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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-01『天翔ける白き翼の魔導騎士』
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第九章:天の雷/03

「喰らいやがれ……! フレイムシュート!!」

「んな程度、俺に当たるものかよ! ――――落ちろ、インパルスショットだぁぁっ!!」

 ウェインのファルシオンと、風牙の天雷。二騎のナイトメイルは尚も熾烈な激戦を繰り広げていた。

 手のひらから火柱を放つウェインに対し、風牙は(つが)えた光の矢に魔術で雷を纏わせ、強化したそれをバシュンっとライトニングアローから撃ち放つ。

 放たれた火柱に真っ正面から突き刺さった光の矢は、すぐにバシンと消滅してしまうが……しかしそれによって火柱の動きが一瞬止まったことで、その隙を突いて風牙は射線上から離脱。安全圏から再び雷で強化した矢『インパルスショット』を発射する。

 それに対し、ウェインは空中機動でサッと避けつつ……避け切れなかったものは、手のひらに展開した光魔術のバリア『フォトンシェード』で受け流す。

 ――――互角。

 少しの間はウェインが不利に傾いていた戦況は、今は互角の状態にまで持ち直していた。

 というのも、ウェインが近距離での肉弾戦から魔術主体の戦いに切り替えたことが大きい。

 近づくのが困難なら、こちらも飛び道具で戦えばいい……という単純な発想だが、これが意外に効果的だったのだ。

 とはいえ――――ファルシオンが遠距離戦は不得手なのは事実。今でこそ互角の戦いを繰り広げているが、しかし遠距離に対応する術を持たないウェインの方が、やはり徐々にだが再び劣勢に傾きつつあった。

「そらそらァッ! どうした、てめえは口だけなのかよ!?」

「ッ――――舐めんじゃねぇぇぇっ!!」

 風牙が挑発しながら対空砲火を強める中、吠えたウェインは光属性の魔術『ライトニングハーケン』を連射。この牽制攻撃でどうにか風牙の動きを封じつつ、背中のプラーナウィングを大きくはためかせると……対空砲火の隙間を掻い潜るように、風牙目掛けて一気に急降下していく。

「でやああああああっ!!」

 振り上げたバトルキャリバーに急降下の勢いを乗せて、一気に風牙に叩きつける。

 縦一文字の重い斬撃。しかし風牙はあくまで冷静なままそれに対応し、両手で構えたフェイルスピアで真っ正面から受け止めて、ウェインの重たい斬撃をどうにか防御してみせる。

「残念だったな、今のは痛そうだったぜ!?」

「っ……!」

「ほんじゃあ、こっちもお返しだぁぁぁぁっ!!」

 受け止めた風牙はフェイルスピアを力任せに振るい、ウェインを軽く吹っ飛ばすと……瞬時にライトニングアローを再展開。槍を地面に突き刺すと、空いた右手に光の矢を形成し……同時に強いプラーナを流し込めば、強烈な稲妻をその矢に纏わせる。

「放てよ必殺雷鳴! インパルス……ブレイカァァァァァッ!!」

 ライトニングアローに(つが)えて、バシュンと放たれた光の矢……それに纏う稲妻は、いつぞや彼が見せた超強力な雷の攻撃魔術『インパルスブレイカー』だ。

 あらゆる標的を一瞬の内に焼き焦がす、数百万ボルトの超高電圧を秘めた稲妻。それを纏った光の矢が、吹っ飛んだウェインに向かって真っすぐに突き進んでいく。

 吹っ飛ばされたウェインは避ける間もなく、飛来した光の矢はファルシオンの右肩に直撃し……真っ白な鎧に深々と食い込みながら、その稲妻で騎士の身体を焼き尽くす。

「んな……ぐぅぅぅっ!?」

 当たりどころが良かったのか、幸いにして致命傷には至っていない。

 だがその威力は絶大で、モロに喰らったウェインは思わずうめき声を上げてしまう。

〈一旦退きましょう! このままでは……!〉

 ウェインがうめく中、ファルシオンが焦った様子で彼に叫ぶ。

「分かってんだよ、ンなこたァッ!」

 それにウェインは大声で叫び返しながら、どうにか体勢を立て直し……ライトニングハーケンを放ちつつ、空中に大きく飛び上がりながら後退。急加速で一気に高度を上げることで、ひとまず風牙から距離を取った。

「どうした、逃げんのかよ!」

 一気に間合いを取った上空のウェインに向かって、風牙は挑発するように叫ぶ。

 ウェインはそんな地上の彼に「馬鹿言ってんじゃねえ!」と叫び返すと、

「俺がやりてえのは――――その逆だぁぁぁっ!!」

 雄叫びを上げれば、ウェインは何故か左手のバトルキャリバーを……両刃の剣を、あろうことか風牙に向かって鋭く投げつけた。

 自分から、得物を投げ捨てる。

「なっ――――!?」

 そんな突飛で意味の分からない彼の行動に、風牙は一瞬だけ面食らってしまう。

 だが、面食らったのも一瞬だけ。すぐにハッと我に返れば、風牙はフェイルスピアを振るい……弾丸のように飛んできたバトルキャリバーを冷静にサッと斬り払うことで対処してみせる。

「今だ……! プロミネンス・バァァァァストッ!!」

 しかし次の瞬間、風牙に出来た一瞬の隙を突いてバッと左手を突き出せば、ウェインは超高熱の焔の奔流『プロミネンスバースト』を発動。そのまま天雷を焼き尽くそうとしたが。

「ま、そう来るよなぁぁっ!!」

 対する風牙は驚いた様子もなく、逃げずに上空のウェインと正対すると……そのまま手の中でグルグルとフェイルスピアを高速回転。プロペラのように回る長槍でプロミネンスバーストを受け止めれば、そのまま無傷でやり過ごしてみせる。

「なんて野郎だ……!?」

「お前の手の内はフィーネちゃんとの模擬戦でとっくに割れてんだよ! こう来るだろうってのは予想してたんだぜ!?」

 高速回転させたフェイルスピアで、あのプロミネンスバーストを防いでみせた。

 その光景にウェインが面食らっている間にも、ニヤリとした風牙は手近な地面にフェイルスピアを刺すと……左腕のライトニングアローを再展開。強く気合いを入れ直して……彼はここ一番の大技に打って出る。

「今度はこっちの番だぜ! 見やがれ……これが俺の切り札だぁぁぁっ!!」

 右手に生み出すのは、超巨大な光の矢。天雷の身の丈ほどもある光の矢をバシュッとライトニングアローに(つが)えれば、風牙は集中させたプラーナを全て稲妻に変換して矢に注ぎ込み……雷を纏ったその超巨大な光の矢を、ウェイン目掛けてバシュッと撃ち放つ。

「――――天の雷を思い知れ! ディスチャージ……アロォォォッ!!」

〈いけません……避け切れないっ!〉

「んなくそ……ぉぉっ!!」

 撃ち放たれた、超高速で迫り来る巨大な光の矢。

 それを避ける時間の猶予なんて無く、なすすべもないままに……光の矢はファルシオンに直撃する。

 ――――『ディスチャージ・アロー』。

 雪城風牙の放った大技、彼と天雷の持つ必殺の切り札。

 そんな稲妻を纏った巨大な光の矢がファルシオンに突き刺さった時、スタジアムの上空で弾けたのはまるで雷が落ちた時のような凄まじい閃光。その目も眩むような閃光の中に――――ファルシオンと、ウェインの姿は消えていったのだった。





(第九章『天の雷』了)

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