘリにピックアップさせる。場所は……分かってるよな?』
敢えて確認じみたことを言うニールに「あたぼうよ!」とウェインは即答する。
「私たちはとりあえず寮を出てピックアップの場所に向かう、詳しいブリーフィングはまた後で聞く!」
続けてフィーネは言うと、ニールの返事も聞かずに通信機をバタンと閉じて……隣に座るウェインと見合う。
ウェインの顔色はまだ眠たそうな様子だったが、しかし緊急事態だから仕方ない。スレイプニールに……この二人に緊急出動の要請が出るということは、即ちそれだけ切羽詰まった状況ということなのだから。
「ったく、ンな真夜中に出なくたっていいのによ。こちとら寝不足確定だぜ」
「だが、対処できるのは我々をおいて他にない。……行くぞウェイン、遅れるな!」
「あいよ!」
ベッドから飛び降りて、素早く制服に着替えた二人はそのまま寮の部屋を飛び出していく。
草木も眠る丑三つ時、静かな月明かりが見守る真夜中に……しかし状況は穏やかな眠りを許さずに。ウェイン・スカイナイトとフィーネ・エクスクルード、二人のエージェントの戦いが今、人知れず始まろうとしていた。




